識別圏侵入で台湾に圧力 中国軍機は昨年79%増、月144機-米CSIS報告

(2023年3月31日)

2023年3月12日(日)、北京の人民大会堂で行われる中国全国人民代表大会(NPC)のセッションの前にリハーサルする軍楽隊のメンバー。(AP Photo/Andy Wong)

By Bill Gertz – The Washington Times – Wednesday, March 29, 2023

 米シンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)の報告書によると、中国軍機が台湾の防空識別圏(ADIZ)への侵入を増加させ、台湾への軍事的圧力を強化している。

 報告書は、台湾国防部が提供したデータを分析したもので、ADIZ侵入は昨年8月にペロシ米下院議長(当時)が台湾を訪問した後にピークに達した。

 報告書を作成したのは、ワシントンを拠点に中国と台湾の安全保障問題を研究する国防アナリスト、ベン・ルイス氏。同氏は、中国の大規模なADIZ侵入が始まったのは2020年9月だと指摘した。

 報告書は「それ以来、中国は台湾に対しADIZ侵入によって(明確に軍事行動と判断しにくい)『グレーゾーン』圧力を頻繁にかけるようになり、ほぼ毎日、飛行が行われている」と指摘している。

 報告書によると、22年にADIZに侵入した中国軍機は計1737機で、前年比79%増。月平均では、21年の81機から22年は144機に増加した。

 報告書は、ADIZ侵入を1~5機の「ルーチン(通常)飛行」、6~9機の「アサーティブ(威嚇的)侵入」、ペロシ氏訪問後のような10機以上が関与する「リアクショナリー(反応的)侵入」の三つのタイプに分類。「リアクショナリー侵入の多くは、中国が『一つの中国』の原則に反すると考える台湾、米国、その他の域内の国々の地政学的な動きと結び付いている」という。

 中国軍機は、幅150㌔前後の台湾海峡の中間線を越えることがあり、通常、戦闘機、爆撃機、偵察機、電子戦機が使用される。軍用機によるこのような飛行により緊張が高まり、台湾は頻繁に迎撃機を派遣して侵入機を追跡させている。

 報告書は、ADIZ侵入が台湾周辺の中国人民解放軍(PLA)の作戦について貴重な情報をもたらしていると指摘。中国の習近平国家主席は、台湾を大陸の支配下に吸収することが政権の核心的利益と述べている。

 報告書は、侵入に関与したPLA航空部隊についてはほとんど知られていないと結論付けている。その上で、「最も重要なのは、これらの活動がどこまで続くのか、どこまで大規模になるのか、どこまで広がるのかを知るすべがないことだ。さらに、中国が軍事的圧力を強めれば強めるほど、事故や誤算が発生する可能性が高くなる」と警告した。

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