中国、強力な新AI目指し、人と機械の融合を研究中

(2025年7月25日)

2024年7月4日、中国・上海で開催された「世界人工知能会議およびグローバルAIガバナンスに関するハイレベル会議」のAI展示ブースで、来場者が展示されているヒューマノイドロボットの手を触れる様子。(AP通信/アンディ・ウォン)

By Ryan Lovelace – The Washington Times – Tuesday, July 22, 2025

 中国は、人工知能(AI)をめぐる世界的な競争で圧倒的な優位に立つために、人間と機械の融合を実現しようとしている。

 中国の取り組みの詳細は秘密のベールに包まれているが、AI専門家、中国政府の産業・戦略文書、中国が採用した技術者から提供された情報を通じて、中国共産党の研究開発計画の一端が見えてきた。

 ジョージタウン大学安全保障・新興技術センター(CSET)によると、人間と機械の認知能力の融合を生み出そうとする中国の取り組みには、脳と機械を直接接続するブレイン・コンピューター・インターフェース(BCI)の研究がある。これは、「認知力を強化」するものだが、治療目的ではない。

 BCIは、脳の電気信号と、それを処理してタスクを達成するデバイスとの直接的なリンクを容易にするものだ。

 ジョージタウン大学の専門家が米政府に行った中国の計画に関するプレゼンテーションによると、中国は侵略的、最小侵略的、非侵略的なBCIを使用して、「脳を計算リソースに直接リンクさせることで、人間の認知と人間と機械の連携を強化する」。

 このような融合によって、AIがより人間に近くなると解釈する見方がある。一方、中国の研究者らはさらに、人間と機械の知能の区別をなくし、人々がこの技術に依存するようになる文字通りの合体を目指しているという見方もある。

 ジョージタウン大学CSETの主任アナリスト、ウィリアム・ハンナス氏はワシントン・タイムズに、中国は従来とは違う方法で汎用人工知能(AGI)の実現を目指していると語った。AGIは、あらゆる認知領域で少なくとも人間と同等のパフォーマンスを発揮する高度なAIを指す。

 ハンナス氏は、「人間と同等のAIを追求するにはさまざまな方法がありうるが、(モデルの)

パラメーターを増やすだけでは実現できない。モジュールを追加する必要があり、いずれは、それを具現化する必要がある。中国はこれを理解している」と述べた。

 米国のアプローチは、強力なAI技術を開発するための主要な方法として、主に大規模な言語モデルのスケールアップに固執してきた。オープンAIや同様の新興AI企業は、パフォーマンスを向上させるためにモデルのパラメーターを増やすことを目指してきた。

 中国はさまざまな理由で別の方法を模索している。一部の半導体チップの輸出規制により、中国は欧米で開発されているものとは異なるシステムについて検討することを余儀なくされている。また、中国の研究は、脳にヒントを得たさまざまな戦略において有望な可能性を示している。

 中国国営メディアは、天津大学の脳科学・脳類似研究センターの責任者、董旻教授の発言を引用し、将来的には、人間をAIシステムに置き換えるのではなく、AIを人間の物理的な一部にすることになると報じた。

 発言の英訳によると、ミン氏は2019年に「障壁のない人間とコンピューターの融合は今後、避けられない」と述べている。

 AGIへの取り組みと人間と機械の融合計画について中国政府はワシントン・タイムズに、AI政策に適用される倫理的ガイドラインと規制を導入したと述べた。

 ワシントンの中国大使館は、共産党政権は原則に基づいた政策を堅持しており、「AI技術の安全性、公平性、ガバナンス能力を向上させている」と述べた。

 大使館は声明で次のように述べた。「このアプローチは、開発と安全保障のバランスを重視し、イノベーション、安全保障、包括性を特徴とする」

 中国はまず、AGIを実現する方法に関する理論の検証を開始した。

 ジョージタウン大学のアナリストで、かつて中央情報局(CIA)で中国の科学技術の研究に関する公開情報の活用を監督していたハンナス氏は、中国の戦略は効果的なのではないかと考えている。

 武漢で現在、AGIに到達するための1つの方法が試験的に実施されている。中国でも特に意欲的な取り組みの1つだ。

 ハンナス氏のプレゼンテーションによると、武漢での取り組みは、インタラクティブな学習環境でシステムを成長させることによって、AIをより強力なものに変えることを目的としている。

 プレゼン資料は「武漢のAGIに関する試験的取り組みは、都市の産業、商業、人間の相互作用のあらゆる側面でAIを『具現化』することを目指している」と指摘している。

 このシステムは武漢で計画されており、湖北省全体に移行し、中国全土への普及を目指している。

 中国共産党の支配下にある中国政府や関連機関が、これらのAGIにどれだけ支出しているのかを正確に判断するのは難しい。

 ハンナス氏は、2024年と2025年のAI資金計画を詳述した中国政府の文書を入手した。計画には、大規模な生成モデルや脳にヒントを得たいくつかのアプローチへの資金提供が含まれている。

 ハンナス氏によると、中国のこれらの研究への正確な支出額は誰にも分からないという。中国政府の文書で確認した資金項目の数に基づいて同氏は、AGIへの取り組みに対する中国政府の支出の30%から40%がこの新たな手法に充てられている可能性を指摘した。

 強力なAIへのこの新たな手法への中国の関心は新しいものではない。

 高度なAIの開発へ脳からヒントを得たアプローチを追求している2人の技術者はワシントン・タイムズに、2018年に中国当局から2人の会社の20%に当たる3000万ドルで2人をリクルートしたいという申し出を受けたと語った。

 Zアドバンスト・コンピューティング (ZAC)のビジャン・タダヨン、サイード・タダヨン両氏(兄弟)は、中国の注目を集めた画像検出のための強力なアルゴリズムを開発した。

 両氏は、脳に着想を得たアルゴリズムを開発し、それを「認知的に説明可能なAI」と呼んでいる。これは、大規模な統計モデルとは対照的に、概念学習に基づいている。

 両氏によると、この方法は消費電力がはるかに少なく、トレーニングに必要なデータサンプルがはるかに少なく、欧米の輸出規制の対象となる画像処理装置(GPU)サーバーを必要としないという。

 中国の研究者らは2018年、スタートアップ支援プログラム「イノスターズ」のコンペで発表するために両氏の会社をヒューストンに招待した。

 2018年のコンペのウェブサイトによると、このコンペは米国の「中国イノベーション・アライアンス」が主催し、中国政府の科学技術省が支援した。米全土で毎年開催されていたコンペは、新型コロナウイルス大流行の中、2020年に終了していた。

 ヒューストンで開催されたイノスターズのコンペ2018ではZACが優勝し、ビジャン氏は全額出資の中国訪問を獲得した。彼は3つの都市を訪れ、関心のある数十人の中国政府関係者で埋め尽くされた部屋で研究成果を発表した。

 ビジャン氏によると、当局者の1人がZACは未公開会社であることを明らかにした上で、その場でZACに3000万ドルの資金提供を申し出たが、本社を中国に移転する必要があると語ったという。

 イランから逃れて米国に避難したタダヨン兄弟は、米国での生活を捨てるという申し出を拒否した。

 2人は研究が中国軍のために使われるのではないかと疑心暗鬼になったと述べている。中国の軍民融合政策により、企業は軍との協力を余儀なくされる。タダヨン兄弟は中国共産党の目標を支持するつもりはないと述べた。

 サイード氏は、彼らの技術は「非常に汎用的」だと述べた。つまり、共産主義の国である中国に根を下ろした後、製品がどのように使われているかを知ることができないことを恐れていた。

 サイード氏は「私たちが電子商取引や医療などで何かをしていても、中国政府がそれにアクセスできれば、中国国内に出回っているすべてを入手できる。私たちの知らないうちにこれを手に入れて、軍事行動に出ることが可能だ」と述べた。

 しかし、兄弟は軍隊との協力にすべて反対しているわけではない。ZACは米政府と協力しており、米空軍から200万ドル以上を調達している。

 ZACは中国の提案を拒否したが、他の国は拒否しておらず、中国共産党はAGIと超知能を熱心に追求している。理論的には人間の能力を上回ることが可能だ。

 研究者らは、超知能を真剣な学術的探求として議論することにちゅうちょしなくなってきている。

 超人的な知能の構築が必要ないのであれば、他の形態の知能で十分かもしれない。

 ハンナス氏は「AIが本当に強力で恐ろしいものになるために、人間と同等のAIを持つ必要はない。そのような根拠は全くない。ゴキブリは、私にできないことをたくさんできる。しかも、わたしやチャットGPTが利用しているニューロンよりもはるかに少ないニューロンでできる。しかし、高い知能が必要であれば、ニューロンは必要だ」

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