タリバンの実権掌握による戦略的勝者は(今のところ)パキスタン
By Guy Taylor – The Washington Times – Tuesday, August 31, 2021
タリバンは、1990年代に主にパキスタンの情報機関によって設立された強硬派イスラム主義組織だ。
アフガニスタンの首都カブールがタリバンの手に落ちたことは、パキスタンにとって戦略的大勝利となるかもしれない。
国家安全保障筋によると、パキスタンは過去20年間にわたり、自国の利益を守るために、アフガン戦争の両者に対し慎重に二股を掛けてきた。
パキスタン当局はそのような見方を強く否定するとともに、米国によるテロリスト掃討を支援し、不安定な隣国に安定した政府を樹立することが、アフガンにおける唯一の目標だったと主張している。だが、パキスタンの政府機関は裏表のある行動を取り、バイデン米政権はパキスタンの術中にはまってアフガンをタリバンの手に渡してしまったことはほぼ間違いないと、地域の専門家たちは指摘している。
匿名を条件に語ったハイレベルな地域情報筋によると、パキスタン当局が常に目指してきたのは、同国の核心的な地政学的目標に沿うイスラム主義政府をアフガンで維持することだ。パキスタンの地政学的目標とは、ヒンズー教徒が多数派のライバル国、インドがアフガンで影響力を行使し、パキスタンの戦略的裏庭で脅威をつくり出すのを防ぐことだ。
「(しかし、)インドを苦しめることが全てではない」。情報筋の一人によると、パキスタンのエスタブリッシュメントは、アフガンを「植民地化」する夢をずっと抱いてきたという。20年以上前、タリバンの台頭を後押ししたのは、アフガンの国粋主義者たちをコントロールし、彼らが立ち上がってパキスタンに挑むのを防ぎたいという願望もあった。
別の情報筋によると、パキスタンはずっと、タリバン支配のアフガンという隣国の強硬派イスラム主義社会に隠れ場所を与えることで地域の過激主義勢力をなだめ、パキスタンへの攻撃を控えさせることに成功してきた。
その他の多くのことと同じように、タリバンが支配するアフガンが米印関係に与える影響もはっきりしない。タリバンは今週、アフガンの新たな統治体制下では、反インドの活動は許さないと宣言し、大きなニュースになった。ただ、インドはバイデン政権のずさんな撤退に対し、ひそかに激怒しているといわれている。
タリバンがアフガンの支配を進める一方、バイデン政権はインドに対し、中国に対抗するためのアジア民主主義国の枠組み「クアッド」など、米国の広範な戦略的イニシアチブへの協力を求めている。インド政府は、ハーシュ・シュリングラ外務次官が来週、バイデン政権との会合でワシントンを訪問すると発表したが、過去2週間の展開については反応を控えている。
一部の地域アナリストたちは、タリバンの実権掌握は結局、パキスタンにとって、つかの間の勝利に終わると指摘する。アフガンはすぐに、幅広いイスラム主義テロ組織をかくまうのけ者国家へと退化し、最終的に西側世界だけでなく核保有国であるパキスタンの世俗的な標的をも攻撃するだろう、というのがアナリストたちの見方だ。
これは進行中の外交危機であり、アナリストからは、米パキスタン関係はすでに緊張と不信に満ちているとの指摘が出ている。
米情報筋によると、パキスタンの強力な情報機関はタリバンへの支援を継続しているほか、米国務省が2012年に海外テロ組織に指定したハッカニ・ネットワークに対しても隠れ場所を提供している。対テロ担当の元米政府高官は、パキスタンは依然、信頼できる安全保障上のパートナーであるかという質問に対し、怒りを表した。
「パキスタンは最悪の同盟国かもしれない。同盟国でさえないのかもしれないが。おそらく世界最悪のパートナーだ」。この元高官はワシントン・タイムズ紙に、匿名で米国とパキスタンの安全保障関係について率直に語った。