麻生氏、台湾防衛で「戦う覚悟」 中国は反発
By Andrew Salmon – The Washington Times – Friday, August 11, 2023
【ソウル】中国が台湾に対して軍事的な動きを見せた場合、日本はどう対応するかという、恐らく今日の日本の外交政策でも特に差し迫った問題に関して、発言と現実とが大きくかけ離れている。
日本の保守派の国会議員らは、台湾防衛に積極的に取り組むことを要求しているが、政府高官はあまり積極的でない。
政治的な議論が盛んに行われる一方で、日本は南西諸島の防衛を強化している。中国軍の艦隊が台湾を封鎖しようとすれば、南西諸島に侵入することは避けられない。
しかし、一部アナリストらは、これらの防衛力強化は、中国海軍の台湾北東部での作戦を抑止するどころか、中国が支配下に置くと宣言している台湾をめぐる将来の衝突に備え、中国の部隊に電子・サイバー戦能力を強化させる要因になっている可能性が高いと警告している。
緊迫した事態の中、日本がどのような考えを持ち、覚悟があるのかが特に注目の的となっている。麻生太郎元首相(自民党副総裁)は8日、台湾の台北で開かれた会議で、中国の軍事的動きを抑止するためには日米台が強く結束する必要があると発言し、波紋を呼んだ。
「今ほど、日本、台湾、アメリカをはじめとした有志の国に、強い抑止力を機能させる覚悟が求められている。こんな時代はないのではないか。『戦う覚悟』だ」
さらに麻生氏は、「台湾海峡の安定のために、それ(防衛力)を使うという明確な意思を相手に伝える。それが『抑止力』になる。特に台湾とは密接な隣人関係にある日本が率先して、中国を含めた国際社会に向けて発信し続けることは極めて重要だ」と述べた。
中国外務省は即座に麻生氏の発言を「無責任」と非難し、「台湾についてこのような不当な発言をする立場や自信をこの日本の政治家に持たせたのは何なのか」と述べた。
翌日、日本の1人の国会議員も麻生氏の発言を支持し、政府の公式見解を正確に反映したものだと主張した。
麻生氏の台湾訪問に同行した自民党の鈴木馨祐政調副会長は日本のテレビ番組で、「自民副総裁の立場での講演だ。当然、政府内部を含め、調整をした結果だ。日本政府としてのラインというのは明確なんだと思う」と述べた。
自民党は幅広い支持を受ける保守派政党であり、防衛政策をめぐる内部対立を乗り越えてきた麻生氏(82)は、党内の右派を支持している。歯に衣を着せない発言は議論を呼び、2021年から台湾防衛に関して主張を強めている。
議員らが自由に発言する一方で、岸田文雄首相は防衛費の大幅な増額を推し進めながらも、より慎重に言葉を選んでいる。
政府報道官の松野博一官房長官は9日、中国が台湾を攻撃した場合、日本は台湾に部隊を派遣するのかと質問され、「仮定の話」には答えられないとして回答を避けた。
防衛省高官は、戦闘への参加の可能性を排除していたようだ。
井野俊郎防衛副大臣は先月、英紙サンデー・テレグラフに「もし世界中の人々が、ウクライナを支援したのと同じように台湾を支援する意思を持てば、日本が何らかの支援を提供することは大いにあり得る。それが防衛装備品支援になるのか、後方支援になるのかは、現時点では分からない」と述べている。
しかし、東京での政治的な駆け引きから遠く離れた琉球諸島南部で、日本は防衛態勢を強化している。
琉球要塞
何十年も前から琉球諸島最大の島である沖縄に駐留する米軍は、軍事面でこの地域の中心的な存在だった。だが今では、日本と台湾の間の太平洋の戦略的に重要な地域にある琉球諸島の小さな島々で陸上自衛隊の基地が増加している。
南方での増強は、ロシア軍の脅威が縮小する一方で、中国の海軍力がこの地域で急拡大していることを受けたものだ。
シンクタンク、パシフィック・フォーラムの安全保障専門家、アレックス・ニール氏は、「戦略的焦点は、北の北海道に大規模な機甲旅団を置くことから、日本列島の南西部へとシフトし、冷戦時代のスタンスはあまり重視されなくなっている」と指摘した。
人民解放軍海軍(PLAN)が増強されているため、中国の指揮官らは台湾侵攻で、リスクの高い海峡からの攻撃よりも、はるかに野心的な作戦を構想することができるようになっている。PLANは現在、台湾を挟撃し、包囲、封鎖し、島の西側で米軍部隊と対峙できるだけの艦船とリソースを備えている可能性がある。
中国海軍による封鎖の北の挟撃線は、琉球を通過、または琉球近くを通り、戦略的に重要な宮古海峡を通過する可能性が高い。ニール氏は、宮古島に新たに建設された日本の基地では、PLANの侵入を阻止できないこともありうるとの見方を示した。
「人民解放軍(PLA)が目指すのは常に琉球諸島での米軍基地を無力化することだと思う。そのため、(日本の新基地が)ゲームチェンジャーになるとは思わない」
ウクライナ侵攻で、陸地に設置されたドローンやミサイルが軍艦にとっていかに致命的かがはっきりした。ロシアの黒海艦隊は、ウクライナの黒海沿岸で活動することができない。しかしニール氏は、中国には電子戦やサイバー戦などで、琉球防衛に対抗するという方法もあると述べた。
ニール氏は、自民党のタカ派への転換が日本国民の大多数に受け入れられるかどうかを疑問視している。