中国の「要求リスト」拒否、バイデン米政権の強硬姿勢は変わらず
By Bill Gertz – The Washington Times – Sunday, November 14, 2021
中国政府が、米国との関係改善の前提条件として、二つのリストをバイデン政権に提出していたが、バイデン政権がこれを拒否していたことが明らかになった。米国の対中強硬姿勢の軟化を期待したものだが、空振りに終わった格好だ。
このリストは、シャーマン国務副長官が7月26日に中国・天津で中国当局者らと会談した際に渡された。リストには、関係改善前に正すべき米国の16の「誤った」政策と10の「懸念」が記されている。
米当局者は、リストの提示は正式なものではなく、米国の対中政策に影響はないとした上で、「マルクス主義者・毛沢東主義者のしなければならない」要求リストと指摘。「一笑に付しただけでなく、一切反応していない。無視し、今後もそれは変わらない」と述べた。
このリストは、バイデン政権が発表した協力と対立という2本立ての対中政策を受けたもの。
バイデン政権は、トランプ前政権の対中強硬策の大部分を維持する一方で、気候変動対策などで協力を得るための懐柔策も取っている。
ハドソン研究所の中国専門家、マイケル・フィルズベリー氏は、バイデン政権内で対中タカ派の影響力が低下していると指摘し、対中姿勢が政権内で軟化している可能性を明らかにしている。
要求の柱は、中国のマルクス・レーニン主義政治体制への攻撃をやめること。中国外務省の趙立堅副報道局長は、7月27日の会見で、中国共産主義への攻撃をやめることが「重要事項」の一つであり、「中国の特色を帯びた社会主義への対抗、中傷、転覆の試みをしてはならない」と訴えた。
「中国の特色を帯びた社会主義」とは、習近平体制下で進められてきた市場志向の共産主義を指し、米国を超え、国際的な影響力の拡大を目指すためのものだ。
この要求リストは、昨年11月にオーストラリア政府に出されたものに似ている。オーストラリアのメディアで公表され、関係改善の条件として、中国企業への制限の解除、新型コロナウイルスへの中国の初期対応への調査要求の取り下げなどが含まれていた。
だが、オーストラリアはこの要求の後、対中姿勢を硬化させ、対中経済依存からの脱却へと舵(かじ)を切る一方で、中国包囲網の一環として米英との安全保障枠組み「AUKUS(オーカス)」が発足した。
リストの内容は公表されていないが、趙氏によると、
①中国が新型コロナ発生源と見なすことをやめる
②新疆ウイグル自治区でのウイグル族へのジェノサイド(集団虐殺)への批判の停止
③香港での抑圧政策への批判の停止
④南シナ海での米国と同盟国による海上・航空作戦の停止
などが盛り込まれている。
米当局者らは、このリストは、関係悪化は戦争につながる可能性があるという政権内部の懸念をてこに、米国の対中政策を親中へと変更させようという戦略の一環との見方を示している。