海外旅行を解禁した中国への対応が分かれるアジア諸国
By Andrew Salmon – The Washington Times – Tuesday, January 3, 2023
【ソウル】中国政府が1日に厳格な「ゼロコロナ」隔離要件を解除したことで、中国の膨大な国民がようやく旅行できるようになった。警戒する東アジア各国は、押さえ付けられていた中国人観光需要の突然の到来に対処する方法を戦略的に検討している。
中国共産党政権は厳格なロックダウン政策を放棄したことで、新型コロナウイルス感染者が急増しているが、新規感染者数については、いいかげんなデータしか公表していない。このため、地域の各国政府は、もうかる中国人観光客と切望される人民元を歓迎するかどうか、またどのように歓迎するかで分かれている。
中国の周辺では、日本、韓国、台湾が親米政権で、中国人観光客が(コロナウイルスを)持ち込む可能性を警戒し、中国本土からの旅行者に特定の措置を講じている。
一方、インドネシア、マレーシア、フィリピン、タイ、ベトナムの東南アジア諸国は、中国人観光客に対する特別措置は適用していない。
北東アジアの民主主義国家はいずれも製造業が強く、陽光あふれる東南アジア諸国と比べて観光への依存度が低い。だが、日本と韓国は近年、インバウンド(外国人旅行者)を増やす一方、ベトナムはハイテク製造業で台頭してきた。
中国の習近平体制は3年間にわたってゼロコロナ政策を取ってきたが、先月、高まる社会不安に直面して態度を変え、大規模ロックダウンと集団検査を放棄した。現地からの報道によると、この転換がコロナウイルスの危険な拡散をもたらし、病院の集中治療室や火葬場が満杯になる事態を招いた。これを受け、中国政府はコロナ感染者数と死亡率の最新データの公開を制限・停止している。
この透明性の欠如は、国連世界保健機関(WHO)の高官が「非常に憂慮している」と述べるなど、珍しく批判を浴びている。また、中国はコロナ感染率の低下に従って段階的な再開に動いた地域の近隣諸国に後れを取っているとの指摘もあった。
国際ワクチン研究所のジェローム・キム事務局長は、ワシントン・タイムズ紙に「世界はコロナで多くのことを経験し、多くの教訓を得た」と指摘した。「ゼロコロナで成功した国は、オーストラリアや韓国のように、成功する開放のプランを立てていた」
各国政府にとって、この状況は世界で最も人口の多い国からコロナが大量に輸出される危険性をはらんでいる。中国政府は先週、旅行者の検疫制限を撤廃し、パスポートとビザの再発行を開始すると発表した。中国からの報道では、オンラインでの旅行予約が急増しており、せきを切ったようにやって来る可能性がある。
公衆衛生上の課題が何であれ、どの政府も経済を無視することはできない。中国は地球上で最も裕福なアウトバウンド観光客の源泉だ。
国連世界観光機関によると、コロナが旅行を壊滅させる前年の2019年、中国人観光客は世界中で2546億ドルを消費した。
中国人観光客の消費力は他の国々を大きく上回っている。次に消費額が大きかったのは米国人の1523億㌦、次いでドイツ人の922億㌦だった。
中国人の流入に備え、観光や入国管理システムを準備する時間はほとんどない。元日は過ぎたが、中国とこの地域の最大の祝日が間近に迫っている。
中国の春節(旧正月)は今年、1月21日から8日間にわたる。2019年の春節では、約4億1500万人の中国人が国内を旅行し、630万人が海外を旅行した。一部の旅行アナリストは、これを毎年恒例の世界最大の大移動だと言っている。