中国のウクライナ安全保障 核威嚇で侵攻の露と板挟み
By Bill Gertz – The Washington Times – Monday, February 28, 2022
ロシアのプーチン大統領は、 核戦力部隊に警戒態勢の強化を命じ、ウクライナへの核兵器の使用をちらつかせている。ところが、ウクライナ侵攻でロシア寄りの姿勢を取る中国は2013年に、核の脅威に対して安全を保障するという合意をウクライナと交わしており、今後プーチン氏が核による軍事圧力を強化すれば、中国は難しい立場に立たされることになりそうだ。
中国共産党の習近平総書記とウクライナのヤヌコビッチ大統領(当時)は13年12月5日、両国を「戦略的パートナー」とし、中国の核戦力で核の脅威からウクライナを守ることを約束する合意を交わした。
両国は声明で「中国は核を持たないウクライナに対し、核兵器を使用せず、核兵器による威嚇もしないことを約束する。さらに中国は、ウクライナが核兵器を伴う侵攻に直面、または、核による侵攻の脅威にさらされた場合、ウクライナに核の安全を保障する」としている。
約20年前、世界第3位の核大国だったウクライナは、旧ソ連から受け継いだ核兵器を放棄して非核保有国となり、核拡散防止条約(NPT)に加盟した。
ロシア軍は三方からウクライナに侵攻し、制圧を目指したものの、苦戦しており、プーチン氏は2月27日、国営テレビで「欧米諸国は経済面でわが国に敵対的な姿勢を取っているだけでなく、北大西洋条約機構(NATO)の幹部らも、わが国に攻撃的な声明を発表した」と述べ、侵攻への非難に対して強い反発を示した。
ロシアの核の脅しは、新軍事ドクトリン「エスカレート・トゥー・ディエスカレート」に基づくもの。米国防当局者によるとこのドクトリンは、核の先制使用の可能性を示唆することで緊張を高めた上で、自国に有利な方向に紛争を進めることを目指すもので、通常戦力が弱く、強大な核戦力を持つロシアの現状を反映している。
中国は、侵攻を明確に支持しない一方で、非難もしておらず、ロシアがウクライナとの間に「正当な安全保障上の懸念」を有していると指摘するにとどめている。
ウクライナは中国との軍事面での関係が強い。中国に未完成の空母を売却、改修後、中国初の空母「遼寧」になった。戦闘機や航空機のエンジンも売却しており、中国はそれを基に、軍用輸送機や偵察機を製造している。
中国とウクライナの核合意を最初に公表した米国務長官の政策顧問を務めたマイルズ・ユー氏は、ウクライナに対して核の威嚇を最もしそうな国はロシアだが、そのロシアも中国の戦略的パートナーだと指摘、「ソ連の元衛星国をロシアが核で脅すというシナリオの中で、中国は約束を守り、核兵器でロシアに対抗するのだろうか」と述べている。