アフリカで勢力伸ばすイスラム国
By Ben Wolfgang – The Washington Times – Tuesday, December 28, 2021
過激派組織「イスラム国」(IS)のアフリカでの活動範囲が拡大、残忍な攻撃が多発し、米政府内でも、ISなど過激派組織がアフリカで基盤を築き、将来、欧米への攻撃を実行するのではないかと懸念が高まっている。
ISは数年前から、北アフリカの各地に浸透し、マリやナイジェリアで活動してきたが、テロ対策の専門家らによると、このところ活動範囲は南下し、コンゴ民主共和国での活動が確認されている。コンゴは資源が豊富で、米国と中国が戦略的に激しく競い合っているところでもある。
米アフリカ軍がコンゴでのテロ組織の活動を監視しているが、この10年間、欧米各国によるテロ対策活動は北部に集中、とりわけ、アルカイダ系のアルシャバブの拠点であるソマリア、サハラ砂漠南部一帯のサヘル地域に集中してきた。
サハラで最も攻撃を受けやすいこの広大な地域は、約10カ国にまたがる。過激派の巣窟であり、2001年同時テロ以来、数多くのテロ組織の拠点となってきた。しかし、一部の組織は今、さらにアフリカ内部の奥深くに入り込もうとしている。
コンゴのベニにあるレストランの外でクリスマスに自爆テロが発生し、少なくとも5人が死亡、十数人が負傷した。報道によると、現地当局者らはイスラム武装集団「民主同盟軍(ADF)」の犯行と指摘している。ADFは、コンゴ国内で以前から活動しているが、「イスラム国中央アフリカ州(ISCAP)」として知られるISの分派組織との関係をこのところ強めている。
コンゴではこれまでにも、ADFによるテロ攻撃が発生し、死者が出てきた。米国務省は3月、ADFを、国外テロ組織に指定し、指導者のセカ・ムサ・バルク容疑者を「特別指定国際テロリスト」とした。
これによって、米国民はバルク容疑者、ADFと関係のある人物との取引が禁止される。これは、ISが中央アフリカに注力し、依然として国際的な安定にとって脅威となっていることへの懸念が高まっていることをも示している可能性がある。一方で米政府高官らは、2010年代の後半で、シラクとシリアでの米軍主導の軍事作戦で、ISの「領土は失われた」と主張している。
この地域のイスラム・テロを追跡しているアメリカン・エンタープライズ政策研究所(AEI)のキャサリン・ジマーマン研究員は、「ISのコンゴへの勢力拡大は防止できなかったわけではなく、予測されていた」としている。ISがアフリカで着実に勢力を伸ばしていることは、アルカイダや、アルシャバブなどの関連組織が勢力を伸ばしていることでもあり、両者のネットワークは、欧米諸国、とりわけ欧州にとって直接の脅威となっている。
ジマーマン氏はワシントン・タイムズとのインタビューで、「この二つの国際テロ組織が近年、アフリカで急速に拡大していることで米国と同盟国は戸惑っているはずだ。国際的な脅威が変化していることを示すからだ。北アフリカのテロネットワークは、1990年代と2000年代に欧州を脅かした。米国と同盟国が、中国とロシアの地政学的競合国への対応を強化している一方で、再び、欧州がテロの脅威にさらされる可能性がある」と述べた。