民主党、再選目指すトランプ阻止に「過激な法的措置」も

(2022年11月23日)

フロリダ州パームビーチのマー・ア・ラゴで演説中にポーズを取りながら、3度目の大統領選出馬を表明するドナルド・トランプ元大統領(2022年11月15日撮影)。メリック・ガーランド司法長官は15日、ドナルド・トランプ前大統領のフロリダ州の領地に機密文書が存在したことに関する司法省の捜査と、1月6日の暴動と2020年の選挙を覆す取り組みに関わる別の捜査の重要な側面を監督する特別弁護人を指名した。(AP写真/Andrew Harnik)

By Susan Ferrechio – The Washington Times – Sunday, November 20, 2022

 大統領再選を目指すと先週発表したドナルド・トランプ前大統領だが、まだ出馬集会は開いていない。その一方で民主党は、同氏の2期目阻止にあの手この手の策を検討中だ。

 メリック・ガーランド司法長官はトランプ氏(76歳)の捜査を担当する特別検察官を任命し、捜査は向こう一年はかかる見込みだ。この期間はトランプ氏が共和党から三度目の大統領候補指名を受けるための大事なキャンペーンの最中だが、悪くすると刑事告発を受けるかもしれない。これなどはトランプ再選阻止のために民主党が設定する様々な障害の一つにすぎない。

 政府の犯罪捜査の焦点は、バイデン大統領の2020年選挙勝利を、トランプ氏が不法な手段で阻止しようとしたか否か、トランプ氏が大統領官邸から機密文書を持ち出したのは違法か否かを調べる。しかし、それだけではない。リベラル諸団体から支援を受けた数グループが連携して、トランプ氏は国家反逆の罪を犯しており、2024年の選挙に参加資格がないと説得にかかっている。

 連邦議会では、民主党主導の「1月6日委員会」が数週間以内に報告書を出す態勢にある。その内容はほぼ全てがトランプ氏の策動、すなわち2020年大統領選挙のバイデン勝利宣言を阻止し、2021年1月6日に首都で激高したトランプ支持者たちによる暴動を扇ったことへの責任を問うものだ。

 民主党は前大統領を再び立候補させてまで、同氏を困惑させようとしているふしもある。民主党はトランプ氏の人間的な欠陥と、それにうんざりした共和党有権者が、2024年選挙でトランプ氏を敗北させると読んでいる。

 しかし共和党上院司法委員会の元補佐官マイク・デイビス氏は指摘する、「民主党が本気でトランプ大統領を敗退させられると確信するなら、連中はなぜ、アメリカ国民が彼に投票する機会を奪うような過激な法的手段を弄しているのか。」

 テッド・クルーズ上院議員(テキサス州、共和党)は、トランプ氏が大統領選出馬を宣言した数日後に特別検察官を任命したことについて、「トランプ不安症候群とでも言えるが、今度は権力と権威をかさに着ている」と揶揄した。

 二つの団体、「人民の自由言論」と「ミ・ファミリア・ヴォータ」は、トランプ氏を選挙するというオプションを有権者に与えたくないのだという。彼らに言わせると、トランプ氏が2020年選挙でバイデン勝利宣言をさせまいと謀ったことは、合衆国憲法に含まれた南北戦争時代の条文を使って、トランプ氏の被選挙権を奪える罪に相当するというのだ。

 すなわちトランプ氏は、連邦議会がバイデン氏の勝利認証をするのを阻止しようと、1月6日の議事堂攻撃を扇動したことは、反乱に当たるという。その日トランプ氏が付近で開いた集会参加者の一部が議事堂を襲撃し、警察官を負傷させ、議事堂に傷をつけた。一部は暴徒化し、民主党指導者やマイク・ペンス副大統領を探し回った。議員たちは議事堂から逃げ出し、警察と州兵が議事堂を確保するのに数時間を要した。

 上記の二団体は目下、「憲法修正第14条第3項に依拠して、トランプを今後一切の公職選挙から排除するよう、各州の州務長官と選挙管理委員長らに督促している」と主張している。

 「人民の自由言論」の共同設立者の一人ジョン・ボニファズ会長は、長年トランプに反対してきた人物で、トランプ就任の一年後の2018年に本を書き、連邦議会はトランプ氏を弾劾するべきだと、その理由を展開している。

 ボニファズ氏はワシントンタイムズの質問書に応じていないが、ABCニュースに語ったところでは、トランプ氏は2024年選挙の際に、「彼の被選挙権をめぐる法律上の課題に直面するだろう」という。

 トランプ氏は他にも様々な訴訟や犯罪捜査の対象になっている。

 ジョージア州フルトン郡の地方検事は、約二年前にトランプ氏に対する犯罪捜査を開始したが、それは同州の2020年選挙結果を覆そうとしたトランプ氏の行動に関するものだ。その選挙では辛うじてバイデン氏が優勢だった。

 トランプ氏はまた、ニューヨーク州のレティシア・ジェームズ司法長官から提起された、トランプ本人とトランプ機構とその上部管理者らに対する訴訟に直面している。ジェームズ長官は数年この方、トランプ倒しを公約し、2018年にはトランプ氏を「非嫡出大統領」と呼んだことがある。同長官による訴訟はトランプ氏のみならず、彼の家族と関連企業の上級幹部が、業務上の貸し付けに有利になるよう、純資産を故意に膨らませた容疑だ。

 マスコミ報道によると、ニューヨークの連邦検察官は、トランプのメディア会社が連邦証券法に違反したとして捜査している。一方、連邦政府はトランプ氏が二人の政敵、ジェームズ・B・コミー元FBI長官と、トランプ氏の側近の一人だったアンドリュー・マッケイブ氏について、IRS(合衆国内国歳入庁)をけしかけようとした疑いを捜査している。両人はトランプ大統領在任中に会計監査を受けている。

 一方で左派系の団体は、元大統領を刑事告発できる証拠固めに余念がない。ニューヨーク大学ロースクールのウェブサイト「公正と安全」は、169ページからなる「司法省の典型的な訴追メモ」を発行。その中で、フロリダ州パームビーチにあるトランプ邸宅「マー・ア・ラゴ」内で発見された機密文書に関連し、ガーランド司法長官がトランプ氏を刑事容疑で起訴するしかない論点を概略している。

 この「メモ」は元検察官や法律専門家によって執筆され、その中にはトランプ氏が2016年選挙に勝つためロシアと共謀した容疑を調査したロバート・ミューラー特別検察官を補佐した元FBIのアンドリュー・ワイスマン弁護士も含まれている。

 「司法省よ、時間切れだ!」、ワイスマン弁護士は先週ツイートした。「法の支配の原則からすれば、他の類似犯罪と同じように、トランプにも責任をとらせるべきだ。マー・ア・ラゴ邸の捜索から14週間以上が経ち、司法省の調査開始からも数ヶ月経った。時間の経過に相応しい行動が必要だ。」

 トランプ批判者としてMSNBC放送のコメンテーターに登場するワイスマン弁護士は、連邦検察官を長年務めたジャック・スミス氏を特別検察官に任じたガーランド司法長官の英断を評価し、前大統領の刑事告発に向けて迅速な意思決定が期待できるとした。

 ガーランド司法長官は、トランプ氏が大統領再選出馬を表明したことと、バイデン氏も再選を目指す示唆をしたことの二点を、外部から特別検察官を任命した理由に挙げた。スミス氏は、トランプ退任時に大統領官邸から機密資料を持ち出したことが、何らかの法律違反に当るかを精査する。スミス氏はまた、トランプ氏がバイデン勝利宣言を阻止しようとしたことが法律違反になるかどうかを吟味する。

 「新任のジャック・スミス特別検察官は、事実と法律に照合して事案をまとめる点では司法省のトップレベルで、非常に果断な検察官だ」、ガーランド長官が任命発表後に発したツイートで、ワイスマン氏はさらに語っている、「特別検察官任命が物事を遅らせると懸念する向きに言っておくが、事態はその逆だ。ジャック(特別検察官)は超高速で、浮ついたところがなく、さっさと要件に入りたがる男だ。そして今の司法省には意思決定部門で官僚主義が少ないから、捜査は早めに進むだろう。」

 スミス氏は2014年、司法省で公共部門の公正事案を担当していたころ、元バージニア州のロバート・マクドネル知事と妻モーリーンを汚職容疑で起訴し有罪判決に導いた。

 当時、連邦検察官はマクドネル氏が、栄養補助食品を売り込んでいた裕福な実業家から金品を受け取っていたと睨んでいた。しかし州の最高裁判所はその後、全員一致で、案件は汚職に当たらず、との意見で有罪判決を破棄した。マクドネル氏の弁護士で、米国最大級のジョーンズ・デイ法律事務所に属したノエル・フランシスコ氏は、検察が「初めから欠陥だらけだった」と決めつけた。

 ちなみにスミス特別検察官によるトランプ捜査の手始めはオランダにあるかもしれない。ガーランド長官によると、スミス氏はハーグで戦争犯罪を扱っているが、直ちに米国に戻るということだった。しかし、その後スミス氏は自転車事故を起こし、それから回復するまで海外に残るという。

 スミス氏はガーランド長官から任命を受けた後に次のような声明を出した。「私は託された捜査と、その結果として派生する起訴について独立の立場で執行し、司法省の最高の伝統に沿って実行したい」「私の監視下で、捜査のペースを遅らせたり弱めたりすることはない。独立的に判断し、事実と法律が指示する方向に、迅速かつ徹底した捜査を進捗させる。」

 一方のトランプ氏は11月18日の記者会見で、彼が「際限のない魔女狩り」と表現した捜査に参加するつもりはないと語った。そして、今では連邦議会の下院を制した共和党が、この捜査と闘うよう呼びかけた。

 トランプ氏は言う、司法省は「トランプ嫌いばかりの組織で、私をさらに追いつめようとして特別検察官まで任命した。恥を知れ!」

 トランプ氏は大統領在任中ずっと、2016年大統領選挙におけるトランプ・ロシア謀略説に苛まされた。このトランプ・ロシア陰謀説を批判してきたアンドリュ・マッカーシ氏は元司法省の検察官だが、前大統領は法的問題に巻き込まれすぎているため、ホワイトハウスに返り咲くのは難しいと警告した。   

 「頭がぐるぐる回っていたら、めまいに慣れよう」、マッカーシ氏は「ナショナル・レビュー」誌に書いた。「我々が見ているのは、判断力の弱い過去を持つ高齢男性が、可燃物に燃やされている光景だ。この人物(トランプ)の裁判トラブルへの性癖は、敵勢力がこの人物を身動きできなくしようとする意欲と表裏一体だ。」

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