中国、TikTok使い戦略的影響工作を画策-米シンクタンク

(2024年8月4日)

2020年9月28日、東京でスマートフォンの画面に表示されたTikTokのロゴ。TikTokは、人工知能によって作られたコンテンツが特定のプラットフォームからアップロードされた場合、自動的にラベル付けを開始するという。TikTokによると、この取り組みは、ソーシャルメディア・プラットフォーム上で誤った情報が拡散されるのを防ぐための試みだという。この発表は、2024年5月9日(木)にABCの『グッドモーニング・アメリカ』で行われた。(AP Photo/Kiichiro Sato, File)

By Bill Gertz – The Washington Times – Thursday, August 1, 2024

 短編動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」に関する公開情報を基に作成された最新報告によると、中国共産党と中国軍はTikTokを、政治的影響工作と軍事行動支援のための戦略的ツールの一つとみなしている。

 この報告書は2人の元軍事・情報専門家が作成したもので、米国の若者がTikTokを継続的に使用することで、「中国中心の世界観を支持するように米国のナラティブ(物語)を微妙に変化させる」よう中国によって仕向けられていると警告している。

 報告書はまた、TikTokの中国の親会社バイトダンスに、米国での運営を非中国政府系の企業に売却させるか、それができなければ全米で使用を禁止するという措置についての現在の法的要件について検証している。

 4月、バイデン大統領はこの売却処分の要件に関する法案に署名し、法制化した。その1カ月後、バイトダンスは、この法律が言論の自由などを保障する憲法修正第1条に違反するとして提訴した。

 司法省は先週の法廷への提出書類で、TikTokが米国人ユーザーの宗教、中絶、銃規制に関する考え方に関するデータを収集し、バイトダンスの指示でネット上の資料を検閲していることを明らかにした。

 司法省は調査報告書「米国におけるTikTokの活動:戦略的な動き、科学的な洞察、そしてその先にあるもの」を公表し、中国共産党が短編動画などの手法を使って共産主義的なイデオロギーやナラティブを世界中に広めようとしていることを明らかにした。

 湖南大学宣伝・伝統戦学部のフー・リャンチュエン氏による2022年の研究では、TikTokの多くの視聴者は大学生で、鮮やかな画像、豊富なコンテンツは、学生を思想的、政治的に教育するのに理想的だと述べている。

 この研究のタイトルは「大学生に対する思想・政治教育におけるTikTokの応用と啓発」だ。それによると、TikTokは、重要なターゲットである1990年代生まれの米国民にイデオロギー教育を施す手段を拡大するために利用できるとしている。

 習近平国家主席率いる中国は、1980年代に棚上げにされた中国の特色ある社会主義と呼ばれる共産主義イデオロギーを再活性化させ、弱体化した経済をより近代化させようとしている。

 2023年に政府の支援で作成された合肥工業大学マルクス主義学部の別の報告書は、文化的、イデオロギー的なナラティブを促進することで、中国の力は世界的に強化されると指摘している。

 「TikTokによって、中国政府の戦略的なイデオロギーの優先順位に基づいてコンテンツを収集、整理したり、抑制したりして、米国内や、場合によっては同盟国の世論を操作するようなアプローチを取ることができるようになる可能性がある」と報告書は述べている。

 軍事的には、TikTokは人民解放軍(PLA)の2014年情報戦戦略の重要な要素である「三つの戦域」(世論戦、心理戦、法律戦)に対応可能だ。

 現在の軍民融合政策によるバイトダンスに対するPLAの統制と影響力は、運動エネルギー兵器を使わない戦争に利用されるようになると報告書は述べている。

 報告書は「三つの戦争ドクトリンと、米国で観察されたTikTokの作戦と技術とは重なりあっており、おそらく最も注目すべきものだ」と述べている。

 米国の調査報告書は、シンクタンク「中国バイオ・スレット・イニシアチブ」によって作成された。著者は戦略情報アナリストのライアン・クラーク氏と元空軍情報将校のL.J.イーズ氏だ。

 イーズ氏はワシントン・タイムズに、「司法省による最近の調査結果は、中国共産党がイデオロギーや政治的なナラティブを推し進めるために、大学生を含む米国人を戦略的にターゲットにしていることを明らかにしたわれわれの調査と一致している」と語った。

 「中国共産党がTikTokのようなプラットフォームを活用して個人データを収集し、コンテンツを操作しようとしている。これは、言論の力を利用して世界の世論に影響を与えるという、より広範な目標を反映したものだ」

 このイニシアチブの調査研究はまた、「2015年に発表された情報戦に関するPLAのあからさまなドクトリン(「三つの戦争」)…2016年のTikTokの創設、その結果として2023年にTikTokが進める戦略的な影響工作での中国の科学的進歩が一つの方向に向かっていることは明らかだ」と指摘している。

 報告書は、TikTokがリベラルな権利擁護団体「米国市民自由連合」(ACLU)を含む米国の団体が売却に反対している背景には、中国の法律戦があることを示唆している。

 TikTokを通じた中国の情報工作は、単にプロパガンダの拡散だけでなく、より微妙で洗練された長期的なプログラムによって、米国民の認識や文化的態度を長期的に、特に若者の間に形成することを目指していると報告書は述べている。

 TikTokの米国内のユーザーは約1億7000万人とされている。

 ドナルド・トランプ前大統領は2カ月前に登録し、現在900万人のフォロワーを誇っている。民主党の大統領候補カマラ・ハリス氏も最近TikTokに参加した。

 この2人の候補者のTikTokの利用は、若い有権者に接触する政治的ツールとしてTikTokを利用したいという両政党の願望を浮き彫りにしている。

 世論調査は、TikTokを最も多く利用しているのは18~34歳であることを示している。

 イニシアチブの報告書によると、TikTokを禁止する可能性をめぐる法廷闘争は、若い有権者の間で選挙の大きな争点になる可能性があるという。

 「米国内でTikTokを戦略的に利用することは…米国のデジタル環境での知的自由、プライバシー、情報の完全性に対する重大なリスクとなりうる」

 「これらのリスクは多岐にわたり、データプライバシーの潜在的侵害、ユーザーの監視、コンテンツの操作、中国の利益に沿った特定の政治的シナリオの組織的な宣伝などを含んでいる」

 TikTokのスポークスマン、アレックス・ハウレック氏は声明で、「この政治主導の研究は全くの作り話であり、コメントする価値はない」と述べた。

 シンクタンク、ゲート・ストーン研究所の中国専門家、ゴードン・チャン氏は、中国政府はTikTokを「戦争の道具」として武器化し、米国に対していわゆる「超限戦」を仕掛けていると述べた。

 「TikTokをうまく使えば、中国共産党が何を望んでいるかを見ることができる。中国政府はそのアルゴリズムを使って、ハマス寄りの偽情報や、ウクライナ戦争に関するロシアのシナリオ、その他の中国共産党寄りのプロパガンダを発信している」

 司法省が7月26日に裁判所に提出した資料によると、米国人のデータ収集に関する情報は、TikTokとバイトダンスの米国人従業員がユーザー情報を収集するために使用できるソフトウエアツールの発見に基づくものだという。

 中国人はTikTokを使って、連邦政府の職員や請負業者の居場所を追跡したり、脅迫用の個人情報を集めたり、企業スパイ活動を行ったりすることができるとこの資料には書かれている。

 「TikTokによって中国政府は、データ収集と秘密コンテンツの利用という二つの主要な方法で、米国の国家安全保障を損なうことができるようになる」

 資料にはさらに、収集した米国民のデータには、年齢、電話番号、正確な位置、インターネットアドレス、使用デバイス、電話連絡先、ソーシャルメディア接続、TikTokを通じて送信されたプライベートメッセージ、視聴した動画が含まれると記されている。

 米情報当局者のケーシー・ブラックバーン氏は、政府の立場を支持する提出書類の中で、「(報告書は)バイトダンスとTikTokグローバルが、中国国外のコンテンツを検閲するというPRC(中国)の要求に応じて行動を起こしたことを改めて立証した」と書いている。

 中国バイオ・スレット・イニシアチブの調査報告書は、TikTokをバイトダンスから強制的に切り離すことは、中国政府からの何らかの報復につながる可能性が高く、現在進行中の両国経済のデカップリング(切り離し)を加速させる可能性があると述べている。

 また、強制的な事業売却は、気候変動問題など、米中間で共有されている数少ない関心分野を不安定にする可能性もある。

 報告は「最終的にバイトダンスがTikTokを強制的に売却させられることになったとしても、中国が苦労して獲得したこの資産を手放すのか、あるいは他の間接的な方法で、米国内の新たなTikTokの中に再び入り込もうとするのかは不明だ」と指摘している。

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