韓国軍の戦闘能力は北より低い 元中将が警告
By Andrew Salmon – The Washington Times – Monday, March 13, 2023
【ソウル(韓国)】韓国と米国が6年ぶりに春の本格的な軍事演習を開始、北朝鮮がそれに反発して軍事的威嚇を強化しており、地域の緊張が高まりそうだ。
韓国軍の元司令官は、実際に戦争が起こっても、ソウル軍は十分な対応ができないと懸念を表明した。
退役中将のチョン・インボム氏はインタビューで、分断され、核兵器が存在する朝鮮半島で、韓国軍はその目的を果たせなくなっており、不倶戴天の敵、北朝鮮に比べ、人員、訓練、装備、民間の備えが不十分だと指摘した。
韓国は、北朝鮮より圧倒的に豊かで、人口も多い。にもかかわらず、技術的に劣る北朝鮮と比較すると、いくつかの面で劣っているという。
チョン氏は、少佐として合同参謀本部入りし、1996年には大隊長として、北の侵入に対応した。2016年に退役するまで、将官として韓国のエリート部隊、特殊戦軍団を率いていた。
チョン氏は、防衛力強化の必要性と米国との安全保障同盟の重要性を訴えてきたことで全国的によく知られている。
西側諸国の軍隊の多くが、ウクライナでの戦争で疲弊し、持続可能性の問題に直面している今、チョン氏はワシントン・タイムズとのインタビューで、ソウルは「近代戦に目覚める必要がある」と語った。
北朝鮮の人員の優位性
北朝鮮は核武装するとともに、強力なミサイルや火砲をも保有していることが知られており、チョン氏は、韓国が通常兵器でますます不利になっていると主張した。
北朝鮮の人口は韓国の約5100万人の半分だが、現役の兵力は韓国の50万人の倍以上の120万人に上る。
チョン氏は、韓国軍には、特殊部隊、海兵隊、歩兵のエリート部隊を合わせると、5万人の優秀な兵士がいるとみている。少なくはないが、北朝鮮の20万人規模の兵力にははるかに及ばない。
これは北朝鮮が徴兵制を取っているためだが、徴兵の強みは他にもある。北朝鮮の兵士は13年間軍務に就くが、韓国の兵士はわずか18カ月。北朝鮮の平均的な兵士は、栄養状態が悪いため、韓国の兵士よりも体は小さいかもしれないが、強靭で、補給が容易である可能性がある。
2017年、脱北者が腸内細菌に侵されていることが判明し、世界は恐怖に陥ったが、ベトナムでは数十年前に、長年のジャングル生活で健康を損なった兵士の回復力と戦闘力が実証されている。
チョン氏は、「一握りの米を持った北朝鮮人を見ると、飢えに苦しんでいるように見える。しかし、彼らはそれだけあれば生きていけるのかもしれない」と述べた。
部隊編成も北朝鮮に有利だという。
北朝鮮軍の典型的な12人編成の分隊は、ロケット砲を2基装備しているのに対し、わずか8人の韓国軍の分隊は、ドイツ製のパンツァーファウスト対戦車用無反動砲を1基装備しているだけだ。韓国軍の分隊には軽装備の支援兵器があるが、北朝鮮の分隊には中型機関銃と狙撃銃がある。
韓国は世界的な技術の中心地であり、おそらく世界で最もインターネットが普及している国だが、戦場の通信にも問題がある。チョン氏は「韓国は世界一の携帯電話を作っているのに、どうして優れた小型無線機を作れないのだろう。北朝鮮は良い無線機を持っているようだ。すごいことだ」と述べた。
航空優勢対非対称の難しさ
韓国軍は空では優勢だ。韓国空軍の戦闘機F35、F15は、北朝鮮の老朽化した空軍機を圧倒しており、北朝鮮はさらに訓練用の燃料の不足という二重のハンディを背負っている。また、朝鮮半島のような山の多い地形で重要となるヘリコプターによる輸送能力でも韓国は優位に立つ。
北朝鮮の将軍らはこの不均衡を認識しており、リスクの高い低空飛行を取り入れ、不均衡を補おうとしている。チョン氏によれば、北朝鮮のほぼすべての装甲車には、地対空ミサイル発射装置が搭載されているという。これらの兵器は、非対称な攻撃にも利用できる。
チョン氏は「すべての北朝鮮の(特殊)部隊はMANPAD(携帯型地対空ミサイル)を持っている」と述べた。北朝鮮の特殊部隊の任務の一つは、韓国軍や米軍の空軍基地の近くに潜入することであり、「空軍基地の近くを飛ぶものはすべて危険にさらされる」ことを意味する。
携帯型ミサイルは、機甲戦闘でも脅威となる。チョン氏は、違法に輸出された北朝鮮の対戦車ミサイル(ロシアの「コルネット」を改良したもので、米軍の対戦車砲「ジャベリン」とほぼ同等)が、イエメンでサウジアラビアのM1エイブラムス戦車を破壊したことを明らかにした。
そして、貧者の空軍、軍用ドローンがある。昨年12月、北朝鮮の無人機5機が韓国の首都ソウル中心部の領空に侵入したが、韓国はこれを撃墜できず、屈辱を味わった。チョン氏は、無人機の侵入によって、多くの韓国人が理解していなかった脆弱性が露呈したと語った。
人員、監視、即応性
米国と韓国は、金正恩政権からの度重なる警告にもかかわらず、図上演習と地上軍の実働訓練を含む10日間の大規模な軍事訓練を13日に開始する。北朝鮮との交渉で成果を出せない中、トランプ前政権と韓国の左派、文在寅前政権が2018年にこの訓練を停止していた。
その後、新型コロナウイルスによって軍事訓練はさらに縮小を余儀なくされ、北朝鮮が活発な兵器実験を再開したため、国防総省で即応態勢に対する懸念が高まった。また、文政権が軍に対する人権監視を強化したことで、さらに複雑な事態を招いた。
チョン氏は「これら三つのことが韓国軍の即応態勢に影響を与えた」と言う。
軍事・外交政策にとどまらず、韓国の人口動態の悪化は、兵士の採用目標を根こそぎ奪っている。チョン氏は「過去数年間で、軍隊は60万人から50万人に減少。そして減少分の大部分は地上軍からだった。しかし、それ以上に懸念しているのは、戦闘支援部隊の数が減っていることだ」と述べた。
ソウルの通常の歩兵大隊の兵力は、現代の軍隊の標準である600人ではなく約450人だ。評論家らは、現代の快適な中流階級で育った韓国人の世代には、1950年~1953年の紛争で敬意を払われ、恐れられた勇敢な韓国人兵士のような気概が欠けていると主張する。
チョン氏によると、各大隊に「家族を巻き込み、何としても脱出しようとする」兵士が10人から20人の兵士がおり、「指揮官を悩ませている」という。
民主化以前の韓国では、元将軍が2度の独裁政権を築いたこともあり、軍の指導部に対する国民の不信感がくすぶっている。文政権の下、徴集兵にスマートフォンが許可され、軍での虐待を非難するブログが急増した。
チョン氏によると、現在、多くの司令官の最初の仕事は、自分の部隊の徴集兵とその家族が、粗末な配給や過酷な訓練に不満を持っていないかどうかを確認するために、これらのブログをチェックすることだという。
訓練の悩み
チョン氏は、虐待を受けた新兵が射撃場で暴れた事件の後、韓国軍が多くの小銃を射撃位置に鎖でつないだため、武器の取り扱いスキルの向上が阻害されていると指摘する。応急処置の訓練も同様に融通が利かない。
装備品についても、チュン氏は辛辣だ。制服は安物で、着火すると溶けて皮膚にひどいやけどを負わせる。現代の戦闘で欠かせない暗視ゴーグルは不足している。
韓国は3000両もの戦車を保有しているが、自慢の国産戦車K2は300両だけ。残りは古く、旧式のモデルだという。
これらすべてが、韓国軍の能力向上を模索する市民団体と協力しているチョン氏の懸念材料となっている。
チョン氏はワシントン・タイムズに「韓国は米国という同盟国を持っている。しかし、それ以外の点では、かなり不利な状況にあると思う。ソウルは北朝鮮に近いし、韓国は真剣に攻撃から自国を守ろうとしていない」と述べた。
北朝鮮からの挑発は、今後も続くとみられている。北朝鮮国営の朝鮮中央通信(KCNA)は、金正恩氏が9日、韓国の飛行場への攻撃を想定した実弾砲撃訓練を自ら視察し、敵の「必死の戦争準備の動き」に対応できるよう軍に呼びかけたと伝えた。
AP通信によると、北朝鮮の朝鮮労働党機関紙・労働新聞は10日、場所が特定されていない海岸の森林地帯に並べられた発射台から少なくとも6発のロケット弾が発射されているように見える写真を掲載した。
チョン氏は、もし北朝鮮が、中国の共産主義政権が開発したようなデジタル/バイオメトリック監視網を導入すれば、金氏はジョージ・オーウェルが想像もしなかったような高度な統制社会を手に入れることになるだろと述べた。
「金氏は、顔を見たり、血圧をチェックしたりしてコントロールできる2000万台のロボットを手に入れることになる。そうなれば、どういうことが起きるだろうか、想像もできない」