高まる北の脅威で、米と東アジアは同盟協力を強めよ、元米軍司令官
By Guy Taylor – The Washington Times – Tuesday, October 4, 2022
米国と韓国との軍事同盟は、米国が保有する最強の防衛パートナーシップだが、北朝鮮の脅威に直面している米国・韓国・日本はさらに有効な対応をするため、「三国間の協力」を進めるべきだ - この地域の米軍元最高司令官は促した。
ウォルター・ローレンス・シャープ陸軍大将(退役)は、在韓・国連軍司令部と米韓統合軍と在韓米軍の司令官を務めた。「朝鮮半島での紛争は地域的なものだが、グローバル紛争に発展する可能性もある」と警告した。
日本と韓国の歴史のもつれで、米国が東アジアの要になる二大同盟国と安全保障政策を調整したり、北朝鮮への統一戦線を提示することが複雑になった。北朝鮮は火曜日、日本の空域を通過させたミサイル実験によって、この地域にある脅威を再び露呈させた。
「ミサイル防衛と諜報の分野で、韓・米・日の協力が重要だ」、シャープ将軍は、ワシントン・タイムズ財団が主催しているオンライン討論シリーズ「ワシントン・ブリーフ」で訴えた。
「日本も北朝鮮からのどんな攻撃でも防御できる極めて強力な能力がある」、同将軍は強調した。
平壌からの挑発が強まる一方で、韓国と日本は長年のすれ違いと激論のせいで両国関係が崩壊しかかっていた。今やっと宥和の兆しが出てきて、日本では防衛支出を増やし始めたところだ。
韓国軍と米軍による合同軍事演習に対決する形で北朝鮮による一連のミサイル実験が行われる中で、韓・米・日の軍艦は先月、5年ぶりに三国共同の対潜訓練を実施した。
「この三国間協力が始まり、それが続いていることに私はたいへん励まされている」、シャープ将軍は述懐した。また韓・日・米の三国防衛演習は、「北朝鮮の潜水艦による攻撃や挑発を抑止し、それが発生した際には共同対応できる」ことを示した、と総括した。
北朝鮮の脅威に対抗する米国主導の努力は、20世紀初めから朝鮮半島を日本が植民地支配した歴史にさかのぼるように、韓・日間の緊張が沸騰して妨げられてきた。2019年には緊張が非常に高まり、韓国は日本との間の重要情報共有協定を取り消す、とまで言及するに至った。
韓国人は日本から最初は植民地として、次いで第二次世界大戦中の仕打ちなどで、日本の態度には気色ばむところがある。一方で日本の当局者は、日本政府はずっと以前に賠償を行ったが、韓国政府は国内政治の都合で過去の恨みを復活させようとしてきた、と批判してきた。
2018年に日本は、韓国海軍駆逐艦が火器管制レーダーで日本の航空機を標的にしたと非難した。日本はその後、韓国の産業技術に不可欠な物品等の輸出に関して貿易制裁を発表した。この動きは韓国で反日感情を爆発させた。
それでも日・韓は米国と三方向の同盟を支持してきた。今年に入って一層攻撃的な北朝鮮の弾道ミサイル実験と、米国諜報機関が警告してきた7回目の核爆弾の実験の瀬戸際だからだ。
北は2017年以降、核実験せず
注目された六月、日本の岸田文雄首相と韓国で就任したばかりのユン・ソクヨル大統領が、マドリード(スペイン)で開催されたNATO(北大西洋条約機構)首脳会議の傍らで、バイデン大統領と会談した。彼らは歴史的な緊張打開への希望を表明した。
その後のAP通信によると、岸田首相は防衛予算の劇的拡大を進めており、日本は米国と中国に次いで世界第3位の防衛予算を持つことになる。
日本はミサイル能力を向上させ、先制攻撃の態勢までも備えてきた。批判的な識者に言わせれば、こうした動きは日本の防衛政策を抜本的に変えるもので、第二次世界大戦後の長期間、日本の自衛隊の武力行使を制限してきた平和憲法に抵触するものだという。
「どこでも」最強の同盟
そうした背景で、シャープ将軍は米国の在外軍事基地として最長となったハンフリーズ陸軍駐屯地の拠点である韓国とのパートナーシップの堅固さを強調した。
「韓国と米国の軍事同盟は、米国が世界に保有している最強の同盟だと、私は確信している」、同将軍は「ワシントン・ブリーフ」で語っている。
シャープ将軍は、米・韓の兵士・将校を指揮系統の全ての段階で対等な立場に置くという、韓米同盟のユニークな「統合軍事力」を説明した。また韓国以外の18カ国の軍・将校から構成された国連司令部が、韓国に統合した形で駐屯していることを指摘した。
北は従来から通常兵器と核兵器の脅威であり、ソウルの「国防予算はGDP(国内総生産)比で、NATO同盟国のどこよりも大きい」、同将軍は説明した。
北朝鮮の指導者たちが目下、韓国との「国境付近に戦術的核兵器を配備することを協議している」限り、防衛支出は不可欠だと述べた。
「ワシントン・ブリーフ」の常連パネリストであるジョセフ・デトラーニ氏とアレクサンドル・マンスロフ氏は、北朝鮮が保有する爆発力が低い「戦術的」核兵器の危険性を強調した。
ジョージタウン大学・安全保障研究センターの非常勤教授であるマンスロフ氏は、北の指導者・金正恩が攻撃を受けたり、北朝鮮が差し迫った核攻撃に直面した場合には、政権を守るために先制的核攻撃の政策を採る、という北朝鮮の新しい法律を説明した。
「本質的に同法は、北朝鮮が何らかの差し迫った攻撃を検知すれば、先制的な核攻撃を発することができるというものだ」、マンスロフ氏は指摘した。
元CIA当局者で米国の外交顧問を長年務めたデトラーニ氏は、関連事態の利害関係は極めて高いから、「我々が置かれた極限の緊張や、さらにエスカレートする可能性、核兵器使用も含んだ偶発的な紛争に巻き込まれないため、本気で北朝鮮の人々と話し合う必要がある」と述べた。
シャープ将軍は「北朝鮮が非武装地帯のすぐ北で、即時戦闘態勢を持った大規模の通常兵力を保有している」と指摘した。
「彼らは六千基以上の中・長距離砲システムを保有し、そのうち四千基が韓国を標的にでき、特に移動せずしてソウルを攻撃できる」、同将軍は注意を喚起した。
「北朝鮮はまた世界最大の特殊作戦部隊を有するほか、お墨付きのサイバー能力を保持している」、シャープ将軍は言った。そして平壌が「極超音速能力から、潜水艦をふくむ多様な基地から発射可能な重量級ミサイル」、そのほかの未来的兵器を開発中だと指摘した。