米中国防トップがシンガポールで対決
By Bill Gertz – The Washington Times – Tuesday, June 6, 2023
シンガポールで2日~4日に開催されたアジア安全保障会議(通称シャングリラ会合)は、米中の国防トップが互いに牽制し合うなど、両国の緊張関係が際立った。一方でバイデン米政権からは中国に対し融和的な姿勢が目立ち、専門家らは懸念を示している。
このところ、中国軍機が米軍偵察機に接近、台湾海峡を航行中の米海軍駆逐艦の前を中国の艦艇が横切るなど、中国による危険な挑発が続いている。
米国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報調整官は5日、「私たちは、国際的な空域と海域での行動について、より良い決断を下すよう求める」と中国を牽制、中国軍による攻撃性が高まっていることに懸念を表明した。
オースティン米国防長官はシャングリラ会合で、日本、オーストラリア、フィリピンを含む地域の同盟国間の米軍協力の強化を主張。「海上や国際空域での危険な作戦行動」によって、米国がひるむことはないと強気の姿勢を示した。
一方、軍事的緊張が高まっているにもかかわらず、バイデン政権は中国との緊張緩和を求め続けている。国務省とNSCの当局者が、北京で会談を行ったばかりだ。これに対し専門家らは懸念を示している。
トランプ前政権でポンペオ国務長官(当時)の上級政策顧問だったマイルズ・ユー氏は、中国の李尚福国防相が会合で行った好戦的な演説について、中国共産党と人民解放軍(PLA)が米国に対して数十年にわたって好戦的な姿勢を取ってきたことを思い起こさせるとした上で、「PLAは、強大な米軍を相手に、自国に壊滅的な結果をもたらす可能性も考えず、瀬戸際政策をさらに強化している」と対米強硬姿勢を強める中国を非難した。
また、「米国の指導者は、中国の無謀な挑発に断固とした行動で対応すべきだ。それが中国の好戦的な態度を止める唯一の方法であることは歴史が示している」と指摘、中国共産党に責任ある対話と協力を求めることは無意味と、バイデン政権の融和姿勢に警鐘を鳴らした。
中国アナリストのゴードン・チャン氏は、米国は中国当局者の好戦的な発言を軽視しているようだとの見方を示し、「中国の政権は戦争の準備を急ピッチで進めているが、米国は見て見ぬふりをしている」と対応の必要性を訴えた。
李氏は、ロシアへの武器売却で2018年に米国から制裁を受けており、シャングリラ会合では、オースティン氏との会談を拒否。中国当局は、米国が李氏への制裁を解除しない限り、正式な会談や話し合いの場を設けることはないとしている。
中国軍は、台湾をめぐる現状を覆すかのような挑発的な軍事行動を活発化させている。
元太平洋艦隊情報部長のジム・ファネル退役海軍大佐は、シンガポールでの米国と中国の演説の対比について、「ある国は戦争の準備をし、別の国は対話の準備をしている。台湾海峡の状況は、かつてないほど危険だ」と警告した。
李氏は演説の中で、「ある国」が他国の内政に干渉し、一方的な制裁を加えていると間接的に米国を批判。米軍が台湾海峡で実施している「航行の自由作戦」についても、「自国の利益のために海を汚そうとしている。地域の各国は警戒を怠らず、こうした行為を断固として拒否すべきだ」と主張した。
また、米国は「カラー革命」と代理戦争を煽り、不安定な状況を作り出し、「混乱を残して立ち去った」と非難。「アジア太平洋でそのようなことが再び起こることを決して許してはならない」と述べた。これは、アフガニスタンからの米軍撤収を指していると思われる。