バイデン氏の失言
By Editorial Board – The Washington Times – Tuesday, May 24, 2022
バイデン大統領はまた、やってしまった。熱心な記者の質問に答え、米国の重要な地政学的スタンスをひっくり返してしまった。世界が混乱し、核兵器で問題山積の国々が不安に陥れられている時代には、大規模な政策についての誤った発言は、最悪の軍事的偶発事故を引き起こす危険がある。米国人が、失言癖のある大統領に対して歴史的に受け入れ難い気持ちを抱いてきたことに、改めて合点がいく。
バイデン氏は、インド太平洋地域の連携を強化するための地域歴訪中の23日、東京で面倒を起こした。バイデン氏が、ロシア軍の軍事侵攻を受けているウクライナを補強するために米軍を派遣することを拒否したことを受けて、記者は「台湾を守るために軍事的に関与するつもりはあるか」と尋ねた。
「ある」とバイデン氏は答えた。「力ずくで、力だけで奪い取れるという考えは全く適切ではない。地域全体を混乱させ、ウクライナで起こったのと同様の事態を招くことになる」と続けた。また、やってしまった。
ホワイトハウスは直ちに、この問題のある発言を修正し、台湾・中国関係に対する米国の政策は変わっていないと主張した。「戦略的あいまいさ」――この島の独立した実体を破壊するための力の行使を非難する一方で、台湾は中国の一部であるという中国政府の主張に同意し、意図的に人を混乱させる言葉――は、半世紀もの間、米政府の基本的なスタンスだった。
バイデン氏のびっくり発言が時差ぼけによるものにせよ、79歳という高齢によるものにせよ、中国は、軍事力をひけらかす前に、言い直しをする時間も与えず、「中国は、その主権と安全保障上の利益を守るために断固とした行動を取る。本気だ」と言った。
バイデン氏が米国の外交政策を軽々とひっくり返したのは、これが初めてではない。1月、ロシアがウクライナに侵攻すれば責任を問われることになろうと断言する一方で、北大西洋条約機構(NATO)は「軽微な侵略」は大目に見るだろうとほのめかした。この発言が、ロシアのプーチン大統領に青信号をともしたとは言わないが、赤信号とも言えない。悲しいことに1カ月後、ロシア軍は大挙して隣国に突入した。
3月には、ロシアがウクライナで大量破壊兵器を使用すれば、NATOは「何らか」の対応を取るようになると述べ、文明世界を恐怖に陥れた。いかなる理由であれ、そのような兵器を配備すれば、国際法に違反することになる。
口が滑ると、意図しない混乱を招くことがある。1950年、ディーン・アチソン国務長官は、米国の「防衛境界」に韓国を含めることができなかった時に、演説で不用意な誤りを犯した。共産主義の北朝鮮は、機が熟したと認識し、半年もたたず侵略戦争を開始し、いまだ正式な和平合意を欠いたまま同胞相争う事態となった。
政治家は、興味を持っていることについては容易に、しっかりとした主張ができるものだ。だが、考えがしっかりしていない場合、職務の負担がのしかかると、判断力が鈍り、たわごとを口走ることがある。
AP通信によると、バイデン氏の支持率は39%と悲惨な水準に落ち込んでいる。これは「バイデナンセンス」(バイデンの失言)によって高まったリスクに、人々が怒りを募らせているという事実を反映している。