信頼性低い米大統領の健康報告 公開に意味はあるのか

2025年7月16日(水)、ワシントンD.C.のホワイトハウス大統領執務室で、ドナルド・トランプ大統領がバーレーンのサルマン・ビン・ハマド・アル・ハリーファ皇太子と会談する様子。トランプ大統領は両手を組んで座っている。(AP Photo/Alex Brandon)
By Jeff Mordock – The Washington Times – Monday, December 29, 2025
歴代の米大統領は、心身の健康状態について良好とする診断結果を公表することが慣例となっている。だが、これらの報告の信頼性には疑念の声もあり、問題の発覚によって事実に反することが明らかになることも多い。
大統領の健康診断結果を公表するのは、国民を安心させ、強健な最高司令官が指揮を執っていると敵対国に警告するためのものだ。しかし、公表される記録は詳細が欠けることが多く、大統領の健康に関する基本的な事実が公表されることはない。
こうした報告が透明性に欠けることは今に始まったことではないが、トランプ大統領とその前任者ジョー・バイデン氏に関して最近公開された情報を巡って、ホワイトハウスに対して医療報告の透明性を高めるよう求める声が再び高まっている。史上最高齢で大統領を務めるこの2人は、共に非の打ち所がない医療報告を公表したが、それがかえってプロセスの信頼を損なう結果となっている。
改革を求める声が上がる一方で、そもそもなぜホワイトハウスがこのような茶番を演じ続けるのかと疑問視する者もいる。
マウントサイナイ医科大学の精神医学教授で大統領の健康史に詳しいジェイコブ・アペル氏は、「私はこれらの報告を全く信用していない」と断言する。
「建国以来、医師は大統領の健康状態について日常的に国民を欺いてきた。事実を公表しなければならないルールはなく、あるとすれば、それは例外だ」
79歳のトランプ氏は2025年10月、ウォルター・リード国家軍事医療センターで、この年2回目となる異例の健康診断を受け、その際にMRI(磁気共鳴画像法)検査を受けたことを明かした。トランプ氏もホワイトハウスも、体のどの部分を検査したのか、医師が何を調べたのかをすぐに明かさなかったため、臆測が飛び交う事態となった。
10月13日付のトランプ氏の主治医による書簡には、MRI検査についての具体的な言及はなかった。そこにはトランプ氏が「高度な画像診断」と「臨床検査」を受け、「全体的に極めて健康な状態にある」と記されていた。
公開要求が2カ月近く続いた後、ホワイトハウスはトランプ氏の主治医ショーン・バーバベラ氏によるメモを公開した。それによるとトランプ氏は、同年代の男性向けの予防的検査の一環として、10月に心臓と腹部のMRI検査を受けたという。声明では、この高度な画像診断手順はトランプ氏の年齢層における「エグゼクティブ・フィジカル(特別健康診断)」としては「標準的」なものであると説明されている。
バーバベラ氏は、心血管と腹部の画像診断結果は「完全に正常」と指摘。「この画像診断の目的は予防にある。問題を早期に発見し、全体的な健康状態を確認し、長期的な活力と機能を維持できるようにするためだ」と記している。
トランプ氏は7月、慢性静脈不全症という診断を受けた。これは一部の静脈内の弁が正しく機能せず、血液が滞留することから出る症状だ。また、トランプ氏は右手にあざがあり、それを化粧で隠そうとしてきた。当局者は、多くの人と握手をするためにできたものだと説明している。
トランプ氏が記者団に予定外のMRI検査を実施したことを明らかにしてから数週間、ホワイトハウスはなぜ医師がその検査を必要と判断したのかについて、詳細をほとんど語らなかった。キャロライン・レビット大統領報道官は、MRIは健康診断の「ルーティン」の一部だと述べた。
レビット氏は「トランプ大統領は定期的な健康診断の一環として高度な画像診断を受けた。結果は担当の放射線科医や顧問らによって検討され、全員がトランプ大統領の身体的健康が引き続き並外れて良好であるという意見で一致した」と語った。
ほとんどの国民は毎年の定期健診で、MRI検査を受けない。また、トランプ氏がわずか6カ月前の4月に健康診断を受けたばかりであることを考えると、1年に2回も受診するのは異例だ。
82歳のバイデン氏は今年、進行性の前立腺がんを患っていることを明かした。公表時、がんが前立腺から骨に転移していると述べ、かなり前から病を抱えていたことを示唆した。
この診断により、バイデン氏や医師、家族が重要な医療情報を隠蔽(いんぺい)していたのではないかという疑念が深まった。しかし、一部の専門家は、がんが最近になって発生した可能性も認めている。広報担当者は、バイデン氏が2014年以降、前立腺がんの検診を受けていなかったことを明らかにしている。
バイデン氏の認知能力と身体機能が低下していることは、大統領在職中に露呈していた。記憶の欠落、戸惑うような様子など、認知能力の問題が次々に明らかになり、昨年のトランプ氏との討論会で噴出した。
政権は大統領の健康に関して透明性を保つ法的義務があるが、医師には法的および倫理的な守秘義務がある。つまり、結果を公表するかどうかは、ひとえに大統領の裁量に委ねられている。
米国の歴史の中で、ほとんどの大統領は自身の健康について口を閉ざすか、あからさまなうそをついてきた。
クリーブランド大統領は、情報が漏れないようヨットの上で口内のがん腫瘍を摘出した。手術を受けたことが報じられると、政権側はフェイクニュースだと言い張り、記者を中傷した。
1979年、カーター大統領は痔(じ)を患っていることを秘密にしようとしたが、友人のエジプト大統領アンワル・サダト氏が、エジプト国民にカーター氏のために祈るよう呼び掛けたため、広く知られるようになった。
ウィルソン大統領は1919年に脳卒中で倒れ、任期の大部分をベッドの上で過ごし、妻が代理を務めたが、職務不能の程度は伏せられていた。テレビが普及する前の時代、フランクリン・ルーズベルト大統領はポリオによる車椅子の使用を隠し、先天性の心臓病も秘密にしていた。
状況が変わり始めたのはアイゼンハワー大統領の時代だ。彼は何度も心臓発作に見舞われたが、回復期に病院のベッドから、後に車椅子から公の場に姿を現すことで、職務遂行能力への懸念を払拭(ふっしょく)しようとした。
ケネディ大統領は、ストレスへの反応を調節する副腎の機能不全であるアジソン病を患っていた事実を隠していた。また、慢性的な腰痛のためにオピオイド(麻薬性鎮痛薬)の治療も受けていた。
大統領の医療情報の収集と公表の方法を見直すべきだという提案もある。バイデン政権下の議会で浮上した案の一つは、独立した医師団が大統領を診察するというものだ。その後、医師団が記者会見で所見を説明し、メンバー間で大統領の健康状態について意見が分かれた点があれば、公表することが義務付けられる。
イースタン・コネチカット州立大学の大統領史の専門家トーマス・バルセルスキー氏は、「大統領が選んだのではない医師であれば、情報の正確さにいくらかの安心感が持てるだろう。信頼性と誠実さの観点からは、大学病院に任せるのが望ましい。現在の医師たちは、大統領の利益を第一に考える、選り抜きの個人であり、そのメッセージはあまりに政治的な意図を持って発信されている。全く客観的ではない」と語った。
大統領が毎年健康診断を受け、その結果を公表するようになったのはニクソン大統領からだ。
バルセルスキー氏は「歴史的に、大統領は健康診断の悪い部分を隠す傾向がある。それを裏付けるエピソード、事例は数多くある」と言う。
同氏は、大統領が最善のケアを受けているかどうかも疑問視している。著名人や政治家など要人の健康診断は、通常よりも高額で、医療機関側は患者に反感を持たれないようにすることを優先するため、問題を見逃しがちであるという研究結果を引用した。
「医療チームが大統領の機嫌を損ねないよう忖度するようであれば、本来受けるべき最善の治療を受けられていない可能性がある」
一方、アペル氏は、透明性の欠如が国や大統領にとってむしろ良いことかもしれないとの見方を示している。詳細な医療報告を義務付ければ、大統領は良くない情報が公表されることを恐れて医師に対してうそをつき、適切な治療を受けられなくなる可能性があるからだ。
さらに、米国民に公開される情報は、ロシアや中国などの敵対国の政府にも公開されることになる。
アペル氏は「これらの情報が信頼できるものであるべきかどうかは分からない。何かを変えようとしても、結局は政治プロセスに制約されることになる。誰もが対立候補は病気に見え、自身が推す候補は健康に見えることを望む。いずれ政治ゲームの道具に成り下がり、たとえデータが正確であっても、誰もそれを真に受けなくなるだろう」と語った。

