五輪に性別検査復活を ボクシング金メダリスト巡り議論沸騰

(2024年8月16日)

国際オリンピック委員会は1996年以来、女性アスリートの性検査を行っていないが、2024年のパリ大会で金メダルを獲得した2人の男女差別のないボクサーは、頬のぬぐい液の復活を要求する女性もいる。

By Valerie Richardson – The Washington Times – Tuesday, August 13, 2024

 国際オリンピック委員会(IOC)は1996年以来、女子選手の性別検査を行っていない。しかし、2024年パリ五輪で金メダルを獲得した2人のボクシング選手の性別を巡って議論がわき起こったことから、一部の女性から、(頬の内側の粘膜から検体を採取する)チークスワブの復活を求める声が上がっている。

 アルジェリアのイマヌ・ヘリフと台湾の林郁●(女偏に亭)は、昨年の女子世界選手権で性別検査で不合格となり失格となった。にもかかわらず、IOCから出場許可を得て、五輪に女子枠で出場したことで、性別検査の再開を求める声が高まった。

 IOCのスポークスパーソン、マーク・アダムス氏は、「性別検査の古く悪い時代」に戻るという考えを否定した。しかし、男女別スポーツの擁護者らにとって、それは古き良き時代だった。

 カナダの全国大学体育協会(NCAA)陸上チャンピオンであり、「国際女性スポーツ・コンソーシアム」の共同設立者で、スポーツ・パフォーマンス・コーチのリンダ・ブレード氏は、「私は『古き良き時代』に戻りたい。あの時代は古く悪い時代ではないからだ。男性か女性かを検証できた時代は、古き良き時代だった」と述べた。

 1999年にチークスワブなどのバールボディー検査を中止して以来、五輪は、女子のカテゴリーでトランスジェンダーの選手や、性分化疾患(DSD)を持つ選手をめぐる資格問題に苦しみ、方針を次から次へと変更してきた。

 ブレード氏はワシントン・タイムズに、「誠実でなく、最初から検査をしないのであれば、女子カテゴリーの正当性は失われてしまう」と語った。

 テニス選手マルチナ・ナブラチロワ氏や、スポーツニュースサイト「アウトキック」のポッドキャスト「ゲインズ・オン・ガールズ」のホストを務めるケンタッキー大学の元オールアメリカン競泳選手ライリー・ゲインズ氏も、女子スポーツでのチークスワブの復活を呼び掛けている。

 ゲインズ氏は、「プライバシーを侵害せず、屈辱的でもなく、性器を検査するわけでもなく、費用対効果が高い。なぜしようとしないのか。世論調査によれば、オリンピックに出場する女性選手の80%以上が、公平性を確保するために性別検査を望んでいる」と述べた。

 「女性が男性の手によって致命的なけがをしなければ、IOCがこれらの意見に従うことはないのだろうか」

 一方、IOC、全米医師会(AMA)、全米女性法律センター、全米トランスジェンダー平等センターなどの団体が、選手の性別検査は非科学的で非倫理的だと主張している。

 LGBTQスポーツ擁護団体「アスリート・アライ」が率いる連合組織は、2022年11月に「選手の『性別検査』と特定の性徴を基にした資格規定の変更は、世界医師会(WMA)など医学界の数多くの団体によって、非科学的で『医療倫理に反する』と批判されてきた。ホルモンのような個々の性徴は、(生物学的性と心の性が一致する)シスジェンダーで、(男女の身体的特徴を持つ)インターセックスではないアスリートの間でも、大きく変化する可能性がある」と指摘した。

 IOCのトーマス・バッハ会長は、パリ五輪の期間中、スポーツ競技での女性の定義についての科学的なコンセンサスは得られていないと述べた。

 バッハ氏は記者会見で「私たちが抱えている問題については、以前にも説明した。これらの文化的戦争の中で、XXかXYかで男女を明確に区別できると説明する人々がいるが、それほど簡単ではない。これは科学的にはもはや真実ではない」と述べた。

 しかし、性別検査の実施を求める声が高まる一方で、IOCのトップが女性だけの女性スポーツ支持者に交代しようとしている。

 バッハ氏は10日、続投は望まず、来年6月の任期満了をもって退任すると発表し、後任には英陸上界の大御所、セバスチャン・コー氏が就任するのではないかとみられている。

 2度の五輪金メダリストであり、「ワールド・アスレティックス(世界陸連、WA)」を率いるコー氏は、長年にわたり女子スポーツの公平性の必要性を訴え、性別を基にカテゴリーを明確に区別しなければ「女性はどのスポーツイベントでも勝てなくなる」と警告している。

 コー氏のもとでWAは、トランスジェンダーやDSDの選手に対する規制を強化するリーダー的存在となり、昨年、「男性として思春期」を送ったトランスジェンダー選手を上位の国際陸上競技大会に出場させることを禁止する規則を承認した。

 コー氏は、IOC会長職を目指すかどうかはまだ表明しておらず、「真剣に考える」としながらも、同時に女子カテゴリーの健全性を守る必要性を強調している。

 コー氏は11日、英テレグラフ紙のインタビューで、「明確な方針が必要だ。それがなければ、困難に直面することになる。今まさにそのような状態になっているのだと思う。現実はとてもシンプルだ。私には女子のカテゴリーを維持する責任があり、後継者がそうしないと決めるか、科学が変わるまでそうし続けるつもりだ」と述べた。

 国際ボクシング協会(IBA)によれば、1年毎に行った血液検査で、この2人のボクシング選手は女子カテゴリーに不適格であることが判明し、「DSD46、XY」ではないかとの見方が出ている。

 DSD46、XYは、生まれつき生殖器がはっきりせず、精巣があることが多いが、思春期以降に男性レベルのテストステロンが分泌される。ヘリフはDSD46、XYではないかとの見方についてコメントしていないが、「私は女性だ」と主張している。

 女子陸上競技界で好成績を挙げるDSDの選手が続出したことを受けて、WAは規則を強化し、2023年3月、DSDの選手は、すべての競技に出場する前に、テストステロン値を少なくとも24カ月間2.5ナノモル/リットル未満に保たなければならないと発表した。

 このWAの方針と闘っているのが、五輪の女子で2度金メダルを獲得した南アフリカの陸上選手キャスター・セメンヤ氏だ。DSDであり、テストステロン値を下げることを拒否したため、2019年から国際大会への出場が禁止されている。

 セメンヤ氏は昨年11月のBBCのインタビューで、「子宮がないこと、睾丸があること、それらは私を女性でなくするものではない。生まれつきの違いであり、私はそれを受け入れている。人と違うことを恥じるつもりはない」と訴えた。

 また、セメンヤ氏は先週、ドイツのARD放送とのインタビューで、WAの会長選への出馬を検討すると述べ、「スポーツの重要性を理解している 」と語った。

ブレード氏は、IOCが性別検査に反対するのは奇妙だと主張する。IOCはドーピング検査で、選手がコップに尿を採るのを検査官が看視することを義務付けており、これは小瓶に唾を入れたり、綿棒で口の中を擦るよりもはるかにプライバシーを侵害するものだからだ。

 「とても簡単なことだ。ただ一つ考えられるのは、IOCは性自認のイデオロギーを完全に受け入れており、性別に基づくものには戻りたくない、あの時代に戻りたくないということだ。だが、私たちはそれをやらなければならない」

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