トランプ氏、台湾TSMCの半導体独占解消へ高関税か

(2025年2月14日)

2021年10月20日、台湾の新竹にある台湾セミコンダクター・マニュファクチャリング本社に入る人。(AP Photo/Chiang Ying-ying、File)。

By Ben Wolfgang – The Washington Times – Tuesday, February 11, 2025

 トランプ大統領は、先端マイクロチップ生産の事実上の独占を解消するため、高関税をかけると脅しており、それは数日以内に現実のものとなるかもしれない。一方の台湾政府は今週、政権に軌道修正するよう説得するため、強力な経済代表団をワシントンに派遣した。

 トランプ氏は最近、台湾積体電路製造(TSMC)が製造する半導体チップ(スマートフォンを駆動し、アップルやエヌビディアなどの市場をリードする企業にとって不可欠なもの)に最大100%の関税をかける可能性があると述べた。台湾に本社を置くTSMCは、世界市場を事実上、独占している。世界の最先端半導体チップ生産の約90%が台湾に集中しており、実質的に世界のマイクロチップ市場を独占している。

 専門家は、TSMCが中国本土で複数の施設を運営しているという事実を含め、いくつかの理由から、米国にとって国家安全保障上の重大な問題であると指摘している。中国の共産主義指導者が台湾を軍事攻撃した場合、ハイエンドの最先端チップの世界的なサプライチェーン(供給網)が寸断され、米国の技術力と軍事力が大きなリスクにさらされることになるという。

 これらの要員を合わせれば、TSMCは21世紀の重要な産業に対して、非常に強い支配力を持つことになる。

 ジョージ・メイソン大学国家安全保障研究所上級顧問のアンディ・カイザー氏は最近の分析で、「現時点でTSMCは、ハイエンドチップの市場シェアを独占する事実上の国際独占企業であり、その規模と生産範囲に匹敵する米国企業は存在しない」と述べている。

 カイザー氏はリアル・クリア・ポリティクスへの最新の投稿で、「TSMCは中国本土でも製造施設を運営している。そのため、中国への強制的な技術移転、IP(知的財産)の窃取の可能性が出てくる。破壊行為すらありうる。台湾や中国以外で製造されたとしても、チップの知的財産や工場の操業能力は台湾と直接結びついている」と述べた。

 TSMCはワシントン・タイムズの取材に対しコメントを拒否した。

 台湾政府は1970年代半ばから半導体産業の発展を支援しており、TSMCの創業資金2億ドルの約半分を提供している。

100%関税がやってくる?

 トランプ氏や政府高官は、TSMCの市場支配について国家安全保障上の重大な懸念を表明している。トランプ氏は、海外からの商品をターゲットとする広範な関税計画の一環として、台湾製チップに最大100%の関税をかけると脅している。

 一方でトランプ氏は、バイデン政権下で行われた、TSMCの一部の生産を米国内で行うという動きにも強い懸念を表明している。バイデン政権の政策では、TSMCがアリゾナ州に先端半導体製造工場を建設するために、66億ドルの奨励金を投じることを求めた。先月、この工場は米国の顧客向けに4ナノメートル・チップの生産を開始したと報じられた。

 しかしトランプ氏は、TSMCの米国事業への補助金に反対であることを明らかにしている。トランプ氏は1月27日、共和党議員を前にした演説で、この問題に関する自身の考えを明らかにした。彼は、米国のチップ製造への大規模な新規投資を呼びかけ、TSMCのアリゾナへの投資を認める超党派の法律「2022年CHIPS・科学法」を非難した。

 トランプ氏は演説で「特に、ごく近い将来、コンピューターチップ、半導体、医薬品の海外生産に関税をかけ、これらの必需品の生産を米国に戻すつもりだ」と述べた。

 「彼らは我々を捨てて台湾に行った。バイデンが皆に何十億ドルも与えた馬鹿げたプログラムのように、我々は彼らに何十億ドルも与えたくない。彼らはすでに何十億ドルも持っている。手に入れたのは金だけだ。…彼らに必要なのは金ではない。必要なのは奨励策だ。その奨励策とは、25%、50%、あるいは100%の税金を払わなくていいということだ」

 トランプ氏が商務省長官に指名したハワード・ルトニック氏は先月、上院の承認公聴会で、米企業は「台湾に依存しすぎている」と述べた。

 ルトニック氏は議員らに、「われわれは米国内で…生産する必要がある」と語った。

 ニュースサイト「フォーカス台湾」によると、米政府内でのこのような動きを受けて台湾経済部は今週、トランプ政権高官と会談するため、2人の高官をワシントンに派遣したという。

 郭智輝・経済部長(経済相)は、今回の訪問は台湾が米国の技術を盗んだり、米国からチップ製造事業を奪い取ったりしていないことを明らかにすることが目的だと述べた。

 「われわれは全ての知的財産に対価を支払った。台湾は米国にとって最高のパートナーだ」

 また、トランプ政権のこのような広範な政策目標にかかわらず、世界の半導体チップ製造に大きな変化をもたらすことは非常に難しい作業であり、何年もかかると指摘する有力な国家安全保障関係者もいる。

 アスペン・ストラテジー・グループとアスペン・セキュリティー・フォーラムのエグゼクティブ・ディレクター、アンニャ・マニュエル氏は、「半導体は信じられないほど複雑なビジネスだ。米国はチップの設計でリードしており、チップを作る機械の製造でリードしている。チップを実際に製造することはあまり得意ではない。利益率が低いと考えられていたからだ。製造したくなかったということだ」

 マニュエル氏はワシントン・タイムズとの最近の独占インタビューで、「そのため、チップはほとんどここで設計され、台湾で製造されている。TSMCは有名で、世界で最も優秀だ。そして、その製品は世界中の私たちのポケットにある電子機器に搭載されている。このシステムをつくり直し、そのすべてを米国で生まれた企業に戻すことは、短期的にも中期的にも不可能だと思う。つまり、私たちはTSMCと提携するしかないということだ。それで問題はない」と述べた。

 多くのアナリストは、トランプ氏の関税の脅しは、TSMCに米国内への投資を強化させるためのものであり、実際に輸入関税を適用すれば、TSMCのチップに依存している米企業に深刻な結果をもたらすとみている。トランプ氏が計画を実行に移せば、米企業は、関税に伴って製品に追加発生する税金を負担しなければならなくなるからだ。

 台中に拠点を置く東海大学の経済学教授であり、台北のアジア太平洋商工会議所連合会の事務局長であるダーソン・チウ氏は最近、タイペイ・タイムズに、「TSMCのチップは、簡単には置き換えられない。インテルですら製造に手間取ったほどだ」と語った。

国家安全保障への影響

 問題となる可能性があるのは、台湾への中国の軍事的な動きだと主張するアナリストもいる。中国は台湾を自国の領土の一部とみなしており、習近平国家主席は中国軍の司令官らに、早ければ2027年にも台湾に対する軍事行動が取れるよう準備することを命じたと伝えられている。

 非営利権利擁護団体ブル・ムース・プロジェクトのエイデン・バゼッティ代表は、「中国がいつ行動するかは問題ではない。軍事行動であれ、技術戦争や破壊工作であれ、あるいはその両方が組み合わさったものであれ、このような攻撃は、米国の半導体サプライチェーンを寸断しないまでも、混乱させることは避けられないだろう」と言う。

 「政策立案者が厳しく、TSMCに地政学的状況に対する責任を問う時だ。幸いなことに、トランプ大統領にはそれを実行する手腕がある。彼は、外国製チップの氾濫を阻止し、米国に拠点を置くメーカーを支援するために関税を利用することを声高に主張している」

 また、中国が台湾の施設で米国の技術を入手できることにも深い懸念がある。

 2023年の議会調査局の報告書によると、「TSMCの最も重要で技術的に高度な能力(例えば2-3ナノメートルの製造)は台湾にある」とし、中国が台湾のTSMCでそのような高度な半導体を製造しているようにみえると警告している。

 「米商務省産業安全保障局の企業リストに掲載されているものも含め、多くの(中国の)企業や研究機関は、米国のオープンソース技術プラットフォームの会員資格を利用して、米国の技術や能力にアクセスし、台湾で製造できる高度な半導体チップを設計しているようだ」と報告書は述べている。

 ロイター通信は昨年11月、米商務省がTSMCに対し、中国企業への先端チップの出荷停止を命じたと報じた。これらのチップは、高度な人工知能(AI)アプリケーションに使用されることが多い。

 TSMCはこの件に関して米当局に協力したようだ。ロイター通信は、TSMC製チップが、米国の貿易制限リストに記載されている中国系通信大手ファーウェイ(華為技術)が保有するAIプロセッサーに搭載されていることが判明したとTSMCが商務省に通知したことを受けて、同省が命令を下したとしている。

 TSMCの広報担当者は当時、ロイター通信に対し、「法に従い」「輸出規制を含むすべての適用される規則と規制を順守することを約束する」と述べていた。

 商務省は2022年に、米国の半導体設計・製造企業のエヌビディアとAMDがAI関連のマイクロチップを中国に輸出することを制限するための措置を取ったが、これらの企業のチップがファーウェイのプロセッサに搭載されたという報告はない。同省はまた、米国のチップ関連大手、インテルとクアルコムにも規制をかけた。

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