バイデン政権 核兵器の役割を軽視 核政策の指針を修正

(2022年11月9日)

2022年9月16日金曜日、ウズベキスタンのサマルカンドで開催中の上海協力機構(SCO)首脳会議で、中国の習近平国家主席と話すロシアのプーチン大統領(左)は身振り手振りを交えている。(Sergei Bobylev, Sputnik, Kremlin Pool Photo via AP)

By Bill Gertz – The Washington Times – Wednesday, November 2, 2022

 米バイデン政権は、将来の脅威を抑止するために核兵器を使用するとした二十数年前からの米国の指針を、このほど発表した核政策の指針「核態勢の見直し(NPR)」最新版で密(ひそ)かに廃止していたことが明らかになった。米国の防衛政策の中での核兵器の重要性を軽んじるものであり、核兵器への依存を強める中国、ロシアを勢いづかせる可能性が懸念されている。

 米国は、中国とロシアが、戦略兵器の規模を拡大し、有事の核使用に関する指針を変更するのに合わせて、政策を更新してきた。

 米国は核をめぐる公式な指針として、冷戦終結直後の1994年以降、過去4回のNPRで核兵器を「不確実な将来に対する抑止(ヘッジ)」としてきた。ところがバイデン政権はこの文言をNPRから密かに削除した。

 核政策専門家らは、核兵器は兵器削減交渉を補強するために必要である一方、このNPRの変更が、保管されている数百発の核弾頭の廃棄につながり、核を保有する競合国の大規模な「ブレイクアウト(核兵器の急増)」に対抗できなくなる可能性があると懸念を表明している。

 国防筋はワシントン・タイムズに、この変更が重大であることを認めた上で、武器管理をめぐる交渉を難しくし、想定外の核の脅威に対する抑止力を弱めることになると述べた。

 一方、国防総省高官は、「ヘッジ」という文言の削除によって、核兵器の果たす公式な役割の一部が失われるが、最新のNPRでは「強固なリスク管理戦略」「全面的な」核近代化を続けていくことを求めていると、抑止力の低下につながるとの懸念を否定した。

 国防総省の元核政策担当職員は、この文言の削除は、「この報告の中でも最も重要な問題」と指摘、「運用を停止しているほとんどの核兵器が、延命計画によって維持されなくなることを意味する」と懸念を表明した。

 米国務省の9月1日の報告によると、ミサイル、潜水艦、爆撃機に1549発の核弾頭が配備されている。大部分は、保管され、配備されていないか、廃棄を待っている状態にある。国務省によると、2020年時点で3750発を保有しており、2201発が配備されていないことになる。

 バイデン政権は、核兵器の役割を従来の四つから、①戦略的攻撃を抑止する②同盟国、パートナー国の安全を守る③「抑止力が効かなかった場合に米国の目的を果たす」の三つに制限した。

 18年のNPRは、第4の役割を明示していた。それは、最新版で削除された「不確実な将来に対する抑止」だ。18年版では、米国が世界での核兵器の役割を削減しようとしているにもかかわらず、潜在的な核保有敵対国は「明らかに逆の方向に進んでいる」と指摘、米露の核戦略への対応の必要性を訴えていた。

 また、ヘッジ戦略は地政学、技術、作戦、計画をめぐる想定外のリスクに備えるために必要であり、「ヘッジ兵器」としての核戦力はさらに、抑止力を強化し、敵国の核の増強への自信を削ぐ効果があると強調していた。

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