台湾緊迫、中国トップはどう決断? AIで予測可能か
By Ryan Lovelace – The Washington Times – Tuesday, May 28, 2024
中国共産党政権による台湾侵攻への懸念が米国で高まる中、スタンフォード大学の研究者らは、中国の戦時の動きを予測する人工知能(AI)モデルの構築を試みている。
中国でも米国でも、技術者らはAIを使って、中国の習近平国家主席の考え方や意図を探ろうとしている。米国がAIを使って、共産党政権がどのように競合を戦争へとエスカレートさせうるかを解明しようとする一方で、中国はAIが「毛沢東語録」を21世紀用にアップデートしてくれることを期待している。
スタンフォード大学の「フーバー・ウォーゲーミング・アンド・クライシス・シミュレーション・イニシアチブ」の責任者ジャクリン・シュナイダー氏によれば、スタンフォード大学の研究者らは、中国モデルを構築する取り組みの初期段階にあるという。
シュナイダー氏は、「モデルを構築するためのデータを集めているところだ。翻訳された英語の資料を持っている組織や、大量の中国語の資料を入手するのを支援してくれる組織と提携している」と語った。
シュナイダー氏によると、スタンフォード大学のチームは重大な課題に直面しているという。それは、中国軍の意思決定を代表するモデルを構築できるのか、それともインターネット上でアクセス可能なものを直接的に反映したモデルとするのかという問題だ。
共産党政権のインターネット監督機関、中国サイバースペース管理局(CAC)に関する報告によると、中国は「習近平思想」に基づいた独自のAIモデルを構築している。習氏は最近、国家主席として、また支配政党共産の党首として、前例のない3期目(任期5年)に入り、思想による統制を強めている。
開発されるツールは、質問に答え、情報を要約し、中国語と英語の間で翻訳することが期待されている。だが、どのように使われるかは明らかにされていない。
シュナイダー氏によれば、強力なアルゴリズムを採用したAIの「大規模言語」モデル(LLM)が、特定の層や分野の意思決定者をどれだけ模倣できるかは不明だという。
例えば、スタンフォード大学、ノースイースタン大学、ジョージア工科大学の研究者が2024年1月に発表した論文によると、コンピューターによる戦争シミュレーションでは、AIは人間よりも攻撃的でエスカレートする傾向がある。この論文によれば、AIベースのモデルは「人間よりも感情に左右されない判断を下す傾向がある」と考えている研究者もいるという。
スタンフォード大学国際安全保障協力センターのマックス・ランパース博士研究員によれば、このようなモデルを解析して、何が国家指導者に、危機的状況を激化させたり、鎮静化させたりするのかを知ることは、今のところほぼ不可能だが、モデルをだますことははるかに簡単だという。
「仮説上の平和主義者(LLM)に状況をエスカレートさせるのは、人間が理解できないようなちんぷんかんぷんな言葉を数語付け加えるのと同じくらい簡単なことだ」
今後発生するかもしれない中国との戦闘に備えるための新しいAIツールの使用はすでに始まっている。
ジョージ・メイソン大学のアントニン・スカリア・ロースクールにある国家安全保障研究所が運営するプログラムの一環として、米議会のスタッフが国家安全保障会議(NSC)として、AIを搭載した中国チームに対して、戦争のシミュレーションを行う予定だ。夏に行われるプログラムの最後には、台湾海峡の危機を想定したシミュレーションが行われる。
国家安全保障研究所の創設者であるジャミール・ジャファー氏は声明で「私たちの戦争の演習は、人間の意思決定にAI・LLMがどのような影響を及ぼすかをテストするもので、AIがどのように国家安全保障の意思決定に組み込まれる可能性があるのか、危機の際に人間の選択をどのようにサポートし、修正できるのかなどをスタッフらに具体的に示すものだ」と述べた。
米国土安全保障省のロブ・シルバース次官(戦略・政策・計画担当)によれば、準備が必要なのは議員スタッフだけではない。
シルバース氏は、今月初めにワシントンで開催されたヒル&バレー・フォーラムで、台湾侵攻とその世界的な波及に備え始めるよう民間部門に呼び掛けた。
「各企業は台湾シナリオに備える必要がある。何かが起こることを想定し、それがビジネスにどのような影響を与えるのか、また、回復力を維持し、事業を継続するために何をすべきかを、3ショット、4ショット、5ショット先まで考える必要がある。そして、すべての政府機関もそうしなければならない」