一つ一つの命を敬い米国の再生を

(2021年12月8日)

2021年12月1日(水)、ワシントンにある連邦最高裁判所の前で、2018年に制定された法律によって、生存能力のかなり手前である妊娠15週以降の中絶が禁止されるミシシッピ州からの訴訟の弁論を聞いている中で、中絶反対派の抗議者のグループが一緒に祈っている。(AP Photo/Andrew Harnik)

By Editorial Board – The Washington Times – Thursday, December 2, 2021

 人間の生命に対する畏敬の念が衰える時、文明は腐敗する。生命が安価な2021年ごろの米国が、それを物語っている。殺人や騒乱といった行為を互いに繰り返す市民の日常の姿は、心が冷酷になった市民の典型的な例だ。それは、また、互いに対する米国人の心を一番かたくなにしているのは――私たち人間の中でも最も罪が少なく、か弱い――胎児を殺す慣行でもある。今こそが、妊娠中絶の全面的認可を徐々に縮小し、生命への敬意を取り戻す時なのである。

 米最高裁は1日、ミシシッピ州の医療関係の責任者であるトマス・ドブズ博士と民間クリニックの名称を取った「ドブズ対ジャクソン・ウイミンズ・ヘルス・オーガニゼーション」訴訟の口頭弁論を開催した。これは、2018年にミシシッピ州で成立した、妊娠15週以降の妊娠中絶を原則禁止する州法が憲法違反に当たるかどうかを問う事件である。その州法の成果は、1973年の訴訟で、くだんの慣行を合法化した「ロー対ウェイド訴訟」および、その付帯物である「家族計画連盟対ケーシー判決」を覆すことができた。それは、1992年に諸州に、今では科学的に時代遅れになっている胎児の「生存能力」を基本とした中絶規制に裁量権を与えた。仮に、そういうことが起きたら、各州は自由に選挙区民の姿勢に合わせて独自の法律を作成するようになる。

 最高裁はおそらく、6月までは、判決を言い渡すことはないであろうが、中絶活動家らは、すでにその結果が、自分の胎児が生きるか死ぬかのどちらかを選べる女性の権利を奪うことになりはしないかと恐れている。事実、今までに、その権利によって、6000万人以上の命が奪われてきた。

 ニューハンプシャー州の民主党員、ジーン・シャヒーン上院議員は、「革命が見たいなら、やってみたらいい。『ロー対ウェイド』を廃止してみよ。そして、一般人、特に、若者たちがどう出るかを、見たらいい」と言って、最高裁の口頭弁論を取り巻く感情の火に油を注いだ。

 しかし、米国の都市の中には、万引き犯を起訴しないでおいたために、窃盗犯までもが、無罪同然になってしまったという話がある。シャヒーン女史も、同じく、文句を言ったりすると、暴動をあおる結果になることを恐れて、市民らに略奪する権利をしっかり入手しておくよう促すだろうか。米国人は、道徳的に鈍感になっているショーウインドー破りの生き残る権利が通用するのをいつまでも傍観してはいないであろう。

 最近のピュー研究所の調査で、社会秩序の重要な要素である家族はすでに崩壊しつつあることが分かった。50歳未満の親のいない人たちの中で、子供を生む計画を持たない米国人の割合は、3年前の37%から44%に急上昇したという。子供のいない階層は、自分自身の時間とカネを出し惜しむトレンディーな現代人でいっぱいなのだ。

 中絶実施工場から出てきて、そういう人たちは、彼らのコミュニティーになだれ込んでくる不法移民の子供らのための給付金制度運用に使われる資金提供源たる自分らの高額税金コミュニティーに大急ぎで舞い戻っては、働いている。そういうことが、どれほど「進歩的」なのだろうか。

 50年がたち、国の人工妊娠中絶法は、その間の科学的進歩によって解明された胎児の個性を認めるよう改められるべきだ。米国を、今後も持ちこたえさせるつもりなら、妊娠中絶が生じさせる生命の価値低下の道は避けて、それに対する畏敬の念の再生に道を譲らなければならない。

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