韓国で北朝鮮問題への新たなアプローチ求める声

(2023年4月26日)

2023年4月21日(金)、ワシントンで、ホワイトハウス構内のアイゼンハワー行政府庁舎にアメリカ国旗と韓国国旗が掲げられている。韓国のユン・ソクヨル大統領とキム・キョンヒ夫人は、4月26日にホワイトハウスでの国賓訪問に出席する予定だ。(AP Photo/Patrick Semansky)

By Andrew Salmon – The Washington Times – Sunday, April 23, 2023

 【ソウル】一触即発の朝鮮半島では、核兵器使用のハードルが下がり、地域的な軍拡競争が進行し、外交が機能せず、情報交換もない中、多くの課題に直面している。

 ロシアとウクライナの戦争は、北朝鮮に外交的・経済的孤立を脱する新たな機会を与え、米韓同盟70周年を祝うとみられるワシントンへの公式訪問を控えた韓国の尹錫悦大統領にさらなるプレッシャーを与えている。

 今、核問題に関して韓国のリベラル派のある有力者は、保守派の尹氏とバイデン米大統領に対し、トランプ前米大統領に倣って、情緒不安定な北朝鮮の指導者、金正恩総書記との「想像力を働かせた、現実的な」コミュニケーションを再開するよう呼び掛けている。

 「核不拡散アジア太平洋ネットワーク」のムン・チョンイン副会長は「今は史上最悪の時期だ。米朝関係はどん底に落ち、中国は半島問題から遠ざかり、傍観者のような存在になり、南北関係も非常に悪い」と指摘した。

 ムン氏は、北朝鮮の指導者と首脳会談を行った3人の韓国大統領のすべてに助言し、韓国政府が北朝鮮に派遣したすべての大統領代表団に参加しており、現在の危機的状況を深く理解している。

 「北朝鮮は現実的な脅威であり、あらゆる軍事的挑発に備えなければならないが、同時に対話と交渉も考えなければならない。しかし、われわれにあるのは前者だけであり、後者はすべてなくなっている」

 ムン氏はリベラル派の代表的存在だが、トランプ氏が取った異例の個人的アプローチを称賛。「トランプ氏は、北朝鮮で意思決定を行うのはただ一人、金正恩氏だけであることを知っていた」と述べた。

 2018年にシンガポールで行われた金・トランプ首脳会談は、2019年にベトナムのハノイで行われた2回目の首脳会談への土台を築いた。そこで金氏は、制裁の一部緩和の見返りとして、核開発の重要施設である寧辺(ヨンビョン)を差し出した。

 しかし、トランプ氏は、ジョン・ボルトン大統領補佐官(国家安全保障担当)やマイク・ポンペオ国務長官ら、タカ派の側近に強硬な「オール・オア・ナッシング」式の非核化合意を求められ、ハノイ会談の席を突然蹴った。

 ムン氏は「トランプ氏は何も持たずに帰っていった。後に(韓国の文在寅大統領に)、ポンペオとボルトンが自分に強く要求したと告白した」と述べた。

 バイデン氏もユン氏も、トランプ氏が取った直接的なアプローチを復活させたわけではなく、国際的な緊張と現地の要因によって、問題はますます難しくなっているとムン氏は指摘する。

 ウクライナや台湾で緊張が高まる中、米国と中国は朝鮮半島危機の調停者としての役割を縮小している。米政府が、北朝鮮はロシアに武器を供給していると非難する中、ムン氏は、金氏にチャンスが到来していると語った。

 ムン氏は、「(こうした力関係によって)北朝鮮の生存と繁栄のための行動の余地は。今より広がる。新たに出現した冷戦構造やブロック外交の受益者となる可能性がある」と指摘した。

 韓国は、北朝鮮が放つ数限りない非難に反論してきた。ムン氏は、保守的な尹政権も、これまでの対北関与政策を「融和政策」と呼ぶことで、自らを窮地に追い込んでいると主張する。

 「尹政権は、文政権が(北朝鮮に対して)従順な態度を取っていたと言っている。現在直面しているジレンマは、彼らがそのような政策のどれも採用できていないこと、つまり現状を打開できないことだ」

 一方、首脳陣、情報機関、軍などによる、非武装地帯(DMZ)をまたぐ通信は沈黙を保ったままだ。ムン氏によると、北朝鮮は「それらの通信に一切応答していない」という。

核ドクトリン

 ムン氏は、北朝鮮がどのような場合に核兵器を使用するかに関するドクトリンを変更すると発表して以来、緊張を緩和する必要性がより一層高まったと述べた。

 在韓米軍のポール・ラカマラ司令官は20日、米議会の公聴会で、「新しい方針の下、金政権は非核保有国が『核保有国と共謀』していると判断すれば、核兵器を使用するだろう」と語った。

 北朝鮮の戦術的な脅威は、本格的な兵器に裏打ちされている。北朝鮮は今年、情勢を一変させるような兵器を次々と発表した。

 固体燃料弾道ミサイルは、現在の日本や韓国の防衛システムを破ることができる。日韓両国とも北朝鮮の発射準備の兆候を察知すれば、自国の兵器で先制攻撃を仕掛けるとしているが、固体燃料の採用により発射までの時間は大幅に短縮されている。

 もう一つの新兵器は、原子爆弾の脅威を雲の上から深海にまで拡大する核魚雷「ヘイル」だ。

 韓国は北朝鮮との国境付近に人口が密集しているため、防衛がさらに複雑になっている。

 ムン氏は「韓国は非常に大きな脆弱性を持っている。2000万人以上の人々が、火砲や短距離ミサイルの射程圏内にある(首都圏内の)地域に住んでいる。北朝鮮の攻撃兵器の数々を見れば分かる通り、防御のしようがない」と述べた。

 さまざまな兵器を保有し、その上、指導者が無力化された場合にどのタイミングでミサイルを発射するかという新しいプロトコルも備えていることから、北朝鮮が先制攻撃を受けた場合に反撃することはまず間違いない。

 ムン氏は「金正恩と幹部らは、イラクのサダム・フセイン、リビアのムアマー・ガダフィの運命から学んでいる。戦争になれば、体制と指導者の終焉となるため、彼らは最後の最後まで戦うだろう」と述べた

 ムン氏は、1953年の休戦以来、半島での大きな戦争を防いできた拡大抑止と米国の同盟国防衛の誓約は、もはや十分ではないと指摘した。

 「米国との同盟は安全保障を提供するが、平和は提供しない。米国を信用していないわけではないが、米国には能力の限界があり、これはその時が実際に来たときに本当の問題が発生する可能性があるということだ」

 その答えは、70年の歴史を持つ二国間同盟に今後、新たなパラダイムを取り入れることにある。

 ムン氏は「私は米国との同盟を望んでいるが、それは平和のためであり、現状維持のためではない」と述べた。

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