ウクライナ、地雷が今後の脅威に 米などが支援し除去訓練
By Mike Glenn – The Washington Times – Friday, December 23, 2022
ロシアのウクライナ侵攻で、命が失われ、家、道路、工場、文化財などが破壊されている。一方で、それ以外にも長く傷跡を残す課題がある。ロシア軍がばらまいた地雷だ。ウクライナ政府は今月に入って、国内の約15万5000平方キロ(国土の約4分の1)が、2月の侵攻後にロシア軍が残した地雷や爆発物のために事実上、居住できなくなっていることを明らかにした。
専門家らは、銃撃戦がやみ、ロシア軍が撤退しても、通常の生活に戻るまでには難題が待ち構えていると指摘する。これに対し世界各国が支援を行っている。米当局者らは、第2次世界大戦以後で最大規模の地雷撤去になると予測するが、戦闘がいまだ続いていることが、除去を困難にしている。
国務省の兵器除去・処理局のマイケル・ティール氏は「爆発物を除去することがウクライナ政府の優先課題となっている。危険性、汚染の度合いは桁外れだ」と指摘した。
米当局者によると、侵攻開始後、地雷、不発弾で死亡または障害を負った民間人は1100人に上る。ウクライナは小麦、トウモロコシなどの世界有数の輸出国だが、地雷などの爆発物のために農地の10%以上が耕作不能になっているという。
欧州安保協力委員会(ヘルシンキ委員会)の米上級顧問、デミトラ・パパス氏は、「ロシア軍は撤退時に、住宅や民間インフラに爆弾を仕掛けていった。民間人にとって直接の脅威であり、影響は広範囲に、長期にわたる」と被害の深刻さを訴えた。
バイデン政権は、今後1年間で地雷撤去支援に9100万ドル以上を拠出する。米企業テトラ・テックが、地雷の発見、除去の支援に当たる。第一歩は、ウクライナに訓練センターを設置し、除去作業の手順、技術の教育を行うという。ウクライナにはすでに200以上の除去チームがあり、約1000人が所属、今後1年間で倍増させる計画だ。
テトラ・テックのトッド・ビッグス副社長によると、被害を最小限に抑えるために、「民間人に脅威を見つけ、回避し、通報する方法を教育する」ことも重要と指摘、除去チームにはそのための人員も充てられているという。
米国とウクライナの当局者らによると、ロシア兵は子供のおもちゃや遺体に爆発物を仕込んでおり、ティール氏は過激派組織「イスラム国」(IS)のやり方に似ていると非難した。
ビッグス氏によると、除去の訓練には通常、5週間かかり、一部は地元の住民などから募集する。地雷の種類を見分け、掘り起こし作業から、負傷者の応急処置まで必要な技術を学ぶ。
ビッグス氏は、全国的な調査が実施されておらず、費用の予測は難しいとしながらも、730億ドル(約10兆円)に達する可能性があり、作業は「何十年にも及ぶ」との見方を示した。