下院共和党、バイデン政権によるアフガン監察官への妨害を追及へ

(2022年12月5日)

ワシントンを離れ、デラウェア州の自宅で週末を過ごす前に、報道陣と話すバイデン大統領。(AP写真/パトリック・セマンスキー)

By Ben Wolfgang – The Washington Times – Thursday, November 24, 2022

 バイデン政権とアフガニスタン独立監察官の間の水面下の戦いは、共和党が多数派の下院が1月に開幕すると、すぐにスポットライトを浴びることになる。共和党指導者は、国務省など連邦政府が組織的に「妨害」していたと主張し、阻止する構えだ。

 共和党下院議員らは、次の議会が開幕するとすぐに公聴会を開くと宣言している。その多くは、広く批判されてきた2021年8月のアフガンからの米軍撤収とその後の対応、なぜ高官が解雇されなかったかに焦点を当てることになる。

 共和党はまた、政権とアフガン再建特別監察総監(SIGAR、政府のアフガン監視機関)が激しく衝突していることに注目している。SIGARは2008年の設立以来、日常的に米国の資金の明らかな無駄、不正、不祥事を指摘してきた。

 SIGARの四半期報告書を議会に提出することは以前から、両党の政権の悩みの種だった。支持者によれば、過去16年間、アフガニスタンを再建し、軍隊を訓練し、不運な政府を支えようとする米国の資金がどのように使われたかを知る上で、SIGARは重要な役割を果たしてきたという。

 SIGARと複数の政権との間に緊張関係があったにもかかわらず、SIGARの調査官は、評価を下すために必要な情報に常にアクセスすることができていたようだ。

 だが、今は違う。バイデン政権は撤収以来、アフガンへの約11億ドルの米国からの支援の詳細な説明を提供することを拒否しているからだ。

 SIGARは議会への最新の四半期報告で、「発足以来初めて、いくつかの米政府機関が非協力的であるため、今期は米議会と米国民にこの政府支出の完全な説明ができない」と、述べている。報告は、国務省と米国際開発局(USAID)が監視団を排除していると指摘している。

 この論争は、アフガン「復興」の構成をめぐる解釈の違いから生じているようだ。つまり、SIGARの法的権限がどこで始まり、どこで終わるのかということだ。バイデン政権は、アフガンでの20年間の米軍の任務終了に伴い、SIGARもその仕事を終了すべきだと主張している。

 国務省の広報担当者は、ワシントン・タイムズ紙に「私たちはSIGARとしばらくの間やりとりを続けてきたが、アフガンの復興を構成するものについての彼らの評価には基本的に同意できない」と述べた。

 「私たちの立場は、特定の資金を除いて、SIGARの法的任務は『アフガンの再建のため』に利用できる資金に限定されるということだ。2021年8月のタリバンによる占拠以来、米国はアフガンの復興を目的とした支援を中止し、現在は同国の当面の人道的状況を緩和することに重点を置いている」

 USAIDの広報担当者も同様の主張を繰り返し、アフガン「再建」への米国の資金の拠出は終了したとの見方を示した。

 USAIDの報道官は「それにもかかわらず、国務省とUSAIDは、SIGARに数十の質問に対する回答書と、アフガンでの米政府の再建努力の一部である数十のプログラムについて説明した数千ページの回答文書、分析、スプレッドシートを提供した。私たちは、SIGARの法定任務の範囲内で、頻繁に、定期的に協力している」と述べている。

 SIGARとその監視対象である省庁との間の悪縁は、今に始まったことではない。今週、元国防総省会計監査官代理のエレイン・マッカスカー氏(現在はアメリカン・エンタープライズ研究所の上級研究員)は、辛辣なコメントでSIGARを「費用のかかる無用の長物」と呼び、直ちに閉鎖すべきと述べた。

 マッカスカー氏は、SIGARが最新の四半期報告書で、USAID、財務省、国務省がSIGARの調査官との協力を大幅に制限したり、完全に拒否したりしているという不満を表明していることに触れ、「なぜそうなるのだろう。恐らく、米国はもはやアフガンに駐在していないため、信頼できる詳細な情報を収集することができないのだろう。SIGARは、米国がアフガンから撤退する以前から、あまり結果を出すことができず、何年も情報提供の要請で職員の時間を浪費してきたのかもしれない」と指摘している。

 「(SIGARは)納税者の資金の使用と説明責任を改善するよりも、見出しになることを目的としたのではないかと疑われている報告書を、検察官のような口調とアプローチで発表することで、これまで受けてきた恩恵をうやむやにしてきた」

 SIGARのジョン・ソプコ監察総監は、アフガン紛争の実態や米国の納税者が負担するコストに関して、国務省や国防省が透明性を欠くと指摘してきたことに長い間反論してきた。ソプコ氏は2019年に、米国の文民と軍の指導者が戦争について「議会に対してうそをつくよう働き掛けている」と述べている。

 彼は下院外交委員会で「成功を示し、失敗を無視するよう働き掛けている。あまりにも多くの失敗があるときは、それを隠すか、報告しない」と述べた。

 SIGARは、アフガンでの米国の任務について、報告書や分析を発表し続けている。今月の報告書は、米国が支援するアフガン政府の長年の実績と、その政権を維持するための米国とその同盟国の努力を厳しく批判している。

 報告書は、「米国は、安定した、民主的な、国民を代表する、ジェンダーに配慮した、説明責任のあるアフガンの統治機構を構築しようとした。しかし、それは失敗した」と結論づけている。

監視の戦い

 アフガンに再びスポットライトを当てることは、共和党に政治的な利益をもたらすかもしれない。しかし、2020年初めにタリバンと最初の和平協定に署名し、米国を撤収へと向かわせたのはバイデン大統領ではなく、トランプ大統領だったことを忘れてはいけない。

 バイデン氏個人の支持率は、米国が支援するアフガン政府が崩壊し、米国とその同盟国が性急で統制の取れない撤収を行った2021年の夏に急落した。支持率は完全には回復していない。

 ジョージ・ワシントン大学政治管理大学院の政治管理プログラムディレクター、トッド・ベルト氏は「共和党がこの調査で得ようとする政治的ポイントは、共和党支持層に関するものと、一部の独立系有権者の目に再び触れるようにすることだろう」と述べた。

 「トランプ氏の計画でもあったが、彼らはバイデン氏の撤収管理を批判し、より一般的なバイデン氏の判断力や最高司令官としての資質を問うために利用しようとするだろう」

 共和党は何カ月もの間、政権とSIGARとの間の論争に注目してきたが、議会を支配していなかったため、これに対処する力は限られていた。

 しかし、1月にはそれが変わりそうだ。主要委員会の共和党議員は、政権にさらなる情報を求める準備を進めていることを示唆し、必要であれば議会の召喚権を行使する可能性も示唆した。

 下院外交委員会の共和党議員はワシントン・タイムズに、SIGARとの協力関係の欠如を「重大な問題」と見なし、バイデン政権はホワイトハウスに「損害を与えるような情報が明らかになる」ことを恐れ、SIGARの監視を続けているようだと語った。

 その情報は、11億ドルの米国の人道支援に関わる不祥事、不正、浪費を明らかにするかもしれないし、最悪のシナリオでは、一部の資金が間接的にタリバンやその同盟国の手に渡っていることを示すかもしれないと彼らは言う。

 国務省とUSAIDの代表者は、議会の委員会や両機関の監察官など、その資金の行方を追跡している他の監督機関に協力していると主張している。

 下院監視改革委員会の共和党議員も、政権とSIGARの戦いに注目している。11月7日のソプコ氏への書簡で、委員会の有力共和党議員は、SIGARと政権とのコミュニケーションに関する文書を要求した。

 ケンタッキー州のジェームズ・コマー議員とウィスコンシン州のグレン・グロスマン議員は、この書簡の中で「SIGARは、アフガンでの米国の活動に関する政府全体の問題を調査する上で、極めて重要な存在だ」と指摘している。彼らはそれぞれ、監視委員会と国家安全保障小委員会の共和党筆頭委員だ。

 「歴史的に、(国務省と)USAIDはSIGARの使命を尊重してきた。米国がアフガンから撤収した後、彼らがSIGARに協力していないことは憂慮すべきことだ。SIGARの監視がなければ、米国民は、納税者のお金がどのように使われ、撤収が私たちの国家安全保障にどのような影響を与えたかについての答えは得られない」

 この論争は、もっと大きな問題の一端に過ぎない。共和党は、米軍撤収計画や、撤収に伴うアフガン政府の存続期間について、軍事・情報面での評価に大失敗した理由についても、政権に回答を求めるという。

 下院外交委員長に就任するマイケル・マコール議員(共和、テキサス州)は、「アフガンからの無秩序で致命的な撤収について情報を得ようとするたびに、バイデン政権から広範な妨害パターンがあった。次の議会で私たちの委員会は、憲法第1条の監督権限が無視されるのを、もはや傍観するつもりはない」と述べた。

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