ハマス・イラン、SNSで反イスラエル宣伝戦

(2023年10月19日)

イスラエルとレバノンの国境付近の道路をパトロールするイスラエル軍兵士(2023年10月16日月曜日)。(AP Photo/Francisco Seco)

By Ben Wolfgang – The Washington Times – Monday, October 16, 2023

 1400人以上のイスラエル人を殺害し、199人の人質を捕らえた10月7日の残忍な襲撃を実行したイスラム組織ハマスのテロリストに対するイスラエルの攻撃は「虐殺」であり、「弁解の余地のない戦争犯罪」であり「自衛をはるかに超えている」とされている。

 国連のマーティン・グリフィス事務次長(人道問題担当)は16日、「歴史は見ている」と述べるとともに、ガザへの本格的な地上侵攻を検討しているイスラエルに、よく考えるよう警告した。専門家らは、侵攻は近年の人類史上まれに見る規模の人道的苦痛をもたらすだろうと主張する。

 イスラエルがハマスの恒久的な解体に向けて軍事的な動きを計画している一方で、テロ組織ハマスとそれを支援するイランは、イスラエルを侵略者として描き出すために入念な計画を立てており、アナリストらは、その計画はすでに第2段階に入っていると主張している。

 ハマスの指導者らは、イスラエルが空爆、包囲、戦車や歩兵部隊を使った地上侵攻という形で、前例のない軍事力を用いて、多くの死傷者を出したハマスのテロ攻撃に対応することを知っている。専門家らは、世界の多く、特にイスラエルとの関係改善に意欲的なアラブ諸国の政府が、すぐにハマスの攻撃からパレスチナ人の苦境とイスラエルの対応の残忍さと非人道性に目を向けるだろうと考えていたと言う。

 たしかにここ数日の報道は、ガザ地区の人道的状況が急速に悪化していることに集中している。ガザの北部から必死に逃げ出そうとしている何万人ものパレスチナ人、食料や医薬品が不足している病院、シェルターや清潔な水を利用できない子供などだ。ハマスとその同盟勢力は、こうしたイメージを利用して、外交でも、地政学上でもイスラエルに永続的なダメージを与えることができると考えているようだ。サウジアラビアなどの国々と、ユダヤ教国家イスラエルとの国交正常化を完全に葬り去ることができると考えているようだ。

 ハドソン研究所の上級研究員で中東平和安全保障センター所長のマイケル・ドーラン氏はインタビューで、「ハマスがユーチューブでの戦争に勝利している。ガザでの民間人犠牲者の光景は、ハマスがイスラエルに対して行った残虐行為よりも、イスラム世界に大きな影響を与えている」と指摘した。

 「ハマスはイランの支援を受けており、イランは非常に効果的なプロパガンダ活動を行っている。それは世界的なもので、主にソーシャルメディアに焦点を当てている。彼らのプロパガンダは、ハマスの戦闘員は高貴で、民間人を殺さず、赤ん坊を殺さず、少女をレイプしないという説得力のある主張をしている」

 ドーラン氏は、ハマスが「イスラエルの大規模な反応を誘発したかった」のは明らかであり、ハマスとイランは、イスラエルが反撃を開始するとすぐに世論をイスラエルに敵対させるための計画を「すでに立てていた」と述べた。

 イスラエルの作戦は16日も続き、ガザにあるハマスの攻撃目標に対する空爆が続けられ、ガザ境界への部隊と装備の移動が続けられた。イスラエルは3日連続で、ガザ北部から市民が移動するための安全な通路を確保したと発表した。ガザ北部では、イスラエルが地上侵攻を開始すれば、大規模な戦闘になることが予測されている。

 国連と人道支援団体は、イスラエルによる避難勧告と、食料、燃料、水などの基本物資の搬入が全面的に停止していることで、ガザに耐え難い状況が発生していると述べている。エジプト当局によると、イスラエルは、基本的な物資を積んだ補給トラックがエジプトとガザの国境を越えるのを妨害しているという。支援団体は、病院では医薬品と燃料が底を突きかけていると警告した。国連は、100万人以上が避難したと発表した。ガザの当局者によると、イスラエルが反撃を開始して以来、3000人近くのパレスチナ人が死亡し、1万人近くが負傷したという。

 ガザのこうした状況の画像はソーシャルメディアにあふれかえっている。また、イスラエルの軍事的対応がハマスのテロ攻撃を凌駕し始めたことで、一部の欧米のネットワークなどによる、ニュース報道も目立つようになっている。

「大変な間違い」だったのか

 イスラエルは、ガザの民間人を標的にしないと主張し、非戦闘員の安全を確保するために多大な努力を続けている。しかし、ハマスが学校や病院など、人間を盾にできるような場所を作戦の拠点とすることで、それが限りなく難しくなっていることは、政府関係者も認めている。

 イスラエルは独自のスケジュールで進めると宣言している。ベンヤミン・ネタニヤフ首相と同盟国のリーダーらに、こういった世界の世論に左右されるような様子は見られない。

 元イスラエル軍予備役で、米国を拠点とするイスラエルのシンクタンク、ミルヤム研究所のCEO、ベンジャミン・アンソニー氏は、「イスラエル軍が侵攻を開始していないのは、地上侵攻を開始する前に、可能な限り多くのパレスチナ市民を南へ移動させるためだ。国際世論が侵攻しないことを望んでいるからではなく、罪のない民間人を危険から遠ざけるという基準が、イスラエル軍とイスラエル国民の倫理観の中心にあるからだ」と述べた。

 アンソニー氏は16日、テルアビブからの電話インタビューでワシントン・タイムズ紙に、「イスラエルは、可能な限り人道的な方法で防衛戦争を遂行することに関しては、国際社会からのいかなる指導も必要としない」と語った。

 町や一般のイベントなどで非武装の市民を標的に数々の残虐行為が行われ、世界の大半はイスラエルの自衛権という基本概念を支持している。しかし、ネタニヤフ首相とその政府を公的な場で諌める有力者は多い。

 グリフィス氏は、「民間インフラを攻撃するな。必要な援助が受けられるようにし、容赦ない攻撃から逃れられるように通路を確保することだ」と述べている。

 バイデン大統領でさえ15日夜、イスラエル軍がガザで何をすべきで、何をすべきでないかについて見解を述べた。

 バイデン氏はCBSテレビの「60ミニッツ」とのインタビューで、イスラエルは罪のない人々の命を守るために全力を尽くすと信じていると強調したが、イスラエルがガザを軍事的に占領しないよう警告した。

 「それは大きな間違いだと思う。私の考えでは、ガザで起こったことは、ハマスという過激組織がしたことであり、ハマスはパレスチナ人の代表ではない。イスラエルが再びガザを占領するのは間違いだ」

 もっと批判的な指導者もいる。トルコのエルドアン大統領は先週末、イスラエルは一線を越えたと述べた。

 エルドアン氏はロイター通信で「人々が最も基本的な要求を満たすのを妨げ、民間人が住む住宅を爆撃すること、要するに、あらゆる恥ずべき方法を用いて紛争を行うことは、戦争ではなく、虐殺だ」と述べた。

 中国の王毅外相も先週、同様の評価を下し、イスラエルの行動は「自衛の域を超えている」と述べた。

 中国国営の新華社通信は、イスラエルは「国際社会と国連事務総長の呼びかけに耳を傾け、ガザの人々への集団的懲罰をやめるべきだ」という王氏の発言を伝えた。

 イスラエルへの批判は、ポップカルチャー界でも高まっている。英国人俳優のリズ・アーメッドさんは16日、ソーシャルメディアに長文の声明を投稿し、ハマスのテロ攻撃を「おぞましく、間違っている」と断罪したが、同時にイスラエルのガザでの行動も非難した。

 「私たちが目を逸らしている間にガザの市民を救う時間はなくなっていく。その半分は子供たちだ。もし人間らしさを持っているなら、罪のない人々の命が失われるのを回避するために、直ちに声を上げなければならない。つまり、ガザの市民や重要なインフラへの無差別爆撃、食料、水、電気の遮断、強制的な避難をやめるよう求めることだ。これらは弁解の余地のない戦争犯罪だ」

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