プーチン氏、米ゴールデンドーム構想に懸念 宇宙兵器を警戒

(2025年10月4日)

2025年5月12日(月)、ワシントンD.C.のホワイトハウス、ルーズベルトルームでドナルド・トランプ大統領によるイベントに先立ち、提案されているミサイル防衛システム「ゴールデン・ドーム・フォー・アメリカ」のポスターが展示されている。(AP Photo/Mark Schiefelbein)

By Bill Gertz – The Washington Times – Tuesday, September 30, 2025

 ロシア国営メディアの報道によると、プーチン大統領は、トランプ米大統領が次世代ミサイル防衛計画「ゴールデンドーム」の一部として宇宙兵器の配備を計画していることに警戒感を示し、これによってロシアの攻撃的核戦力が無力化されるのではないかと懸念を表明した。

 プーチン氏は、ロシア安全保障会議の会合で、米国が計画しているミサイル防衛は、攻撃的戦略兵器を維持するというロシアの現在の取り組みを無にするものだと述べた。

 国営インタファクス通信によると、プーチン氏は9月22日、「宇宙空間に迎撃ミサイルを設置する準備を含め、米国のミサイル防衛システムの戦略的要素を強化する計画に特に注意を払うべきだ」と述べた。

 「われわれは、このような不安定化を招来する行動を実行に移すことで、攻撃的戦略兵器の現状を維持しようとするわれわれの取り組みを無に帰すことはできないという前提で動いている。われわれはこれに対応する」

 ゴールデンドーム構想の詳細は依然、国防総省によって機密とされている。この計画では、2029年までに統合型防空・ミサイル防衛システムを配備することになっている。

 当初の計画では、衛星搭載兵器と地上配備のミサイル防衛システムからなる4層の防衛システムを構築することになっている。地上配備のシステムには、米本土とアラスカ、ハワイにある11基の短距離迎撃ミサイルも含まれる。

 8月に公開された国防総省のブリーフィング資料によると、このシステムには、宇宙配備型のミサイル迎撃装置およびミサイル警戒・追跡衛星が含まれる。

 資料によれば、センサーと迎撃ミサイルを統合し、探知と追跡をスピードアップさせる高度な人工知能(AI)機能も計画されている。

トランプ氏は、このシステムは1980年代のレーガン大統領の戦略防衛構想(SDI)に基づいていると述べている。

 SDIは実現しなかったが、ブリーフィング資料では、SDIの「ブリリアントペブルズ」と呼ばれる兵器について触れている。これは、宇宙配備の弾体を用いて、宇宙を移動する敵ミサイルを破壊するためのものだった。

 ロシア軍は、プーチン氏が2018年に複数の高度な新型戦略兵器の計画を発表して以来、取り組んできた大規模な戦略核近代化プログラムをほぼ完了している。

 その兵器には、「サルマト」と呼ばれる大型の多弾頭大陸間弾道ミサイル(ICBM)、ミサイル防衛を回避できる複数の極超音速ミサイル、新しい核兵器搭載のブレベストニク巡航ミサイル、「ポセイドン」と呼ばれるメガトン級の弾頭を搭載した水中ドローンなど、新しく、状況を撹乱させられる兵器システムの数々が含まれる。

 また、ロシア軍は、核弾頭を使って人工衛星を爆破する衛星破壊兵器を宇宙に配備する計画も持っているとされる。米当局は2024年初めにこの計画を公表したが、ロシアは否定している。

 新型のボレイ級ミサイル潜水艦も配備され、合計14隻が計画されている。この潜水艦は、6弾頭の新型ミサイル「ブラバ」を搭載している。

 ロシアはウクライナ戦争の一環として西側諸国を核兵器使用で脅しており、核武装はロシアに戦略的優位をもたらす。

 中国もまた、自国の戦略ミサイル戦力に対する脅威として、ゴールデンドーム構想に反対している。

 空軍のシンクタンクの報告書によれば、中国は、相互抑止力を弱め、戦略的安定性を損なうと主張し、構想に反対を表明したが、核戦力とミサイル開発計画の大規模な増強に取り組んでいる。

 中国共産党と人民解放軍の指導者は、ゴールデンドームが「能動的発射阻止」を採用することを恐れている。中国はこれによって核戦力への先制攻撃が実施されるとみて警戒しているからだ。

 5月に公開された国防情報局(DIA)の報告書は、中国の弾道ミサイル、巡航ミサイル、極超音速ミサイルの大規模な戦力がもたらす脅威を、新たなゴールデンドームを構築する主要な要因と指摘している。

 プーチン氏はゴールデンドーム構想で宇宙に兵器が配備されることに懸念を示したが、DIAによると、ロシアは数種類の宇宙兵器を保有している。

 DIAは昨年の議会証言で「ロシアは、宇宙攻撃能力の開発に注力しており、ジャミング(電波妨害)から悪意のあるサイバー活動、地上からの直接攻撃による衛星破壊システムや軌道上の衛星破壊システムに至るまでさまざまな宇宙兵器を保有している」ことを明らかにしていた。

 米議会調査局が5月に発表した報告書によれば、ロシア軍は、大規模な核兵器の使用だけでなく、限定的な核兵器の使用も含む「戦略的運用」を通じた軍事力の行使を計画しているという。

 プーチン氏は最近、地上・空中・宇宙兵器を使ってミサイルを無力化するこの新構想への懸念から、新戦略兵器削減条約(新START)の延長を求めた。条約に違反したという米国の主張を受けロシアは、2023年に条約の順守を停止していた。

 プーチン氏は、2月5日の新START失効期限を1年間延長すれば、米国との戦略兵器対話につながる可能性があると述べた。

 「核ミサイルと戦略防衛兵器を制限するソ連と米国、ロシアと米国の複数の合意は、一つずつ解体され、実質的に完全に廃止された」

 トランプ政権はロシアと中国を含む兵器削減交渉を再開しようとしている。しかし、中国は今のところ核兵器を巡る交渉への参加を拒否している。

 プーチン氏はまた、ロシアは「既存の脅威にも、新たな脅威にも、言葉だけでなく、軍事技術的手段を用いて対応する」と警告した。

 ロシアは地上発射型中距離・短距離ミサイルの配備に関するモラトリアムを終了する。

 プーチン氏は、「これは必要な措置であり、欧州やアジア太平洋地域で米国などの西側諸国製の同様の兵器を配備し、ロシアの安全保障を直接脅かしている計画に適切に対応する必要がある」と述べた。

 米国はフィリピン、オーストラリア、日本にミサイルシステム「タイフォン」を一時的に配備している。

 このシステムは、SM6対艦ミサイルと射程1600キロのトマホーク巡航ミサイルを発射することができる。

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