中国系企業が銅鉱山取得へ 公約に反しホワイトハウスは前向き

(2025年8月11日)

2023年6月3日、アリゾナ州マイアミ、フェニックスの東70マイルに位置するネイティブ・アメリカンの聖地、オークフラット・キャンプ場で、レゾリューション・カッパー鉱山のヘッドフレームが見られる。英豪鉱山大手リオ・ティントとBHPの共同子会社であるレゾリューション・カッパー・マイニングは、地中深くから銅を抽出するために岩盤の層を取り除こうとしている。(AP Photo/Ty O’Neil)

By Jeff Mordock – The Washington Times – Wednesday, August 6, 2025

 トランプ大統領は、中国による米国の領土と鉱物資源への支配と戦うことを約束したが、政権はアリゾナ州の連邦所有地を中国系鉱山会社に開放する交渉を進めている。

 この取引により、鉱山大手レゾリューション・コッパーはアリゾナ州スーペリア近郊のトント国立森林公園内にある2200エーカー(約9平方キロ)のオークフラットの管理権を取得し、その見返りに、同社が所有する米国内の私有地を譲渡する。

 レゾリューション・コッパーはその後、オークフラットを巨大な銅鉱山に変える計画で、トランプ政権はこれによって米国の銅需要の最大25%を供給できると主張している。

 しかし、この交渉は国家安全保障上の懸念を引き起こしている。

 レゾリューション・コッパーは、リオティントとBHPの2つの多国籍鉱山企業による合弁会社であり、リオティントの最大株主は、約15%の株式を保有する中国国営企業、中国アルミニウム(CHINALCO)だ。

 だが専門家によると、この取引には抜け穴があり、レゾリューション・コッパーは未精製の銅を海外に送って加工・販売できるという。これにより、中国は米国産の未精製銅40億ポンド(約1800万トン、約1600億ドル相当)を輸入することが可能になる。

 トランプ政権は中国の米国での影響力拡大に対抗する取り組みを続けており、この取引を承認したことは驚くべきことだ。

 リオティントは、この取引が国家安全保障上の懸念を引き起こすとの懸念を否定している。

 広報担当者は、同社は過去に米国で2つの資産を購入しており、どちらの場合も、国家安全保障上の懸念を審査する米外国投資委員会(CFIUS)の審査をクリアしたと主張した。

 また、英国と米国の投資家がリオティントの株式を大量に保有していると指摘した。

 同社の広報担当者ビッキー・ピーシー氏は「リオティントは米国で150年以上事業を展開し、国内で採掘された銅を120年以上にわたって供給してきた。過去2年間、CFIUSはリオティントの米重要鉱物部門への数十億ドル規模の投資を2度審査し、アルミニウムとリチウムに関するこの投資を承認した」と述べ、リオティントの目標は鉱物を国内で加工することだと強調した。

 農務省は先月、中国による米国の農地購入を制限する7項目の計画を発表した。一方でトランプ氏は短編動画投稿アプリTikTok(ティックトック)の米国での買収先を探している。政権はどちらにも国家安全保障上の懸念を指摘している。

 トランプ氏は、ほぼすべての貿易協定で貴金属の調達を要求してきた。銅は電子機器、建設、医療機器などに使用される最も価値の高い重要鉱物の1つだ。米国は現在、需要が精錬速度を上回るペースで急増しているため、銅危機に直面している。

 国際エネルギー機関(IEA)のデータによると、米国は、使用する銅の半分足らずを生産し、生産量は世界5位だ。

 法律事務所「ベケット宗教の自由基金」の上級法律顧問ジョー・デービス氏は、「政府は、鉱物は国家安全保障の問題だと言っている。…しかし、彼らが銅を譲渡しようとしている相手は、事実上、中国政府であり、非常に皮肉な事態になっている」と述べた。デービス氏は、この取引の阻止を求めて訴訟を起こしている米先住民およびキリスト教団体グループの代理人を務めている。

 デービス氏は「彼らは、貴重な米国の銅を中国企業に譲渡し、その企業は、おそらく中国で精製し、私たちに高値で売り戻すことで、中国の懐を肥やすことになる」と述べた。

 この場所はウェスタンアパッチ族にとって神聖な場所であり、この訴訟はこの取引の阻止を求めて起こされた。だが法的措置が交渉の進展を遅らせるには至っていない。

 土地交換は、米林野局が環境影響評価を完了したため、8月19日に実施される予定だ。

 ホワイトハウスは、この合意が、中国を含む他国からの重要鉱物の輸入依存度を軽減すると主張している。中国は、銅を含む貴金属の生産と加工において業界を支配している。

 ホワイトハウスのアンナ・ケリー報道官は、「レゾリューション・コッパー鉱山プロジェクトは、トランプ大統領の『米国を再びエネルギー大国に』というミッションにおいて重要な役割を果たし、完全に稼働するようになれば、米国の銅需要の25%を賄うと期待されている。大統領は、重要な鉱物の生産を急速に拡大しつつ、偉大な米国企業を支援している」と述べた。

 ホワイトハウス当局者は、レゾリューション・コッパーと中国の関係を重視していない。この当局者は、CHINALCOが、この土地の半分以上を保有するリオティントの14%以上の株式を保有しており、残りは個人投資家が保有していると説明。また、BHPは個人投資家が約98%を保有していると述べた。

 当局者はまた、レゾリューション・コッパーがトント国立森林公園の2422エーカー(約10平方キロ)と交換する5459エーカーの自然保護地域を中国に譲渡するとの主張は「完全に虚偽」だと述べた。

 リオティントはウェブサイトで、この鉱山が約3700の直接的・間接的雇用を創出し、60年のプロジェクト期間中にアリゾナ州に最大610億ドルの経済的利益をもたらすとしている。

 また、アリゾナ州が年間最大1億1300万ドルの地方税収を享受できると予測されており、連邦政府は年間2億ドルの追加税収を得られる可能性がある。

 レゾリューション・コッパーは、ここで採掘される銅が中国に輸出されるかどうか、または米国にどれほど戻されるかについて言及していない。

 しかし、ペンシルベニア州立大学で国土安全保障と公共政策を教えるクリストファー・ドラン氏は、オークフラットで採掘される銅のほとんどは、米国に十分な精錬能力がないため、中国に輸出されて精錬する必要があると指摘している。

 ピーシー氏は「当社の目標は、レゾリューション・コッパーの鉱石を国内で精錬することだ。現在、米国で稼働する2つの精錬所の1つであるリオティントのケネコット精錬所を利用するという選択肢を検討している。これにより、米国の製造業とエネルギー需要のための国内銅サプライチェーン(供給網)が強化される」と述べた。

 2020年のアリゾナ大学による調査で、アリゾナ州の銅鉱石のほぼすべてがメキシコに輸出され、そこから中国や他のアジア諸国に輸送されていることが判明した。この調査によると、2019年にアリゾナで採掘された銅の約3500万ドル分がメキシコ経由で中国に送られた。

 ドラン氏は、「鉱物、採掘、抽出に関して米国が持つ設備はかなり貧弱であり、その一部を中国共産党が一部所有する企業に送ることは、私には合理的な判断とは思えない。私にとってこれは国家安全保障上のリスクであり、トランプ政権は自ら過ちへと向かっている」と主張している。

 銅鉱石を掘り出すため、レゾリューション・コッパーは、トンネルを掘り、その後崩落させる「ブロックケービング」という方法を採用する。崩落後、鉱石は破砕施設に運ばれるが、これによって深さ約1000フィート(約300メートル)、直径約2マイル(約3.2キロメートル)のクレーターができ、宗教的・環境的特徴の大部分は破壊される。

 2014年に議会で可決された法律により、森林局は、6月19日に発表した環境影響評価報告書から60日以内に、オークフラットをレゾリューション・コッパー社に譲渡することが義務付けられている。

 レゾリューション・コッパー社は、2014年12月にジョン・マケイン上院議員(共和党、アリゾナ州)率いる議員らが国防予算案にこの取引を付帯させ、議会が承認したため、土地の交換は中止できないと裁判で主張している。

 また、森林局の環境影響評価は「厳格」かつ「独立」であり、交換に反対する部族とも協議を行ったと述べている。

 デービス氏と法律の専門家らは、トランプ政権がこの合意に拘束されることはなく、トランプ氏には阻止する手段があると主張している。トランプ氏は、大統領令によってこの取引を阻止したり、プロジェクトを一時停止したり、さらには議員らと協力して2014年の法律を覆すこともできるという。

 デービス氏は「誰も強制しないし、もちろん、政権が支援できるよう行政と立法が修正する。したがって、今これを実行しなければならないという考えは、まったくの誤りだ」と主張している。

 第1次トランプ政権は、2019年に政権交代を数週間後に控えた時点で、この鉱山に関する最終的な環境評価を発表した。その後、バイデン政権は、先住民との追加協議を行うため文書を撤回し、プロジェクトを一時停止した。トランプ氏がホワイトハウスに戻った後、政権はレゾリューション・コッパーとの合意を優先的に進める方針を表明した。

 2021年、アパッチ・ストロングホールドと名付けられた連合組織が、宗教的理由から譲渡に反対する訴訟を提起した。控訴裁判所は合意を支持し、5月には最高裁が審理請求を却下した。

 アパッチ・ストロングホールドは最高裁に再審請求を提出したが、最高裁が再審を行うことは極めてまれだ。

 サン・カルロス・アパッチ族による訴訟など、鉱山の環境影響評価に異議を唱える訴訟も裁判所で審理中だが、プロジェクトを停止させることはないとみられている。

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