国防長官、グアム駐留軍はアジア戦力投射の「槍の穂先」

(2025年4月1日)

グアムで部隊に語りかけるピート・ヘグセス米国防長官。(ビル・ガーツ/ワシントン・タイムズ)

By Bill Gertz – The Washington Times – Thursday, March 27, 2025

 【グアム、アンダーセン空軍基地】国防総省によれば、台湾を巡って中国との戦争が勃発した場合、1899年以来米国領であるグアムの前線基地は、中国のミサイル攻撃の主要な標的になる。

 国防当局者らは、中国の戦争計画に関する情報評価に基づくと、爆撃機、戦闘機、偵察用無人機、艦艇が配備されているグアムの飛行場と港は、紛争の初期段階で失われると指摘する。

 約17万人の米国民が住むこの島は、ハワイから西に4000マイル(6400キロ)、フィリピンから約1500マイル離れたフィリピン海の端に位置し、主要な軍事拠点となっている。大規模なミサイルや爆弾の貯蔵施設、海軍の艦艇や潜水艦、ローテーション配備の空軍爆撃機、陸軍のミサイル防衛がある。

 グアムはインド太平洋の最西端の米領であり、約6400人の軍人が住んでいる。

 B1爆撃機4機が1月、演習のために一時的にグアムに配備された。爆撃機はその間、日本と韓国の戦闘機とともに飛行した。

 しかし、空軍はもはやグアムに戦略爆撃機B1、B2、B52を継続的に駐留させてはいないと当局者は述べた。

 攻撃型原子力潜水艦5隻もグアムを拠点としており、中国やこの地域の他の敵対国に対する米軍の非対称戦能力にとって極めて重要な役割を担っているとみなされている。

 ある国防当局者によれば、今週行われたブリーフィングで、台湾攻撃の初期段階では人民解放軍のミサイルがグアムを標的にすることが明らかになったという。

 この戦いでの中国の目標は、中国の南東沖約100マイルに位置する民主統治下の島、台湾を併合することだ。

 ピート・ヘグセス国防長官は27日にここに立ち寄り、グアムでの大規模なミサイル防衛増強は、「ゴールデン・ドーム」と呼ばれるトランプ大統領の国家ミサイル防衛システム計画の「モデル」だと述べた。

 ヘグセス氏は地元当局者との会談後、「(グアム防衛システムから)多くを学び、米本土の防衛に応用する」と語った。

 米国防総省は、2028年までの軍事建設のためにグアムに73億ドルを投資する。

 中国のミサイル攻撃を回避するため、空軍は「機敏な戦闘運用」(ACE)と呼ばれる戦略を採用した。域内の小規模飛行場のネットワーク内で軍用機を移動させることに重点を置く戦略だ。

 基地の第36航空団には空軍機が常駐しておらず、代わりに爆撃機、給油機、ドローンを基地間でローテーションさせている。

「危険な地域」

 ヘグセス氏は、グアムに近い太平洋の島国で、中国からの侵食が拡大していると警告した。米国は同盟国と協力して、中国の侵攻を防いでいる。

 ヘグセス氏は「これらの島々に対するいかなる攻撃も、米国に対する攻撃だ」と述べ、軍は中国との衝突抑止を目指す一方で、戦いに備える必要があると強調した。

 「共産中国との戦争を望んでいるわけではない。しかし、準備を万全にすることがわれわれの仕事だ」

 これに先立ち、ヘグセス氏は数百人の米兵に対し、彼らはアジア太平洋地域での米国の戦力投射の「槍の穂先」だと語った。

 「君たちは危険な地域に住んでいる。君たちは米国の戦力投射の基盤だ。米国民はあなた方を頼りにしている」

 ヘグセス氏は、集まった空軍兵らに、軍隊は基本に立ち返ることによって改革されつつある、つまり戦争に備え、戦力を増大させることによって紛争を抑止すると語った。

 「できることをしてほしい。敵との距離を縮め、破壊する。戦いながら訓練する。戦士がすべきことをする」

 軍用機や艦艇に加え、国防総省は何千人もの海兵隊を沖縄からグアムに移転させようとしている。

 国防総省の中国軍に関する最新の報告書は、人民解放軍は弾道ミサイルと巡航ミサイルの両方でグアムの米軍基地に到達できると述べている。

 「将来的には、人民解放軍(陸上攻撃巡航ミサイル=LACM)は、レンハイ級誘導ミサイル巡洋艦(南昌級駆逐艦)のような水上艦に配備される可能性が高い」と報告書は述べている。

 「フィリピン海へのH6K爆撃機の飛行は、空中発射LACMでグアムを射程に入れる能力を中国が持っていることを示している」

 報告書はまた、核・通常弾頭を搭載した「東風26(DF26、中距離弾道ミサイル)」は「グアムを射程に収める能力があり、核攻撃、精密な通常攻撃、海上攻撃を行うことができる」と述べた。

 報告書によれば、空母を含む人民解放軍海軍の艦艇からなる複数の機動部隊が、グアム近海に配備されているという。

 中国国営メディアは11月、米軍のグアムへの攻撃型潜水艦の配備は、グアムを中国に対する兵器へと変える国防総省の計画の一部だと伝えた。

 中国共産党系の環球時報は、「中国は米国に対して戦略的敵意を抱いておらず、米国が中国と半歩ずつ歩み寄り、ここに兵器を配備したり、基地を設置したりするような非建設的な行動を控えることを望んでいる」と報じた。

 中国はまた、昨年12月に台湾の頼清徳総統がグアムを訪問したことに強く反発している。住民の中には、この訪問によって米領グアムが米中間の緊張激化の標的になることを危惧する者もいる。

 第36航空団司令官であるトーマス・パレンスキ空軍准将は最近、ソーシャルメディア上で、中国の工作員がアンダーセン空軍基地に潜入しようとしていたことを明らかにした。

 パレンスキー氏はフェイスブックで、「同盟国でない国の国民がわれわれの空軍基地への侵入を試みる件数が大幅に増加している。…特に大規模な演習を実施しているときだ」と述べた。

 不正侵入を試みる者たちは、奇妙な言い訳をするという。あるケースでは、警備員が侵入者と思われる人物に理由を尋ねたところ、ドッグパークを利用したいと言った。

 「犬なんか連れてないだろ」と警備員は答えた。

 パレンスキー氏これについてこう述べた。「よし、中国よ… かかってこい!アメリカ万歳!」

攻撃目標

 グアムは、中国のハッカー集団「ボルト・タイフーン」によるサイバー攻撃の際、すでに中国の事前攻撃目標となっていた。

 国防総省の中国軍に関する最新の年次報告書によると、ボルト・タイフーンの標的には、米本土とグアムの通信、エネルギー、輸送システム、水道など、複数の重要インフラ部門が含まれていた。

 「(中華人民共和国は)グアムがインド太平洋における米軍の軍事作戦にとって重要であるという認識を持っているため、米国の戦力投射に対抗するためにグアムを標的にする可能性がある」と報告書は述べている。

 重要なインフラを制御するためのネットワークに人民解放軍が侵入することで中国は、「最低限、局地的で一時的な混乱を引き起こすサイバー攻撃を仕掛ける」ことが可能になる。

 ワシントンのシンクタンクが最近行った模擬演習では、台湾をめぐる中国との衝突では米軍が勝利するだろうが、グアムに駐留する米空軍資産に損害を与えるなど、多大な犠牲を払うことが明らかになった。

 米戦略国際問題研究所(CSIS)の報告書によれば、シミュレーションで、空軍の爆撃機や戦闘機、長距離無人機グローバルホークを含む数多くの米軍機が、中国の精密攻撃によって破壊され、飛行場が損壊されたという。

 中国はまた、「東風27(DF27)」と呼ばれる新しい極超音速ミサイルでグアムを攻撃することができる。この兵器はミサイル防衛システムで迎撃できないと言われている。

 しかし、グアムへの主な脅威は東風26とみられている。

 国防情報局(DIA)は昨年10月、中国が東風26の数を増やしているとする報告書を発表した。このミサイルは、その射程から中国が「グアム・キラー」と呼んでいるもので、将来のグアム攻撃に備えたものだ。射程2485マイルのこのミサイルは、中国南部の移動式発射台からグアムに到達できる。

 この道路移動式精密誘導ミサイルには、核弾頭、通常弾頭のいずれかが装備されると報告書は述べている。「核と通常弾頭の混在は、紛争時に想定外のエスカレーションの可能性を高める」

 「(このミサイルは)地上目標に対して通常兵器と核による精密攻撃の両方が可能であり、海軍目標に対する通常攻撃も可能である」と報告書は述べている。

 中国は、米国が2019年に米露間の中距離核戦力(INF)全廃条約から離脱したことで、世界トップの核保有国間の戦略的安定性は低下したとしている。

 これに対抗するため、中国は「何千発もの兵器を実戦配備した。東風26もその一部であり、中国がこの条約に参加すれば、条約の対象となっていた」と報告書は述べている。

 中国の東風26の戦力は、2019年の200発から7カ月足らずで350発に増加した。

グアム防衛の強化

 サム・パパロ米インド太平洋軍司令官は、グアムを多層的な防空・ミサイル防衛で守ることが「私の最優先事項」だと述べている。

 米国防総省は、グアム島のミサイル防衛と航空防衛を急いでいる。2024年に防衛のために総額15億ドルが承認された。

 防衛の強化には、現在配備されている陸軍のミサイル防衛システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」の追加が含まれる。

 その他には、ミサイルや空爆に対する「360度」の防御システムの開発が求められている。これらには、海軍のSM6とSM3ブロックIIAミサイル迎撃ミサイル、イージス・アショア・システム、ハイテクレーダーとセンサーが含まれる。

 ミサイル防衛計画にもかかわらず、米国防総省は10月、島内の防衛拠点数を35カ所から16カ所に縮小すると発表した。

 この変更は、環境影響評価書の草案にまとめられている。

 最初のシステムは今年初めに配備されるが、完了するのは2035年だ。

 評価書は「グアムは、米国の影響力を維持し、敵対勢力を抑止し、危機に対応し、自由で開かれたインド太平洋を維持するための重要な戦略的拠点である。グアムへの攻撃は米国への直接攻撃とみなされ、適切な対応がとられる」としている。

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