中国 台湾侵攻で海底ケーブル遮断も

(2022年9月7日)

中国本土で最も台湾に近い68海里の景勝地から見た台湾海峡を進む船(中国福建省南東部の屏東で、金曜日、2022年8月5日)。中国は木曜日、ナンシー・ペロシ米下院議長の訪問を受けて、この地域の緊張を過去数十年で最高レベルにまで高めた軍事演習の一環として、台湾沿岸の海域で「精密ミサイル攻撃」を実施した。(AP写真/Ng Han Guan)

By Bill Gertz – The Washington Times – Monday, August 29, 2022

海運に支障、米経済にも打撃

 台湾海峡で中国との紛争が起きれば、海底通信ケーブル、周辺海域での海運が遮断され、周辺各国だけでなく、米国の経済にも大きな影響を及ぼす。保守系米シンクタンクが最新報告でこう指摘した。

 ジョージ・メイソン大学メルカトゥス・センターが8月末に公表した報告によると、中国は「包括的な台湾侵攻計画」を立てており、「侵攻による米経済への影響は、ロシアのウクライナ侵攻よりはるかに大きい。通信だけでなく、域内主要港を出入りするコンテナ船も直接、リスクにさらされる」と指摘している。

 報告はネット上で公開されているデータなどから標的となる可能性がある数百カ所を割り出した。その中には、軍事施設だけでなく、通信ケーブルが海から陸揚げされる中継所も含まれている。

 データは米シンクタンク、ニュー・カイト・データ・ラボが中国のIPアドレスから入手したもので、メルカトゥス・センターが分析した。このIPアドレスは、米国を標的とした2019年10月~21年10月のサイバーセキュリティー関連の複数の事件に関与していたことが分かっている。

 それによると、中国軍は攻撃の中で、海底ケーブルを切断したり、海底ケーブルにつながる地上の基地を攻撃したりすることで、軍民双方の通信を遮断する可能性があり、「有事には、台湾との米国の物流、通信が困難になる」可能性を指摘している。

 このデータには、台湾の29万4100カ所の座標、住所、電話番号などが記載されており、軍事施設や「戦略的に重要で、物理的な衝突の被害を受けやすい」民間の施設も含まれているという。

 そのうち183カ所が、基地、学校、兵舎などの軍事施設。341カ所は、空港、鉄道駅、海港などの物流拠点。情報・通信・技術の拠点は、通信施設、インターネット・サービス・プロバイダー、海底ケーブル中継所など550カ所で、中華電信やタイワン・モバイルの施設、半導体メーカーのクアルコム・タイワンなども標的の候補として挙げられている。

 台湾には3カ所の地上中継所を通じて、15本の海底光ケーブルがつながれており、「これらの中継所には、米IT企業が巨額の投資をしている」という。ところが、海底ケーブルの保護は、国際法で明確にされておらず、有事には攻撃を受けやすい。

 報告は、台湾で通信が遮断されれば、1日で5563万ドルの損害が出ると指摘している。

 また、現在、台湾海峡を通って運ばれているコンテナ船を迂回させることになれば、米国、日本、フィリピン、韓国、ベトナムへの海運は、新たなルートを探さなければならなくなる。保険料と輸送コストは、船ごとに数千万ドル増えることになる。

 報告は「マラッカ海峡周辺を航行するすべての船を迂回させるために必要なコストは、1カ月当たり(インドネシア経由で)2億7900万ドル、(オーストラリア経由で)2億8200万ドルと見積もられている」と指摘した。

 台湾有事となれば、航空輸送も制限される。

 中国は8月、ペロシ下院議長訪台を受けて大規模な軍事演習を実施した。専門家の間では、侵攻の準備との指摘もあり、この演習によって中国軍は、軍事力で台湾を包囲できることを示した。

 ニューヨーク・タイムズ紙も8月下旬、中国が、台湾を外界から遮断するための包囲能力の確保に取り組んでいると報じた。だが、中国がすぐに台湾に全面侵攻できるかどうかは、今のところ不明だ。

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