沖縄の米海兵隊が戦術転換 沿岸強襲から沿岸防衛に
By Andrew Salmon – The Washington Times – Thursday, November 16, 2023
【ソウル】在日米海兵隊は戦術を大転換させ、従来の任務である沿岸への強襲から沿岸の防衛へと転換する。
この戦略的環境の変化を象徴するように、沖縄を拠点とする第12海兵連隊は、15日の式典で「第12海兵沿岸連隊(MLR)」と改名された。この名称変更は、敵の沿岸を襲撃する海上部隊としてのインド太平洋における海兵隊の従来の役割からの大きな転換を反映している。新しい12MLRは、海兵隊が創設した2番目のMLRであり、海兵隊の歴史的宿敵である沿岸砲兵部隊に不思議なほどよく似ている。
この新しい名称はまた、戦争遂行と沿岸戦闘での最近の技術的シフトを反映したものであり、東アジアでの友好関係と影響力をめぐる超大国間の競争で、戦略家らが言ういわゆる中国のアキレス腱を利用したものだ。
脆弱
中国人民解放軍海軍(PLAN)は、数十年にわたる強力な軍備拡張を経て、今や兵力では米海軍に迫る勢いだ。さまざまな力関係を評価する「2023年世界海軍力ランキング」では、PLANはアメリカ艦隊のすぐ下に位置している。しかし、米海軍が世界で警戒活動を行うのに対し、中国海軍は緊迫し、往来が激しい中国沿岸の海域に重点を置いている。
PLANには独自の課題がある。特に、中国の将官らにとって台湾は、長期的な最優先事項だ。台湾は民主主義国家だが、習近平国家主席の共産党政権はいずれ中国の支配下に置くと宣言している。PLANが、台湾を封鎖したり、武力衝突の際に米軍や同盟国軍が台湾支援に来るのを阻止したりしようとすれば、安全な中国沿岸部の基地を離れ、太平洋の外洋に出なければならなくなる。
しかし、外洋への主要ルートを通るには、日本の琉球列島とフィリピンのルソン島北部を通過しなければならない。これは、戦略家らが言う「九段線」の一部だ。
米国はこの両地域に陸上部隊を駐留させており、15日の式典は、米軍司令官らが変貌した地域のダイナミズムを強く意識していることを示している。
連隊の新司令官であるピーター・エルトリンガム海兵隊大佐は、沖縄のキャンプ・ハンセンでの式典で、「われわれは、ここ第一列島線にいること誇りに思う。どこでも、いつでも、有事に対応できる準備が整っている」と述べた
エルトリンガム大佐の指揮する連隊は、海兵隊にとって2番目の沿岸連隊だ。最初のMLRは昨年ハワイで設立され、3番目のMLRは2030年までにインド太平洋戦域に配備される予定だ。
MLRは、これまでの海兵隊部隊とは任務が異なるが、米政府当局者によれば、これまで定石となっていた沿岸防衛部隊とも異なり、機動的で島々を飛び回る部隊として運用される。
海兵隊のウェブサイトによると、1800~2000人の海兵隊員からなるMLRは、高い機動力を持ち、複数の歩兵部隊と対艦ミサイル基地を前方に展開することが想定されている。この連隊は、統合的な監視・防空兵器を備えている。
中国との衝突の場合、指揮官らは、沿岸海兵隊が太平洋の列島沿いの島に静かに移動し、敵軍を偵察して、近くにいる米軍機や艦船、潜水艦にその位置を伝えることを想定している。海兵隊はまた、敵の戦力を自ら排除する新しい能力も備えている。
15日の式典には、陸上自衛隊の森下泰臣陸上幕僚長も出席した。
新たな計画
沖縄駐留米軍は軍事的に非常に重要だが、政治的な頭痛の種もある。沖縄に駐留する米軍は不人気で、人気のある玉城デニー知事は長年にわたり、米軍人による文化的な衝突や環境破壊、犯罪に日常的に苦言を呈している。沖縄の負担を軽減するため、日米両国は2012年、沖縄の海兵隊員1万9000人のうち約9000人をグアムに移転させることで合意した。
しかし、習近平政権の下で中国は地域への攻撃的な姿勢を強めており、考え方を変えている。今年1月、日米両政府高官は、12MLRが沖縄に駐留し続けることで合意した。
海兵隊の任務変更の一方で、日本も配置転換を図っている。北海道をロシアから防衛する任務を負っていた部隊は、今では沖縄以南の島々を強化することに注力している。ミサイル基地は、特に台湾に最も近い与那国島と、水深が深い宮古海峡を望む宮古島で増強されている。
日本は2018年に歩兵連隊を海兵任務に転換した。最近の演習では、敵軍に占拠された島の奪還に重点を置いている。
海兵隊は、最近退任したデービッド・バーガー司令官の下で、任務の大改革を実施した。これは、戦略環境が変わり、中国が過去の敵対国と比べて非常に異なる脅威となっていることを反映している。
海兵隊は、第2次世界大戦の太平洋戦域における水陸両用戦(沖縄への攻撃を含む)で、比類なき名声を得た。海兵隊は、韓国とベトナムでは標準的な歩兵作戦でその地位を維持したが、陸軍の中には、海兵隊の任務はしばしば多大な死傷者を出すと批判する者もいた。
中国がインド太平洋全域で存在感を増している今、戦闘力は逆転しており、米海兵隊が担う予防的・防衛的任務はこれまでよりはるかに重いと見られている。
英海兵隊のある将校は、現代の監視システムと兵器システムによって、沿岸攻撃は第2次世界大戦よりもさらに血なまぐさくなる可能性があると指摘した。現在進行中のウクライナ紛争は、データネットワーク化された衛星誘導長距離砲の重要性を浮き彫りにした。
この紛争はまた、敵対国が沿岸地域を支配できないようにすることについても教訓を与えている。かつて威信を誇ったモスクワの黒海艦隊は、ウクライナの沿岸から撤退している。ウクライナのミサイル攻撃で大きな損害を受け、クリミアから部隊を移動させている。
米シンクタンク、大西洋評議会は10月、「ウクライナの成功は…同国海軍が現在、機能していないため、より注目すべきだ。ウクライナは、海軍ではなく、国産の無人機と西側のパートナー国から提供された長距離巡航ミサイルを組み合わせた奇襲部隊による大胆な襲撃に頼っている」と指摘した。