米司令官、中国の台湾挑発は「統一への予行演習」

新華社通信が公開した写真で、東シナ海での合同海軍訓練に参加する中国とロシアの軍艦(2022年12月27日撮影)。(Xu Wei/Xinhua via AP, File)。
By Bill Gertz – The Washington Times – Thursday, April 10, 2025
中国軍は台湾付近で大規模かつ攻撃的な活動を行っており、米国と同盟国の安全を脅かしている―インド太平洋軍司令官が10日、上院での年次公聴会で語った。
サム・パパロ司令官は上院軍事委員会で、この地域で中国の軍事行動を抑止するのに十分な戦力はあるが、将来の中国の侵略を阻止するには米国の戦力を増強する必要があると証言した。
「中国はかつてない規模の挑発と軍近代化を進めており、国土、同盟国、パートナー国に深刻な脅威をもたらしている」
この地域での中国の軍事力強化によって、台湾付近での大規模な軍事作戦は300%増加した。中国は台湾併合をもくろんでいる。
台湾付近での中国の軍事活動は演習ではなく、軍事力を使った「力による統一」のための「予行演習」だ。
パパロ氏はまた、この地域の懸念として、北朝鮮が核兵器と軍事力を増強し続けていることも挙げた。北朝鮮はウクライナと戦うロシアに軍隊と武器を送った。それと引き換えに、ロシアからミサイルや潜水艦の技術を受け取っていると同氏は言う。
北朝鮮はロシアに「数百発」のKN24短距離ミサイルと数千発の砲弾を供給したという。
ロシアはまた、太平洋での中国との軍事協力の強化を通じて、地域の危険性を高めている。
パパロ氏は、中国とロシアが海軍と爆撃機が参加する合同軍事演習を米海岸付近で増加させていることは、両国軍が共同で米国と戦う準備をしていることを示していると述べた。
同氏は、太平洋の米軍、特に新型の攻撃型潜水艦が、中国のいかなる軍事行動に対しても「信頼できる抑止力」となることを確信していると述べた。
パパロ氏は「依然、抑止態勢に自信を持っているが、修正は必要だ」とした上で、議会が義務づけている「太平洋抑止構想」は「中国の脅威に対抗するものだ」と述べた。
最新の国防権限法では、兵器と訓練のために156億ドルがこの構想に提供されている。
また、この地域の米軍は、長距離攻撃兵器を増強し、統合された防空・ミサイル防衛、自律型・人工知能型兵器システムの配備に今以上に注力する必要があると述べた。
中国人民解放軍(PLA)に対抗するためのインド太平洋軍の最優先事項は、宇宙とサイバースペースで「支配的」になることだ。そのためには、増強が進むPLAの指揮、統制、情報システムをたたきつぶすツールが必要だ。
パパロ氏は、中国の宇宙兵器に対抗するために、防衛的な宇宙兵器を配備することを求めた。バイデン前政権はこれに反対していた。
同氏は、PLAが戦闘機、ミサイル、海軍力、宇宙兵器に関して米軍を凌駕しており、兵器生産を加速させていると述べた。
紛争を抑止することは義務であるが、いかなる紛争にも勝利するためには、兵器と能力による裏打ちが必要だとパパロ氏は語った。
在韓米軍司令官のザビエル・ブランソン陸軍大将は、パパロ氏とともに証言し、北朝鮮が核兵器を拡大していると強調した。
ブランソン氏は、トランプ政権の一部が朝鮮半島に駐留する米軍の削減を支持していると報じられる中、在韓米軍2万3000人の削減に反対すると述べた。
在韓米軍の削減は、「紛争に打ち勝つわれわれの能力を大幅に低下させる」からだ。
ロジャー・ウィッカー委員長(共和党、ミシシッピ州)は、自身が昨年、インド太平洋のパワーバランスは中国に有利にシフトしていると警告していたことを強調。
「それ以来、中国共産党は台湾とフィリピンに対する強圧的な活動を著しく強めている」と訴えた。
ウィッカー氏は、インド太平洋軍には110億ドルの資金が必要だと述べた。
「われわれは、生存性の高い長距離弾、信頼性の高い指揮統制システム、能力を高めている中国のサイバーシステムや宇宙システムに対抗する能力の向上が必要だ。これを避ければ、大変なリスクを負うことになる」
中国がこの地域で制空権を掌握する能力についての質問にパパロ氏は、PLAは2100機の戦闘機と200機のH6爆撃機を保有していると述べた。中国は米国の戦闘機1機に対して1.2機の割合で戦闘機を生産している。PLAの長距離空対空ミサイルも「とてつもない脅威」だと彼は言う。
艦艇の生産ではさらに差は広がる。パパロ氏によると、PLAは米国の1.8隻に対して6隻を生産しているという。
パパロ氏は、中国に最も近いアジアの島々について、「(中国の航空戦力は)第一列島線で優位に立ってはいない。制空権を渡すことはない」と述べた。
中国の侵攻によって台湾を失った場合の影響については、中国に奪われれば、日本と韓国の核兵器拡散につながる可能性が高いと警告した。
パパロ氏は、中国船が台湾近海の海底通信ケーブルを密かに切断しているとの報道について、初めて公の場でコメントを発表した。
中国船は最近、海底ケーブル数本を切断した。これについて台湾当局は「グレーゾーン」戦争の一例と主張している。
この活動は、台湾攻撃の前哨戦であり、中国が海上民兵船を使って海底ケーブルを切断する計画を持っていることを示している。
パパロ氏は、インド太平洋軍司令部のあるグアムやハワイの米領島嶼部に対する弾力的な通信能力の開発を求めた。
代替通信は、スターリンクのような低軌道衛星ネットワークを通じて行うことができるという。
新型戦術核ミサイルの米攻撃型潜水艦への配備について問われたパパロ氏は、迅速な配備が望ましいと答えた。
計画では、2034年までに潜水艦発射核巡航ミサイルを配備することになっている。
「2034年では遅すぎる。もっと早くすべきだ」
またパパロ氏は、長距離極超音速兵器を含む米国の極超音速ミサイルの陸海軍への配備を早めることに賛成だと述べた。
陸軍への配備は今年後半に実施される予定だ。海軍への配備は遅れている。
パパロ氏は「(極超音速ミサイルは)敵のキルチェーン(攻撃を開始し完了するまでのプロセス)を迅速に遮断し、攻撃を阻止するために必要だ」と述べた。
「もし敵が、こちらを5倍速く攻撃できるなら、その能力を使った先制攻撃を誘発することになる」と彼は言う。
「21世紀を支配するのはスピードだ。21世紀はスピードが勝負だ」
米国の極超音速ミサイルの実戦配備は、中国の極超音速ミサイルの非対称性に対抗する上で極めて重要だとパパロ氏は言う。
同氏は、米空母は中国のミサイル攻撃の「格好のカモ」だというある上院議員の発言を擁護した。
空母艦載機のパイロットを務めたパパロ氏は、「空母は自衛能力を備えた動くカモだ」と語った。
空母の利点には、陸上攻撃ミサイルや対艦ミサイルを発射できる戦闘機による大火力がある。
米海軍の水中戦能力は中国より一世代進んでいるものの、米潜水艦も中国の対潜水艦戦能力に対して脆弱になってきているという。
中国の量子コンピューターの開発により、中国海軍は「海域を水浸しにし(大規模な監視態勢を敷き)」、米潜水艦を探知することができるようになる可能性があるという。
パパロ氏は、「彼らは(米潜水艦を)見つけるために懸命に働いており、われわれはそれに対抗するために懸命に働いている」と述べた上で、潜水艦を増やし、潜水艦の産業基盤を強化する必要があると強調した。