中国の「運命共同体」論にだまされるな ハドソン研究所中国センター所長 マイルズ・ユー

(2025年1月8日)

中国共産党、習近平国家主席と世界支配 イラスト:Linas Garsys / The Washington Times

By Miles Yu – Monday, January 6, 2025

 大みそかの深夜、時計の針が0時を指すと、中国の習近平国家主席は共産主義の勝利への確信とイデオロギーへの熱意に満ちた演説を行った。習氏は中国が取り組んでいる計画を「この100年、世界が見たことのない壮大な変革」と呼んだ。これは、「人類運命共同体」というビジョンを婉曲的に表現したものだ。

 この壮大な理想は、中国の国家復興ではなく、世界支配へのロードマップだ。それはすなわち、中国共産党は、中国がルールを書き、異論を封じ込める新しい世界秩序の構築者だと考えているということだ。

 その3日後、王毅外相は「人類運命共同体研究センター」を発足させた。この研究所は、自由民主主義を弱体化させ、中国の野心を正当化するためのプロパガンダ機関だ。

 しかし、こうしたあからさまなシグナルにもかかわらず、西側諸国の多くは中国の意図を見誤り続けている。

 西側の多くの政治家が、中国を国内の復興に重点を置く国家主義政権と考えているが、これは誤解だ。このような誤解は、中国の野心が東アジアに限定されたものだと思い込み、融和的な態度を取ることにつながる。現実には、「運命共同体」は中国が支配する世界秩序への青写真であり、そこでは権威主義的価値観が自由を凌駕し、経済的依存が従順を強制し、主権を持てるかどうかは中国の承認次第となる。つまり、国家主義的アジェンダではなく、世界的覇権への計算された推進力だ。

 この中国の野望にとって最大の障害となるのは米国であり、それは特定の政策によるものではなく、中国が解体しようとしている自由民主主義秩序を米国が体現しているからだ。共和党のタカ派であろうと民主党のハト派であろうと、米国は中国からの強烈な敵意に直面している。

 この敵意は互いの関係から出てくるものではなく、イデオロギー的なものだ。中国の使命は、現在のグローバル秩序を破壊し、中国中心のシステムに置き換えることだ。「協力」や「ウィンウィン」という言葉は美しいが、支配を推進するための見せかけのレトリックに過ぎない。

 中国との交渉が無益であることは歴史が証明している。ニクソン大統領の対中開放政策、クリントン大統領の世界貿易機関(WTO)加盟支持、オバマ大統領の「アジア・シフト」など、何十年もの間、米政権は中国を取り込もうとしてきた。だが、どのアプローチも、中国によって戦略的に逆手に取られてきた。毛沢東、鄧小平から江沢民、胡錦濤、そして習近平各氏に至るまで中国の指導者らは、米国は最終的に中国の社会主義体制を変えることを目指しており、この「長期的で複雑な闘い」に絶えず警戒する必要があると何度もはっきりと述べてきた。

 個人外交や理性的な交渉を通じて「北京フレンドリー」な戦略を試みても、習近平氏のイデオロギー的な聖戦を助長するだけだ。中国は常に、「封じ込め」も「関与」も中国体制の崩壊を狙った陰湿な企てだと考えているからだ。近年、中国の野心はいっそう強まっており、その目標ははっきりしている。世界の覇権を握り、貿易、安全保障、統治政策を中国が決定できるようにすることだ。このビジョンは、現在の国際システムを支える自由、民主主義、主権の原則とは本質的に相いれない。

 米国と同盟国がこの存続に関わる危機に対処するには、交渉や譲歩という幻想をすべて捨てなければならない。中国の行動は、米国を駆逐し、世界をその権威主義的なイメージに再構築するというイデオロギー的な確信によって引き起こされている。防御的な姿勢では不十分であり、西側諸国はこの課題に向き合い、経済的、軍事的、イデオロギー的な領域にわたって全面的な攻勢をかけなければならない。中国の勢いを止め、その野心を積極的に破壊しなければならない。

 習近平氏と中国は、その目標を運命という言葉でごまかすかもしれないが、そのビジョンは抑圧が支配するディストピアにほかならない。西側諸国は、融和策や中途半端な対応ではなく、明確かつ果敢に攻勢に転じなければならない。中国のゲームに付き合うのをやめ、自由世界の基礎となる価値観を強調すべき時だ。

マイルズ・ユー(Miles Yu) ハドソン研究所中国センター所長、フーバー研究所客員研究員。ワシントン・タイムズにコラム「レッド・ホライズン(Red Horizon)」を連載中。

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