米・国家安全保障省、国境の移民を「メキシコに留める」政策を再開

(2021年12月5日)

2021年10月27日、メキシコ・チアパス州のヴィラ・コマルチトランに到着した移民たちは、メキシコを通って米国との国境を目指す旅を続けている。(AP Photo/Marco Ugarte, File)

By Stephen Dinan – The Washington Times – Thursday, December 2, 2021

 メキシコは木曜日、米国への不法移民をメキシコに送り返す、というトランプ政権の国境政策再開を容認する、と発表した。その条件として米国の国土安全保障省(DHS)は、移民に関する法廷審理を迅速化すること、コロナ予防接種を提供すること、そして移民の状況改善を支援することを明らかにした。

 バイデン政権は同政策再開に不満で、司法命令を遵守しただけだと断っている。この措置は公式に「移民保護協定(MPP)」と呼ばれるが、世間では「メキシコに留める」政策として知られている。DHSによると米国は、来週初めから移民のメキシコ送還を開始する。

 トランプ政権下で制定されたMPPは、偽装の亡命申請を食い止めて、2019年に発生した国境越えの急増を抑制した。しかしバイデン政権は同政策が移民に無慈悲だ、として大統領就任式当日に停止した。

 木曜日には両国政府が、MPP再開合意について、それぞれ声明を発表し、その概要を説明した。

 DHSによれば、メキシコ側の要請に応じ、MPP再開に「人道的な」改善を加えた。DHSはMPP対象者への法定審理を6か月以内に決着させること、メキシコ国内での法的手続きを受けやすくすることなどを約束した。

 また新規にMPP登録者には、COVID-19ワクチンが提供される。DHSはまた、MPP登録者が待機する場所として勧められている収容施設の安全性改善を、メキシコ側に強く申し入れると言明した。

 米側の確約を踏まえ、メキシコ外務省は次のように発表した。「人道上の理由と、暫定的な措置としてメキシコ政府が決定したのは、米国内の移民担当判事に出頭して亡命申請をする予定が決まっている移民を、母国に送還することはないことだ。」

 しかし移民権利の擁護関係者は、今回の変更措置に憤慨している。例えばニューヨーク移民連合は、MPP再開が亡命希望者に対してバイデン大統領が約束してきたことを「根本的に裏切った」と厳しい。

 「この(バイデン)大統領は少し前に、米国の国境政策が人々にひどい負担をかけている、と非難した。だが今現在、バイデン大統領は我が国の移民制度を改革・再建する仕事にほとんど手を付けていない」、同連合の常務理事ムラド・アワウデ氏は言い切った。

 アメリカ移民評議会も、政府がMPPを復活させることで、政府は「約束を破った」と批判し、そのプログラムでは人に優しい形で運営できない、と断言した。

 「今日は米国にとって、法の支配にとっても暗い一日だ」、同評議会の政策責任者ホルヘ・ロウェリー氏は語った。

 MPP制度の下でメキシコ以外の国から不法に国境を越え、米国内で移民の権利を主張しようとする者は、裁判所から審理の日程通知を受け取ったあと、メキシコに送り返されて待機することになる。

 この制度の主眼は、ニセの亡命申請を思いとどまらせることにあった。その背景には、中米の移民が米国に入国してしまえば、移民申請をした後で米国内に留まっていられることだ。このため偽装申請が殺到した。こうした人々の中には、申請審理まで数年間も待機し、その間に合法的に仕事に就くケースもあったのだ。

 しかし移民の権利擁護派は、メキシコに戻された人々の中には、然るべき理由のある申請者でも阻止されたり、不当な仕打ちを受けたり、場合によっては弁護士との連絡その他の支援を得られなくされたこともある、と指摘した。

 擁護派の活動家は、MPPに登録された数千件の移民リストを作成して、米国からメキシコに送還された後に強盗や殴打、レイプの被害にあったり、それ以外の困難に直面したことを報告している。

 バイデン政権は出発間もなく、MPP制度を停止し、DHSのアレハンドロ・マヨルカス長官も6月初旬に同プログラムを完全撤廃しようとした。ところが連邦判事の一人が、マヨルカス長官の権限行使に行き過ぎがあると判断し、MPPプログラム再生に「誠実な」努力をするよう命令した。

 マヨルカス長官はMPPを撤廃するつもりであり、その根拠を示す詳細な文書を発出したと釈明した。しかし裁判所の命令が有効なままで、同長官は挽回のための措置を講じなければならないわけだ。

 ちなみにMPPが2019年に始まってから、今年1月にバイデン政権が同制度を停止するまで、約68,000人がMPPの適用を受けた。

 その数は国境を通過する総数から比べれば少ないが、トランプ時代の当局者によると、MPP制度のおかげで移民予定者たちに明確なメッセージを送り、人々の流れは鈍化したという。

 メキシコはトランプ大統領から厳しい制裁の脅しを受けて、2019年にMPP拡大適用に同意した。中米の移民が利用していたルートに沿って、さらに南側での人の流れを遮断するため、数万人もの州兵を動員したりした。

 それに加え、亡命申請を削減するための他の措置とともに、MPP政策を実行したことで、2019年に発生した国境での流入急増を解消するのに役立った。

 バイデン政権はトランプ政策を消し去ったが、「タイトル42」の名で知られるコロナ感染に関連した国境閉鎖は続いている。この「タイトル42」の下では、メキシコは通常、スペイン語を話す独身の成人、および7歳未満の子供を持たない家族の送還を認めている。

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