国防総省、量子コンピューティング時代に備え新構想

(2024年9月19日)

中国による量子技術の獲得に関する報告書が、米国と同盟国の情報機関内部で警鐘を鳴らしている、と内部関係者が語っている。(AP通信/ファイル)

By Ryan Lovelace – The Washington Times – Wednesday, September 11, 2024

 米国防総省は、画期的な量子コンピューターの登場を加速させるブレークスルー(大変革)に備えるため、科学的発見を検証し、その応用のテストを開始するイニシアティブを急ピッチで進めている。

 量子コンピューターは、国家安全保障に重大なリスクと巨大なチャンスをもたらす。「暗号解読に有効な量子コンピューター(CRQC)」の出現によって、国防機密や日常の金融取引を保護する暗号システムが解読されるリスクが高まる。

 国防総省の量子科学主任ジョン・バーク氏は、国防総省が量子コンピューター研究で目指しているのは、その用途を理解し、その能力が敵の手に渡るのを防ぐことだと語った。

 今週、バージニア州北部で開催された「量子世界会議(QWC)」でバーク氏は、量子コンピューティングという斬新な新技術を敵に奪われる前に、軍として利用できるようにするための取り組みについて概説した。

 「量子コンピューティングが(国防総省にとって)有用なアプリケーションとして非常に重要になる時が来るだろう。それはすぐに来るかもしれない。積極的に取り組んでいる。有用性が証明されれば、状況は劇的に変わる」

 バイデン大統領の国家安全保障覚書第10号によれば、量子コンピューターは、重ね合わせ、干渉、もつれといった性質を利用することで、古典的なコンピューターよりもはるかに速く複雑な問題を解くことができる。

 3月、国家安全保障局(NSA)は、現在の暗号化システムに対応できるCRQCはまだ存在しないと述べた。

ベンチマーク

 国防総省の研究・技術チームに所属するバーク氏は10日、量子コンピューター時代に備えるための2つのプログラムの重要性を強調した。

 国防高等研究計画局(DARPA)は、産業分野で役に立つ量子コンピューターを、技術分野の専門家らが予想するよりも早く構築できるかどうかを判断するため、量子ベンチマーク・イニシアティブを推進している。

 DARPAのウェブサイトによると、国防総省はこのプログラムで、2033年までにそのような量子コンピューターの価値がコストを上回るかどうかを知りたいのだという。

 DARPAのプログラムマネジャー、ジョー・アルテペター氏は、8月に公開された動画で、「最先端の量子コンピューター分野を評価するのは本当に難しい。専門家らのアプローチが信頼できるものなのか、いずれ進展があり、短期間で産業的に有用なマシンを開発できるのかを知ることも難しい。しかし、われわれは世界クラスの試験・検証チームを作る」

 DARPAが、誇大な話なのか、現実なのかを見極めるために量子開発の状況を調査する一方で、国防総省は量子技術を現場、空、海で軍隊に使用する試験プログラムに取り組んでいる。

 バーク氏はQWCで、「私たちはまた、DAQARと呼ばれるプログラムを立ち上げようとしている。DAQARは、軍と発展途上の産業を対象とした短期的な量子コンピューティング応用プログラムであり、量子コンピューティングのような技術を短期間で応用できるようにすることを目指している」と語った。

 バーク氏は、直近の国防権限法に、量子コンピューティングの試験プログラムを立ち上げる条項があることを指摘した。昨年12月に署名されたこの国防権限法は、国防総省に対し、商用の量子技術と、量子技術の組み合わせをどのように応用できるかを評価し、米兵が使用できるようにすることを求めている。

 量子技術を利用したマシンの中で軍に役立つと期待されているのはCRQCだけではない。バーク氏によれば、国防総省は時計、磁力計、慣性センサーなどに量子技術を生かすことに興味を持っているという。

それほど速くない

 陸軍の量子担当上級研究員であるフレドリック・ファテミ氏はQWCで、量子技術が短期間で出来上がるという考えに対して慎重な見方を示した。

 ファテミ氏は、今後の量子技術の開発は、簡単でも、速くも、安価でもないだろうと述べた。

 「量子技術の進歩は、映画に出てくるような、ガレージで一人の男によって進められるような分野ではない。大規模な協力が不可欠だ。それが世界中であろうと近隣であろうと、本当に重要だ」

 量子ブレークスルーをテストし検証するための軍のプログラムは、米国内外の企業に開かれている。DARPAの動画でアルテペター氏は、DARPAの精査を乗り切れると考える人は誰でも挑戦してみるよう促した。

 QWCに出席している多くの外国の代表は、劇的な変化が目前に迫っていることを知っている。

 ニューヨークに駐在するフィンランドのヤルモ・サレバ総領事は、会議の参加者との会話から、巨大な技術的混乱がいずれ訪れることを感じたと語った。

 ロシアと米国に駐在した経験を持つサレバ氏は、量子的な未来は人々の生活を根底から覆すだろうと会議で語った。

 「勝者がいれば、敗者もいる。しかし、その混乱は量子情報科学技術そのものをはるかに超えて広がることは間違いなく、私たちはその混乱に備える必要がある。いつ、どのような形で、誰が勝者になるかは分からないが、準備はしておく必要がある」

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