再選見据え、政権移行の準備進めるトランプ陣営

(2023年9月19日)

2023年9月9日土曜日、アイオワ州エイムズで行われたNCAAカレッジフットボール、アイオワ州立大学対アイオワ州の試合前に、アイオワ州立大学の農業友愛会アルファ・ガンマ・ローを訪れたドナルド・トランプ前大統領。(AP Photo/Charlie Neibergall)

By Seth McLaughlin – The Washington Times – Friday, September 15, 2023

 ドナルド・トランプ氏の2024年大統領選への選挙戦は、よく整えられ、急派しのぎで、的外れの作戦を展開してきたこれまでの選挙戦とは大違いだ。

 トランプ氏の選挙戦の体制がより専門的となり、盟友らが大統領の交代に向けた準備に奔走しているため、指名を獲得し、ホワイトハウスに戻ったとしても、混乱を招くことなく政権交代ができる準備は整っている。

 トランプ氏の政策を推進するために2021年に設立されたシンクタンク、アメリカ・ファースト政策研究所(AFPI)は、昨年立ち上げた政権移行プロジェクトを通じて、大変な作業に取り組んでいる。トランプ政権のOBであるダグ・ヘルシャー、マイク・リガス両氏がこのプロジェクトを率いている。

 両氏は、トランプ氏、あるいは他の保守派候補が、就任後、すぐに政策を立案し、米国第一の政策ビジョンを推進できるよう、「1日目」の行程表を作成することを任務としている。

 エレクション・インテグリティー・センター(CEI)の副所長で、AFPIの広報担当上級顧問のホーガン・ギドリー氏は、「このユニークで経験豊富な、これまでにないチームは、米国第一主義の新政権が1日目からこの国を救うための活動を開始するための作戦を作成した。AFPIの新しい革新的な2025年政権移行プロジェクトのスタッフとして必要な人材の経歴をまとめるという重要な事務作業を長い間行ってきたこの分野の人々に感謝している」と述べた。

 トランプ政権でホワイトハウスの政府間事務局長を務めたヘルシャー氏は、2016年の選挙では政権への準備を始めたのが投票日の4カ月足らず前だったことを考えれば、今回の計画は全く違うと述べた。

 「私たちがこの辺に、この場にいることで、他の人々も意欲的になってくれたと思う。それはいいことだ。これまでの政権移行を振り返ると、左派の方がずっとよく準備ができていたからだ」

 ヘルシャー氏によると、バイデン大統領は就任後48時間の間に1200の役職を用意し、19の大統領令に署名した。一方、トランプ氏は500人を準備し、1つの大統領令に署名しただけだった。

 「今それに取り組んでいる。今、大統領令の草案を書いている。私たちは法案作成に取り組んでおり、そのためにさまざまな人々と協力している」

 「私たちには経験豊富な実務経験者がいる。『ワイズ・ウォリアーズ(賢明な戦士)』と呼んでいる政府の現場にいた人たちだ。彼らはどのように機能し、どのように機能しないかを知っている。実行する方法も地雷を避ける方法も知っている」

 トランプ陣営も成熟した。

 陣営にはスージー・ワイルズ氏やクリス・ラシビタ氏らがいて、経験豊富な政治のプロが陣頭指揮を執っている。ラシビタ氏は、2004年の大統領選で民主党候補ジョン・ケリー氏を攻撃するために「真実を求めるスイフトボート退役軍人」の設立を立案した。

 トランプ陣営は今月、アイオワ州の有権者から2万7500枚以上の誓約書を集めたと発表した。さらに重要なことは、トランプ陣営が2016年にできなかったこと、つまり、投票前にこれらの有権者をフォローし、確実に投票に行かせることに尽力していることだ。

 トランプ氏は20日にアイオワ州で開催されるイベント「コミット・トゥー・コーカス(党員集会に行こう)」で演説する予定だ。

 トランプ氏が2017年に、熱心な支持者と数人の共和党の大物といった雑多な人々に囲まれて就任宣誓を行ったときには、このようなプロ意識は欠けていた。スティーブ・バノン氏や共和党全国委員会のラインス・プリーバス元委員長らは、トランプ氏を説得し、統一したビジョンを打ち出そうと奮闘したが、失敗することもよくあった。

 ブルッキングス研究所のガバナンスを専門とする研究員で、ホワイトハウスの人事異動を追跡調査しているキャサリン・ダン・テンパス氏は、「実際、トランプ氏での行政職の入れ替わりはこれまでにない水準だった」と述べた。

 「トランプ政権のスタッフの交代は桁外れに多かった。異常と言っていいほどだ」

 一方でテンパス氏は、ホワイトハウスの仕事は過酷で、疲れ切ってしまう人々も多いため、入れ替わりが激しいのは普通のことだと言う。

 他方で、トランプ政権時のホワイトハウスは「スタッフにまつわるごたごた」に満ちており、大統領は「解雇を公にし、頻繁に行った」と彼女は言った。

 レックス・ティラーソン国務長官はツイッターで解雇を知った。国防長官のマーク・エスパー氏もツイートで解雇された。

 テンパス氏の集計によれば、トランプ氏は4年間で幹部職員の92%を解雇した。解雇の大半は就任後の2年間だった。

 また、14人の閣僚が辞めていった。プリーバス氏、ジョン・ケリー氏、ミック・マルバニー氏の3人の首席補佐官もその中にいた。安全保障顧問や報道官も出ていった。

 これは前任者よりもはるかに多い。オバマ大統領は最初の4年間で3人の閣僚と71%の幹部職員を失った。バイデン氏は上級幹部職員の58%が離職し、閣僚を1人失った。

 トランプ氏が勝利した場合、2期目も1期目と同じように混乱した政権になるだろうという批判の声も強まっている。

 2024年大統領選の共和党候補の1人クリス・クリスティー氏の以前からの顧問、ビル・パラトゥッチ氏は「誰を雇うつもりなのか。ルディ・ジュリアーニ氏か、シドニー・パウエル氏か、ジョン・イーストマン氏か。もし幸運にも再び大統領になれたとしても、スタッフのほとんどは連邦恩赦を受けてポストに就くことになるだろう」と述べた。

 トランプ陣営の作戦には今後数カ月間、こうした疑問が渦巻き続ける。一方でトランプ氏は91の重罪を乗り越え、トランプ氏が引き起こしたごたごたから脱し、前に進む時だと言う対抗馬らをかわす方法を模索している。

 しかし、トランプ氏の動きを鈍らせようとする試みは失敗に終わっている。

 トランプ氏は、初期に予備選が実施されるアイオワ州とニューハンプシャー州の世論調査でトップに立っている。

 ニューハンプシャー州を拠点とする共和党の戦略家で、2012年のミット・ロムニー氏の選挙戦を率いたジム・メリル氏は、トランプ氏の選挙戦は以前より洗練されていると語った。

 「2016年は、飛行機を作りながら滑走路から離陸しようとしているような感じだった。草の根運動の面でも、コミュニケーションの面でも、そのころよりよく組織化されていると思う」

 メリル氏は、トランプ陣営が以前より洗練されているからといって、2期目の政権が1期目ほど混乱しないかどうかはまだ分からないと述べた。

 「今すぐには、何とも言えない。この8年間、トランプ大統領から学んだことは、予期せぬことを起こすということだからだ」

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