トランプ大統領、新ミサイル防衛構想「ゴールデンドーム」に意欲

(2025年6月7日)

ホワイトハウスの執務室でミサイル防衛構想「ゴールデンドーム」について説明するトランプ大統領(左)とヘグセス国防長官(右から2番目)=5月20日(UPI)

By Ben Wolfgang – The Washington Times – Tuesday, May 20, 2025

 トランプ大統領は、自身が提唱したミサイル防衛構想「ゴールデンドーム」の基本概念を決定し、宇宙軍のゲトライン宇宙作戦副部長を計画の責任者に任命したことを明らかにした。トランプ氏は先月20日、大統領執務室で、ゴールデンドームを任期満了までに完成させ、1980年代のレーガン時代から続く国家ミサイル防衛のビジョンを完成させると述べた。

 トランプ氏とヘグセス国防長官は、有力軍需企業や新興IT企業など、複数の防衛関連企業を巻き込んだ「オープンアーキテクチャー」について説明した。

 トランプ氏は同日、ゴールデンドームは、宇宙配備の最先端の迎撃システムと、おそらく高高度防衛ミサイル(THAAD)や弾道ミサイル迎撃システムなど、既存のミサイル防衛能力とを統合したものになるとの見方を示した。

 「ゴールデンドームは、既存の防衛能力と統合され、(2029年1月の)私の任期満了までに完全に運用可能になる」と短期間での配備に意欲を示した。

 「完成すれば、地球の反対側から、あるいは宇宙から発射されたミサイルであっても、迎撃することができるようになる。私たちは、かつてない最高のシステムを手に入れることになる」

 ヘグセス氏は、宇宙配備の迎撃ミサイルや地上配備のミサイル防衛システムなどからなる「多層防衛」システムについて説明し、米国は飛来するミサイルに対して複数の迎撃手段を講じることができると述べた。

 一部の有力軍需企業からは、米国の東西両海岸とアメリカ湾沖の海上部隊も組み込むべきであり、戦略的に重要な場所に追加の防衛層を追加すべきだという主張も出ている。

 ヘグセス氏は、これまで構築された中で最も技術的に進んだミサイル防衛システムとなることが予想されるとの見方を示すとともに、無数にある機能それぞれが「相互に連携できる」システムを想定していると述べた。

 これは、人工知能(AI)と自律型システムが、ゴールデンドームを構成する衛星、センサー、迎撃ミサイルなどの装備からなる画期的なネットワークの構築に使用されることを示唆しているとみられている。

 トランプ氏は、議会で審議中の歳出法案には、このプロジェクト向けに250億㌦の予算が盛り込まれていると述べた。全体で1750億㌦になると予想されているというが、外部のアナリストらは、それよりもはるかに高額になると指摘している。

 完成後の更新、メンテナンスも必要であり、それらを考慮すると、プロジェクトの総費用を正確に予測するのは、現状では難しい。

 ゴールデンドームは、中国やロシアの高度なミサイルシステムから発射される可能性のある弾道ミサイルや極超音速ミサイルの攻撃から、米本土全体を守ることを目的としている。

 政府の推計によると、中国は600発の極超音速ミサイルを2035年までに最大4000発に拡大する。ロシアは10年以内に1000発の極超音速兵器を保有すると予想されている。

ミサイル防衛のゲームチェンジャー

 トランプ氏と共に発言したゲトライン氏は、ゴールデンドームがなぜ必要なのかという自身の見解を明らかにした。

 「米国が海外の平和維持に焦点を当てている間、敵対国は核戦力を急速に近代化し、複数の核弾頭を搭載可能な弾道ミサイル、米国を1時間で攻撃可能な時速1万㌔の極超音速ミサイル、レーダーと防衛システムを回避できる巡航ミサイル、沿岸に接近できる潜水艦、さらに深刻な宇宙兵器を開発してきた」

 「今こそ、その状況を変え、国土の防衛に力を注ぐべきだ」

 ゲトライン氏の新しい役職は、ゴールデンドームの「直接報告プログラム・マネジャー」であり、非常に重要な任務を担うことになる。ゴールデンドームの建設には、宇宙軍、ミサイル防衛局、国防総省戦闘司令部など、連邦政府全体の協力が必要となる。

 米軍の兵器、設備の調達には時間がかかることはよく指摘されており、ゲトライン氏は、この大規模で、広範囲に及ぶ、複雑なプロジェクトを推進するにはまず、この問題に対処する必要がある。

 主要議員らはこの発表を称賛したが、今後の課題を認識している。

 ウィッカー上院軍事委員長(共和党)は声明で「宇宙での優位性と、航空およびミサイル防衛能力の向上なしには、抑止力を維持することはできない。ゲトライン大将が負う任務は困難だが、この任務にふさわしい人物だと確信している」と述べた。

支持の拡大

 この数週間、ゴールデンドーム計画は議会と防衛産業から強い支持を得てきた。

 ワシントン・タイムズが5月中旬に実施したゴールデンドームに関するイベントで、シーヒー上院議員(共和党)は、上院にゴールデンドーム議員連盟を設立し、プロジェクトを支援する方針を表明した。

 上院軍事委員会戦略部隊小委員会のフィッシャー委員長(共和党)は、この取り組みに協力することを明らかにしている。

 フィッシャー氏は、中国やロシアのような敵対国がミサイル開発を急速に進める中、米国が自国を守る方法を根本から変革する大規模なミサイル防衛システムへの投資を行う絶好のタイミングだと述べた。

 「過去40年間、私たちは20年ごとに、ミサイル防衛を優先し、進歩を遂げ、その後後退するというサイクルを繰り返してきた。現在のトランプ政権のもとで、ゴールデンドーム構想を通じて、ミサイル防衛において世代を超えた飛躍的な進歩を遂げるチャンスが巡ってきた」

 最大の課題は、このプロジェクトを構築するためにどの企業が採用されるかという点だ。

ロイター通信は5月、イーロン・マスク氏のロケット・衛星企業スペースⅩ、ソフトウエアメーカーのパランティア・テクノロジーズ、ドローンメーカー、アンドゥリル・インダストリーズが、ゴールデンドームの契約争奪戦で、国家安全保障チームの一部のメンバーの間で最有力候補として浮上していると報じた。

 業界筋は、この次世代のミサイル防衛構想の進化に伴い、他の新興防衛技術企業も参画する可能性があるとしている。

 ロッキード・マーティンを含む大手防衛関連企業も、大きな役割を果たすものと予想されている。

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