米政府の対イラン譲歩は国事犯に近い-トランプ政権のボルトン顧問語る
By Joseph Clark and Guy Taylor – The Washington Times – Wednesday, August 17, 2022
トランプ政権で国家安全保障問題担当大統領補佐官を務めたジョン・R・ボルトン氏は、バイデン政権がイラン・イスラム共和国との間で結ぼうとしている核合意に関して、将来の米国大統領が同合意を終了しにくくなるような保証をすれば、それは「国事犯に相当するような」取引になるかもしれない、と述べた。
ボルトン氏はイラン問題のタカ派で、オバマ政権下で結ばれたイランとの核合意から、2018年に撤退する際にトランプ大統領と緊密に働いた人物だ。水曜日に同氏は、バイデン政権がイランと締結しようとしている合意内容の如何を問わず、将来の共和党政権は間違いなくそれを覆そうとするだろう、と述べた。
同氏の発言は、イランの交渉担当者がバイデン政権に対し、如何なる合意であれ、将来の米国大統領がそれを破棄する場合はイラン側に「補償」をする「確約」を求めた、との報道が飛び交う中、在ワシントン記者らとの懇談の中で飛び出したものだ。
バイデン政権は補償云々の報道に関してコメントしていない。
米国・国務省のネッド・プライス報道官は、欧州連合が最近流布している核合意に向けた「最終テキスト」に対する、イラン側の対応を検討していると述べた。「最終テキスト」では、対イラン制裁の緩和と引き換えにイランが核活動を制限するとした、2015年の核合意を再開する道筋が提案されている。
一年以上も断続的に続けられている交渉で、核合意の実現が差し迫っているのか否か、未だ不明だ。その背景には、ボルトン氏をふくむトランプ政権の当局者暗殺疑惑など、イランの対米挑発があった。
プライス報道官は、非公開の対イラン交渉の状況についてはコメントできないと述べた。
将来の米政権も核合意を了承するよう具体的な保証をイラン側が要求したか否か、国務省とホワイトハウスは確認をしていない。
ホワイトハウスのある報道関係者は、イランが要求していると報じられているような、将来に渡って合意順守を確約するための「補償など提供した前例がない」と語った。
米政府が対イラン交渉中に提供したという保証措置に関して、ホワイトハウスはワシントンタイムズに対し、2021年10月から米・仏・独・英の共同声明の中で、「イラン側が同様に応じる限り、米国はJCPOA(包括的共同行動計画)を完全に遵守し、それを維持する、というバイデン大統領のコミットメント」を示唆した。
しかしCNNの火曜日の報道では、この交渉に関して説明を受けた外交官の言葉として、イランの交渉担当者は将来の米国政府が合意から撤退することを懸念していると述べた。
同外交官によると、「合意再開を妨げている一番の問題は、本当の解決に達する前に、将来の米国政府が合意から再度撤退すると決定した場合を想定して、イラン側が求めている保証措置だ」という。
イラン側交渉チームのモハマド・マランディ顧問がCNNに確認したところでは、米国大統領が再開された核合意、正式には「包括的共同行動計画」から撤退した場合に、米側が「何らかの代償を支払う」保証をイラン側は求めている。
イランが具体的にどのような補償を求めるかは明らかでないが、ボルトン氏によると、イラン当局がワシントンは合意を破棄しようとしていると判断すれば、イスラム共和国が米国に代価を払わせるための様々な方法を追求するだろうという。
「ひとつは外交における損害という発想で、後に続く米政権が合意から撤退した場合、イランに損害賠償を支払わなければならないというものだ。これが過去数週間、マスコミで報じられている問題だ」、ボルトン氏は指摘した。
「数週間もしくは数ヶ月前に、イランはロシアなどの国に運び出した可能性のある濃縮ウランを運び戻す提案をしたと報じられた」。このボルトン氏の主張について、ワシントンタイムズは、そうした報道があった事実を裏付けることができなかった。
前政権の国家安全保障問題担当大統領補佐官はさらに言う、「仮にバイデン政権が、今後の大統領が核合意から撤退することを想定して、米国に損害を与える条件で交渉しているならば、それは国事犯に匹敵しかねない」と述べた。
「この合意に参加したい、将来の大統領もそれに留まってほしいと望むことと、その合意から撤退しにくくするために米国の国益を損なわせることは別の話だ」、ボルトン氏は強調した。
司法省は先週、イスラム革命防衛隊(IRGC)の工作員一人に対して、ボルトン前補佐官を殺害する目的で、米国内の複数の接触先に最大30万ドルを支払おうとしていた容疑で告発したことを発表した。
ボルトン氏は、イラン抵抗国民会議(NCRI)がイランの核計画をテーマにワシントンで開催したパネルディスカッションに出席後、上述の発言をした。NCRIという組織はイラン・イスラム共和国から国外追放され、イランが秘匿してきたナタンツ核施設を、2002年に暴露したイラン人反体制派グループ「ムジャヘディン・ハルク」と関係がある。
バイデン政権は、2015年に締結された核合意の再開をめぐる交渉が数ヶ月にわたって停滞しているため、泥沼状態だ。前トランプ大統領が2018年に同合意から撤退した時、オバマ大統領が合意の条件として緩和した対イラン制裁を、再び課すなどしてイランへの圧力を強めた。
トランプ政権はまた、IRGCを国務省の公式な外国テロ組織リストに載せた。
核合意の再開に向けた欧州連合からの「最終テキスト」に対するイラン側の書面回答全文は公表されていない。イランは過去一年間、米国および欧州の当局者との協議の中で、様々な要求を提出してきた。
中でもイランは、国内に貯蔵されながら未申告が疑われている核物質について、国際原子力機関の査察を制限したい。イランはまた準軍事エリート集団であり、米国司法省がボルトン氏の殺害計画に直接関与しているとにらんでいるIRGCに対して、米国と欧州が経済制裁を解除するよう求めている。
米国務省のプライス報道官は今週、バイデン政権がそうしたアクションには消極的であり、IRGCのテロ組織指定も解除しない、と記者団に語った。同報道官は、米国が核合意を確かなものにするために、そのような措置を検討している、といった「非常に不正確な報道」を非難した。
議会の民主・共和双方の議員たちは、核合意を再開しようとする政府の試みを半信半疑で眺めている。議員たちはホワイトハウスが、テヘランとの交渉の経緯を隠し過ぎているとして公然と批判した。
しかしバイデン大統領は議員らの反発を無視するように、核合意を再開させる決意を堅くしている。
ボルトン氏は水曜日、民主党内に核合意への反対意見が高まっていると指摘した。そして「今の時点で合意に戻るべきか否かの議論では、民主党内により多くの反対がある」と語った。「2015年に最初の核合意を開始する際に直面した反対よりも強い反発が起きている。特に秋の中間選挙を前にして、基本的に擁護しようのない政策を擁護しなければならないことに懸念を深めている民主党員が大勢いる。」
ボルトン氏は、新たな核合意によって将来の大統領の選択肢を制限するような試みは、必然的に米国に害を及ぼす、と断言した。「現政権が何を言おうと関係ない。将来の大統領が合意から撤退したければ出ていくまでだ。それだけだ。」