バイデン氏、国連総会へ 同盟国との関係改善の好機
By Jeff Mordock – The Washington Times – Sunday, September 19, 2021
バイデン大統領は21日、大統領として初の国連演説を行うが、米国の最も親密な同盟国との間に生じた関係の修復を迫られることは間違いない。
現在、世界中で米国への信頼が揺らいでいる。アフガニスタンからの撤退をはじめとする一連の外交政策の失敗により、同盟国は、米国が今後も信頼できるパートナーであり続けるかどうかに疑問を抱くようになっている。
バイデン氏の判断力が疑われる出来事があったばかりだ。アフガンでの無人機による攻撃をめぐって国防総省は当初、テロリストを殺害したと主張していたが、先週になり、死亡したのは10人の民間人で、うち7人が子供だったことを認めた。
ワシントンのシンクタンク、ニュー・アメリカン安全保障センターの欧州安全保障専門家、カリサ・ニッチ氏は、「最近のあらゆる出来事から欧州では、同盟国を重視するという米国の主張が単なる見せかけなのではないかという懸念が生じている」と述べた。
「バイデン大統領は多国間主義の重要性に言及するだろうが、欧州は米国がこの問題について口先だけでなく、実際に行動することを望んでいる」
ホワイトハウスによると、バイデン氏の国連総会での日程は、新型コロナウイルスの懸念から短縮される。バイデン氏は20日にアントニオ・グテレス事務総長と会談し、21日に総会で演説を行うが、それ以外の外交活動は、オンラインやワシントンで行われる。
バイデン氏は演説で、世界中で新型コロナワクチン接種を増やすための手順を説明し、気候変動に対してより強力な行動を取るよう首脳らに呼び掛けるとみられている。
また、就任以来、世界のリーダーたちに向けて発信し続けてきた「米国が戻った」というメッセージを明確にする。バイデン氏は、トランプ前大統領の「米国第一主義」とは対照的に、自らを「チームプレーヤー」と位置づけている。
しかし、国連の舞台裏でバイデン氏は、この主張が本当であることを同盟国に納得させることに尽力することになる。
バイデン氏は先週、オーストラリアとの数十億㌦の原子力潜水艦の契約を交わし、長年のパートナーであるフランスを失望させた。この契約によってフランスは、オーストラリアとの900億㌦の潜水艦契約を失い、反発している。
これを受けてフランスは、駐米大使と駐オーストラリア大使を召還するという驚くべき対応を取った。また、米国にとって最古の同盟国であるフランスは、米国との緊密な関係を祝うワシントンの大使館での祝賀会を中止した。
フランスのジャンイブ・ルドリアン外相は、潜水艦合意を「背後から刺されたようなもの」と呼び、バイデン氏とトランプ氏を比較した。
ルドリアン外相はフランスのラジオ局で、「この野蛮で一方的で予測不可能な決定は、トランプ氏がかつて行っていたこととよく似ている。私は怒り、憤慨している。同盟国間で行われるべきことではない」と述べた。
欧州の安全保障を専門とするニッチ氏は、ルドリアン氏が21日に国連で、バイデン氏に敵対的な態度を取るとみている。
「欧州の人々がトランプ大統領に対して不満を抱いていたのは、予測不可能だからだったが、今、再び同じことを感じていると思う。欧州の人々が、バイデン大統領をトランプ大統領と比較して、予測不可能で頼りにならないと考えるなら、バイデン大統領の欧州での信頼は大きく傷つくことになる」
同盟国を苦しめた外交政策の決定は、アフガン撤退とオーストラリアとの潜水艦合意だけではない。
バイデン氏は、トランプ政権で停止されたパレスチナへの2億3500万㌦の援助を復活させ、イスラエルを怒らせた。
また、プーチン大統領が推進しているロシアとドイツを結ぶガスパイプライン「ノルド・ストリーム2」の建設に取り組んでいる企業に対するトランプ政権時代の制裁を解除した。これに対してウクライナは、バイデン氏がロシアに「地政学上の危険な武器」を渡したと非難した。
民主党議員もこの決定を非難した。上院外交委員会のボブ・メネンデス委員長(ニュージャージー州)は、パイプラインがロシアの欧州侵略を助長すると指摘した。
バイデン氏の政策転換により、米国の同盟国は、自国の安全保障を危険にさらす決定から外されたと不満を抱いている。同盟国は、バイデン氏と米国が約束を守る、信頼できる国かどうかを疑問視している。
欧州の同盟国の中には、アフガンからの撤退をめぐる政権の対応に強い不満を抱いている国もある。
撤退は混乱し、アフガンをタリバンの支配下に置き、テロリストの安住の地を作り、大規模な人道的危機を引き起こした。
欧州の同盟国は、バイデン氏が自らに課した8月31日の撤退期限を延期するよう求めたが、バイデン氏は受け入れなかった。
バイデン氏は彼らに背を向けることで、長年のパートナーであった多くの国々を動揺させた。米国が自ら作り出した危機から逃げ出したという印象を世界に与えた
この問題によって、かつての北大西洋条約機構(NATO)に対する米国の揺るぎない関与に疑問が投げかけられている。欧州の一部では、米国の支配を受けない防衛力を検討している。
国連演説の後も、バイデン氏にはリセットの機会はある。今月末には、中国の軍事的侵略に対抗するため、米国、インド、日本、オーストラリアの4カ国による初の首脳会談を行う。
また、9月には米国と欧州連合(EU)の首脳がピッツバーグに集まり、第1回貿易・技術協議会が開催される。この会議では、貿易の促進、気候変動への対策、労働者の権利の保護に焦点が当てられる。
特に気候変動と人権に関しては、米国とパートナー国の間で多くの合意事項がある。
しかし、アフガンからの撤退は、米国の欧州同盟国を傷つける結果となり、これを癒すには何十年もかかるだろうとアナリストは考えている。
米国に最も近い同盟国である英国は、アフガン撤退に対して最も厳しい批判をしている。英国の政治家らは、議会でバイデン氏を非難した。
英労働党のキール・スターマー議員は、バイデン氏のアフガン撤退について「破滅的な判断ミス」と酷評した。
アフガンに派遣されていた保守派のトム・タジェンダット議員は、バイデン氏がアフガン軍がタリバンに降伏したことを非難したことに怒りをあらわにした。
「一緒に戦った仲間の勇気に疑問を投げかけ、逃げたと主張するバイデン氏の姿は恥ずべきものだ」と述べた。
アフガンの復興に何十億㌦もの資金を投じてきたドイツも、怒りをあらわにしている。
ドイツ議会の外交委員長、ノルベルト・レットゲン氏は、今回の撤退を「(バイデン)政権による重大かつ広範囲な誤算」と呼んだ。
しかし、この失態は挽回可能だ。そのためには、バイデン氏が欧州諸国の優先事項に耳を傾ける必要があるとニッチ氏は言う。
「米国が政治日程を組み、同盟国の意見を聞こうとしなければ、うまくいかない。それは無意味なレトリックとみなされるからだ」