米政権の新たな国境政策でも利益を増やす密入国カルテル
By Stephen Dinan – The Washington Times – Sunday, July 30, 2023
リオグランデ川をいかだで渡ったミゲル・アンヘル・サラザール・エストラーダさんは、グアテマラからの密入国のために家族が1万7000㌦を支払ったと、国境警備隊員に語った。
アリゾナ州に密入国した際に拘束されたメキシコ人のフアン・マヌエル・ララ・アルバレスさんは、その移動に20万ペソ(1万2000㌦弱)を支払ったという。
密入国業者にスポーツ用多目的車(SUV)の座席下に作られたスペースに押し込められたというヤンシュア・スーさんは、中国からロサンゼルスに渡るのに30万元(約4万2000㌦)を払ったと話した。
バイデン米政権は、ここ数カ月間に密入国を試みる不法移民の数が減ったことを称賛している。アレハンドロ・マヨルカス国土安全保障長官は、その減少を密入国市場を支配するカルテルへの打撃だと位置付けている。
しかし、ワシントン・タイムズ紙の密入国事例のデータベースによると、密入国を試みる人々は、より多額の代金を支払っている。データベースは支払いをほぼリアルタイムで追跡しており、マヨルカス氏の期待ほどカルテルが大きな打撃を受けていないことを示している。
テキサス州ラレード地区に密入国したメキシコ人は平均9500㌦を支払っており、新型コロナウイルス・パンデミック対策で不法移民を即時送還する措置「タイトル42」が5月に終了する前の今年初めの約7400㌦より上昇している。
アリゾナ州に密入国するメキシコ人は平均約1万㌦を払っており、約9300㌦から上昇した。
中米諸国の人々が支払う金額はもっと多い。サラザール・エストラーダさんが支払った1万7000㌦は高い方だが、極端ではない。ワシントン・タイムズ紙が追跡した最近の幾つかの事例では、グアテマラ人が米国に密入国するために15万ケツァル(1万9100㌦)以上を支払っている。
中国人移民の事例が示すように、さらに遠くから来た人ほど、より多く払わされている可能性がある。
このすべてがカルテルを潤している、と指摘するのは、元国境警備隊長のロナルド・ヴィティエロ氏だ。密入国組織は国境を越えるほぼすべての移民から分け前を得ているという。
「彼らにとって現政権は大もうけだ。彼らの資金源が完全に変わってしまった」と、ヴィティエロ氏は語った。
実際、専門家によれば、カルテルは現在、麻薬密売よりも密入国でより多くの利益を得ている。
米連邦議会では今月、カルテルのパワーが大きな議題となり、一連の公聴会でカルテルの勢力拡大やバイデン政権による弱体化の取り組みが強調された。
マヨルカス氏は不法移民をカルテルの手に落ちないようにする方法として新たなアメとムチの国境政策をアピールした。これは不法移民を密入国ではなく、到着の予定を立てて正式な通関手続き地から入るよう誘導するものだ。
同氏は、国境警備隊による拘束数が最近減少しているのは、成功の証拠だと主張した。
「われわれはカルテルを容赦なく攻撃している」。マヨルカス氏は下院司法委員会でこう語った。
しかし、カルテルがトランプ前政権時代よりも多くの収益を得ているかどうかは推測できないという。
マヨルカス氏は「そのデータを持っていない」と述べた。