中間選挙の挫折をトランプに押し付ける共和党幹部

(2022年11月12日)

2022年11月8日(火)、選挙日にフロリダ州パームビーチのマー・ア・ラゴで来賓に語りかけるドナルド・トランプ前大統領(AP Photo/Andrew Harnik)。

By Tom Howell Jr. and Seth McLaughlin – The Washington Times – Thursday, November 10, 2022

 ドナルド・トランプ前大統領は6年間、共和党の舵をとってきた。同党の有力者は今、同氏を船外に叩き出すつもりのようだ。

 彼らの不満、それはバイデン大統領の不人気を追い風に、中間選挙で共和党が大量得点するはずだったのに、トランプ氏は共和党の潮に乗るどころか、党を座礁させてしまったというのだ。

 トランプ氏が選り好みした候補者たちは、大事な選挙区で惨敗した。ペンシルベニア州でメフメット・オズ氏は共和党の上院議席を民主党に譲り渡した。ミシガン州の親トランプ候補は、トランプ弾劾に賛成した下院議員に共和党の予備選では勝ったが、火曜日の本選挙で民主党候補に敗北してしまった。

 「ドナルド・トランプは我々にとって政治的なチャレンジだ」、元下院議長のポール・ライアンはミルウォーキー市のWISNラジオ局に語った、「我々はまだトランプ酔いの中にあるのだ。しかし彼は我々の仕事や選挙戦の足手まといになってきた。」

もっと無遠慮な発言も

 バージニア州のウィンサム・シアーズ副知事は、2020年に「大統領再選を目指す黒人の米国の人々」と銘打ったグループを率いたが、共和党の大統領を再選させるには、共和党がトランプから卒業すべき時だ、と断言した。そして今回の選挙結果が明らかにしたのは、有権者が「別のリーダーを望んでいる」ことだ、と語った。

 「真のリーダーは自分が厄介者になった時を知るべきだ」、シアーズ女史はフォックスニュースに語った、「真のリーダーは退場の時期をわきまえているものだ。有権者はとても明瞭なメッセージをくれた、もう十分だ、と言っているではないか?」

 マルコ・ルビオ元上院議員(フロリダ、共和)の補佐官グレッグ・ヌンジアタ氏は、トランプが「勝ちレースなのに明らかな負け馬を選んでしまった」と厳しい。

 「トランプは一方的な勝ちゲームだったのに、弱い候補者を選んでしまったため、共和党が他で費やすはずの莫大な資金を投入する羽目になった。」ヌンジアタ氏のツイートは続く、「お金と言えば、トランプは数千万ドルを巻き上げながら、共和党連中を助けるために10セントを惜しんだ。」

 トランプ陣営に留まり、彼の「アメリカ第一」政策を広め続けようとする共和党員にとって事態はもっと複雑だ。彼らの一部は何が起きるか、待機状態だ。

 「もう同じ汽車には乗らない、と決めた人も多くいるが、大方は選挙前と同じ方角を向いていると思う」、ワシントンタイムズの論説員で、トランプ政権下で立法担当の副補佐官を務めたマイク・マッケナ氏は説明した、「連中は今見ていることに全くひるんでいない。」

 同時に、とマッケナ氏は言う、「それら選挙結果を総括して、万事大丈夫だ、歩み続けよう、と言うかもしれない。トランプ同調者の相当数がパラシュートの開き綱を引っ張りたがっているいるが、それを大っぴらにやる準備はできていないようだ。」

 トランプ政権の報道官だったケイリー・マケナニー氏はフォックス・ニュースで、「トランプ氏は大統領選挙戦への出馬発表を、12月6日のジョージア州上院議席の決選投票の後にすべきだ」と発言してヒンシュクを買った。

 彼女はまた、決選投票での共和党候補ハーシェル・ウォーカー氏の選挙応援には、トランプ氏ではなく、フロリダ州知事のロン・デサンティス氏が理に適っている、と発言した。

 トランプ氏が共和党を掌握してきたのは、「アメリカを再び偉大にしよう!」運動を率いて、2016年の大統領選挙ではヒラリー・クリントン女史に対して大番狂わせの勝利を納め、政界に衝撃を与えて以降、盤石のものになっていた。同氏は連邦最高裁判所に三人の保守系判事を任命し、集会を開けば、賑やかな聴衆を集め続けた。2020年の大統領選挙でも世論調査を上回る結果を出し、それが選挙後の混乱を生み出し、2021年1月6日の合衆国議会への暴挙事件につながった。

 退任してからもトランプ氏は、「マル・ア・ラーゴ」の大邸宅から政界の大御所的な役割を果たしてきた。共和党の支点のように、全国の選挙戦に影響を及ぼしてきた。

 だが上院共和党の院内総務ミッチ・マコーネル議員などの共和党幹部は、トランプ氏が支援してきた候補者は力量不足で勝ち目がないこと、別の候補を立てれば勝利できることを数ヶ月間警告してきた。

 「実際、こんな事態を見たことがない」、ニュージャージー州でクリス・クリスティ知事の報道官を務めた共和党ストラテジストの一人、コリン・リード氏は指摘した。「選挙戦に”トランプ大統領”が関与することで、彼は自らを審判台につけているのだ。彼は予備選にも関与したが、その候補の多くがゴールラインにたどり着けなかった。これはトランプ自らが作り出した問題だ。」

 ジョージア州での決選投票は、共和党の重鎮たちがトランプ氏を重宝し続けるか、置き去りにするかを決めるものになろう。2020年大統領選挙での敗北でトランプ氏が露わにした不満が、2021年1月ジョージア州で上院議席の二つを民主党に明け渡した理由にされた。

 共和党がネバダ州かアリゾナ州で上院議席を獲得したら、ウォーカー氏が、民主党のラファエル・ワーノック上院議員に挑んだことは極めて重要だ。ウォーカー氏が勝利すれば、トランプ氏がジョージア州出身のサッカー伝説であるウォーカー氏を応援したことによって、共和党が上院を掌握できた功績を主張できるだろう。しかし今のところ下馬評は芳しくない。

 ピーター・キング元下院議員(ニューヨーク、共和)は厳しく迫る。トランプに宣告すべき時だ、「あなたはクビだ!」と。「それこそが共和党員のドナルド・トランプに伝えるべきメッセージだ、それも、できるだけ早くに!今年は共和党の「赤い波」選挙だったはずなのに、共和党がかろうじて下院を取り戻し、上院で50-50の膠着状態が再現した」とキング氏はツイートした。「この失策の主要な原因はドナルド・トランプその人だ。彼は大規模集会を開いては自らを大言壮語し、2020年の選挙に不平を言いつのっては他の共和党員を攻撃した。最初から最後まで、常にトランプのエゴの主張だった。」

 トランプ政権時代および2020年のトランプ選挙キャンペーンで主席広報官を務めたホーガン・ギドリー氏は、共和党の勝ち負けをいちいちトランプ氏に帰せるのは早計だ、という。各選挙はユニークで、多様な要素が影響するからだ。

 「人々は往々にして、勝ち負けを特定の問題や要因に帰結させたがるが、必ずしもそうとは限らない」、こう主張するギドリー氏は、トランプ氏の政治目標を持続させる非営利団体の「アメリカ・ファースト政策研究所」に属する「選挙公正センター」の副会長を務めている。同氏は言う、「(アメリカンフットボールの)クォーターバックというポジションは、実際にそんなことはあり得ないのに、勝利と敗北のすべての賞賛と非難を一身に受けるものだ。」

 彼はペンシルベニアという、登録済み民主党員の数が共和党員より数十万人も多い州に触れた。トランプ氏は予備選でデビッド・マコーミック氏に対抗したオズ氏を熱心に支援した。しかしこの有名医師は、民主党が上院確保の天王山と位置付けた戦いに押し立てたジョン・フェッターマン氏に惜敗した。

 「ペンシルバニアは大きく右傾した州でないから、共和党候補者が直面している課題は、フロリダ・ミシガン・オハイオ州などとは違うはずだ」、ギドリー氏は共和党が近年、力を伸ばす地域を挙げて説明した。

 ペンシルベニア州の上院議員を引退するパトリック・J・トゥーミー氏は、議席を民主党に譲り渡したことを「実に残念だ」と述べた。

 「共和党がトランプ氏と程よい形で一挙に決別する場面はないと思う」、トゥーミー氏は「フィラデルフィア・インクワイアラ」に語った。「ドナルド・トランプの影響力は徐々に、しかし確実に低下し、彼が何らかの責任を負う事柄で大失敗した後から急降下していくと思う。」

 ギドリー氏はトランプ氏が大統領戦に名乗りを上げるタイミングや、デサンティス氏が出馬するか否かでハンディキャップをつけるか、など進言する気もないと語った。しかし同氏はデサンティス・フロリダ州知事が明らかに人気があり、伝統的に民主党寄りだったマイアミデイド郡を共和党支持に引っ繰り返したことを指摘した。

 「ドナルド・トランプは依然として共和党のリーダーだ。保守の集会や模擬調査では、まだ勝者の貫禄だ」、ギドリー氏は言った、「あなたの党が権力の座にいない時、党のリーダーは誰か、声高な詮索が絶えないものだ。それはホワイトハウスを握っていない党の業のようなものだ。だが今の時点で共和党がどこに向かうか、ドナルド・トランプが極めて大きな重みを負っていることは明らかだ。

 ギドリー氏はエレイン・ルリア下院議員(バージニア州、民主党)についても語った。同女史は1月6日の暴挙に関する下院特別委員会に属して、選挙には敗れた。ギドリー氏に言わせれば、「アメリカ・ファースト」政策を受け入れた候補者の多くが選挙では順調だった。

 「皆が指弾すべき一つのことを探しているらしいが、それはまったくの読み誤りだ」、ギドリー氏は指摘した。「いくつかの大きな成果があったはずだ。ナンシー・ペロシ女史はもはや下院の議長ではない。」

 トランプ氏も中間選挙で「素晴らしい仕事ができた」と述懐し、「将来を見据えるのに非常に忙しい」と述べた。

 「ある面で火曜日の選挙は少しがっかりだが、個人的立場で言えば、あれは大勝利だった。全体で『219勝16敗』なんだから!」、ギドリー氏はSNS「トゥルース・ソーシャル(世間の真実)」で述懐している。「それより高い勝率を挙げた人がいるかね?」

 しかし同氏が言う勝利の多くは、勝ち間違いなしの共和党の基盤で起きたことだ。

 トランプ氏にとって逃げようのない事柄は、デサンティス氏の否定できないスター性とパワーだ。

 セバスチャン・ゴルカ氏をふくむ一部のトランプ連合は、デサンティス氏がトランプ嫌いの共和党員で、その中にはMSNBCのホストであるジョー・スカボロー氏と、「ブッシュ贔屓の連中」などの人々にとっての寵児だ、という見方を広めている。

 長年の共和党ストラテジストで、反トランプの「リンカーン・プロジェクト」の設立者の一人、スティーブ・シュミット氏は言う、「デサンティス氏はトランプからMAGAを奪った」、「トランプに迫り来るのは起訴だけだ。」それはトランプ邸宅の「マル・ア・ラーゴ」で見つかった政府機密文書の捜査のことだ。

 デサンティス氏は、元下院議員で知事も務めたチャーリー・クリスト氏を20ポイント近い差で破り、党内での知名度と、トランプ退場を待つ最右翼の地位を確かなものにした。

 共和党の活動家によると、デサンティス議員は日常業務を管理する以外は、ホワイトハウスを目指す2024年選挙戦に本気なら、行動開始の最適タイミングを計るという課題に直面している。

 「彼はまだ本分に従事している、多様な州民を有する国内最大州の知事なのだ」、リード氏は言う、「歴史を見れば、二期目の知事として大統領候補になれず挫折していった例は枚挙にいとまがない。彼を批判する連中や、彼の成功を快く思わない人々が、今から大統領候補の予備選まで、長い時間に悪影響を与えるかもしれない。彼は今でこそ有利な立場にあるが、そこから脱落しないことが課題になるだろう。」

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