台湾有事における日本政府の機能不全リスクに備えよ

(2022年10月26日)

中国と台湾に関するイラスト Alexander Hunter/The Washington Times

By Y.Watase – The Washington Times Japan– October 26, 2022

 アントニー・ブリンケン国務長官やマイク・ギルデイ米海軍作戦部長らが中国による台湾有事への懸念する中、日本側の危機意識は極めて低い状況となっている。

 臨時国会が開会して安全保障に関する議論は一向に深まりを見せず、セキュリティ・クリアランスの問題すら進展を見せていない。

 それどころか、高市早苗経済安全保障大臣が9月28日、「BSフジLIVE プライムニュース」出演時に明らかにしたところでは、閣僚就任時に「中国という言葉を出さないでくれ」そして「来年の通常国会にセキュリティ・クリアランスを入れた経済安全保障推進法を提出すると口が裂けても言わないでくれ」と念押しをされたと言う。これでは一体何のための経済安全保障大臣なのかサッパリわからない。岸田政権が迫りくる台湾有事を前にして最低限の準備であるセキュリティ・クリアランスですら前に進める気がないことが透けて見える。

 また、米国は台湾有事の際に日本を重要なキープレイヤーとして当然想定しているだろうが、現状の岸田政権にそのような意思と能力があるかは極めて疑問だ。経済安全保障やサイバーセキュリティなどの近年急速に問題が浮上している分野の取り組みも極めて不安だ。

 まず岸田政権の人事は極めて頼りない。林芳正外務大臣は日中友好議員連盟元会長であり、自民党内では親中派の中心人物の一人とみられている人物だ。バイデン政権は経済安全保障を協議するため、新たに経済版日米2+2を立ち上げた。日本側は外務省・経済産業省が所管する形で進める運びとなっているが、このような人事で米国側が安心して情報共有を行うことができるだろうか。日米間の連携の肝となる同会議の行く末が危ぶまれる。

 また、サイバーセキュリティは安全保障上の最重要項目である。7月末のペロシ訪台時には台湾のコンビニのデジタルサイネージがジャックされる事件が起きたが、同問題を所管する自民党内閣部会副部会長には人民解放軍系の北京航空航天大学名誉教授の経歴を持つ山田太郎議員が就任している。米国であれば真っ先にセキュリティ・クリアランスの規定にひっかかる人事であろう。

 米国側は日本政府・与党の状況を認識できているかは疑問だ。対ロ・対中東対策が喫緊の課題となる中、日本側の人事について関心が必ずしも高いとは言えないだろう。台湾有事の際、自衛隊は日本を守るために機能するだろうが、必ずしも政治がそれを必ずしも対応できる体制となっているかは極めて疑わしい。

 日米同盟のパートナーシップの人選について両国民が納得できる体制が組めなければ、今後想定され得る有事を円滑に処理することは望めない。米国政府は日本政府の有事認識や人事認識に対して問いただすことが必要だろう。

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