米安保戦略の「勢力圏」戦略 中南米からの中国排除打ち出す

(2025年12月26日)

米海軍提供の写真。2017年4月8日、バージニア州ニューポートニューズから、空母ジェラルド・R・フォードが初の海上試験に就航。同艦は自力推進で各種最新システムを試験する初の航海に臨んだ。(AP通信経由、米海軍2等水兵リッジ・レオニ撮影)

By Vaughn Cockayne – The Washington Times – Monday, December 22, 2025

 第2次トランプ政権の最初の1年が間もなく終わろうとする中、新たな対外政策ドクトリンの輪郭が次第に明らかになってきた。専門家らはこの新政策を19世紀型の「勢力圏」アプローチと呼ぶ。これは、政権がベネズエラや中南米全体に焦点を当てていることに象徴されている。

 この路線が、第2次世界大戦後の大半の時期に米国の力を支えてきた国際的同盟戦略にどの程度の影響を及ぼすものかは、現時点では不明だ。

 しかし、多くの専門家は、政権が公表した2025年「米国家安全保障戦略」について、「勢力圏」アプローチが本格的に動き出している現実を確定づけたという点で一致している。まずこの新安保戦略は、米国が中南米を自国の裏庭と公式に位置づけ、地政学的競争相手、すなわち中国をこの地域から排除する決意を示した。

 安保戦略は、米国が「モンロー主義に対する『トランプ補論』を主張し、実施する」と明記している。これは、欧州に中南米への不介入を求めた19世紀のモンロー大統領の宣言と、同地域で米国が国際警察として行動する権利を主張したセオドア・ルーズベルト大統領の「ルーズベルト補論」の双方を取り入れた表現だ。

 この戦略は、米国の国家安全保障・外交政策関係者の間で議論を呼ぶとともに、トランプ大統領が同盟国を見捨てようとしているとして一部の欧州同盟国の強い反発を招いている。

 国家情報長官室の元北朝鮮担当部長で長年外交官を務めたジョセフ・デトラニ氏は、政権が、ルールに基づく国際秩序の追求よりも、米国の中核的な国益の保護と促進を優先していることを明確にしていると指摘した。

 デトラニ氏は先週、ワシントン・タイムズへの寄稿で、「世界秩序の保証人としての米国に別れを告げることは、多くの同盟国やパートナーにとって容易ではないだろう。今後は自国の防衛と安全保障に、より多くの責任を負うことが求められる」との見方を示した。

 同氏は、欧州や中東の優先度を下げる一方、「西半球」を「米国にとって最優先の安全保障地域」と位置づけ、「国境管理、大規模移民、麻薬取引、国際犯罪、テロリズムを国家安全保障上の主要な脅威とする」点を強調した大胆な戦略を支持した。

 同時にデトラニ氏は、安保戦略が「インド太平洋地域の重要性にも正しく焦点を当てている」とし、「地域の同盟国やパートナーの支持を得ることが、この国家安全保障戦略の重要な要素になる」と強調した。

 一方で、勢力圏ドクトリンへの転換に注目し、グリーンランドやパナマ運河をめぐる米国の動き、カリブ海での大規模な軍備増強を、西半球で米国が新たな勢力圏を構築するための広範な戦略の一環とする見方もある。

 勢力圏という考え方は、帝国主義が拡大し、各国が世界を分割しようとした19世紀に外交の主流となった。だが、第2次世界大戦後は、各国が世界的な自由市場を推進する中で、次第に支持を失った。

 一部専門家は、勢力圏への回帰が西半球に重大な経済的・安全保障上の影響を及ぼす可能性があると警告する。

 ブルッキングス研究所の上級研究員、バンダ・フェルバブブラウン氏は、「この地域の国々に対し、米国が望んだことを一方的に押し付けられると考えている点は衝撃的だ。モンロー主義は中南米では不人気で、米帝国主義と受け止められてきた。米国は優勢だったが、同時に極めて不人気だった時代への回帰だ」と指摘した。

「トランプ補論」

 ホワイトハウスはこれを「モンロー主義に対するトランプ補論」と呼ぶ。この構想の一端は、ベネズエラ沖の海域に見ることができる。そこには、世界最大の空母ジェラルド・フォードを含む少なくとも12隻の主要な米海軍艦艇が展開している。

 専門家らは、こうした増強は中南米を再び米国の勢力圏に位置づける試みであり、米国の利益を守るため、西半球でさらなる軍事行動が行われる前兆となる可能性があるとみている。

 戦略国際問題研究所(CSIS)の上級研究員、エリック・ファーンズワース氏は、「これによって、アルゼンチンの港湾、宇宙打ち上げ能力、深宇宙追跡施設などを巡る中国の軍事・情報活動がこの地域から排除される可能性がある。非軍事的手段が機能しなければ、武力行使も辞さない構えで、そのための選択肢を確保するよう部隊を配置している」と述べた。

 米国は、世界的な軍事プレゼンスを縮小しようとしている。欧州では、トランプ氏が北大西洋条約機構(NATO)加盟国に防衛費増額を求めるとともに、ウクライナ和平交渉を巡るロシアの要求に対し、前例のないほど前向きな姿勢を示している。

 安保戦略はまた、欧州に対し自らの防衛を担い、ロシアとの「戦略的安定」を確立するよう求めている。

 この方針転換を支持する立場からは、トランプ氏の欧州批判は当然との声が上がっている。

 シンクタンク「安全保障政策センター」所長で、国家安全保障会議の元首席補佐官のフレッド・フライツ氏は今月、保守系メディア「ニュースマックス」への寄稿で、「トランプ大統領の新たな国家安全保障戦略は、欧州を救うための厳しい愛情にとどまらず、欧州自由主義エリートの失敗した政策に対する痛烈な告発だ」と記した。

 さらに今月の報道によれば、国防総省はアフリカ軍、中央軍、欧州軍を格下げし、新組織の下に置く準備を進めているという。

 西半球の安全保障を担う北方軍と南方軍は、「南北アメリカ軍」と呼ばれる単一の部隊に統合される見通しだ。

 一方、中南米での米軍増強は、「麻薬テロリスト」(米政府)への対処をさらに重視していることを示している。

 トランプ氏と側近らは、ニコラス・マドゥロ大統領が率いるベネズエラ政府をテロ組織と位置づけ、致死性の高い合成麻薬フェンタニルの米国流入に加担していると主張している。米国はベネズエラの小型船舶を標的とした空爆を数十回実施し、少なくとも99人が死亡した。政権は、これらの船舶が麻薬を運搬していたとしている。

 一部の専門家は、麻薬取り締まりを最優先課題とする姿勢と、モンロー主義へのトランプ補論が結び付くことで、新たな「終わりなき戦争」を生み出す恐れがあると警告する。

 フェルバブブラウン氏は、「トランプ政権が定義する麻薬対策は、終わりのない戦争だ。『麻薬との戦争』という比喩が、出口のない文字通りの戦争になっている。誰が正当な軍事目標なのかが不明確なままであり、その目的のために米軍を無期限に使用することになりかねない」と指摘した。

中国排除

 安保戦略は、中国を明確に念頭に置き、西半球での「敵対的な外国勢力による侵入や重要資産の保有」を拒否し、「同地域でインフラを建設する外国企業を排除するため、あらゆる努力を行う」としている。

 ホワイトハウスが中南米の指導者らに中国との取引停止を説得できるかどうかについては、懐疑的な見方も多い。

 シンクタンク「クインシー研究所」グローバル・サウス・プログラムの責任者サラン・シドア氏は、「中国はペルー、ブラジル、チリ、限定的だがコロンビア、さらにアルゼンチンにも進出している。インフラ建設では、中国は安価かつ大規模に実行できるが、われわれはその能力を失ってしまっている」と指摘している。

 シドア氏は、仮に米政府や民間企業が中国と競合できたとしても、中南米諸国はリスク分散のため、パートナーの多様化を望んでいると強調した。

 さらに、中国はエネルギーインフラ、港湾、鉱業、製造業への投資を通じて、膨大な利用可能な情報、政治的影響力、戦略的に重要な港湾、レアアース(希土類)へのアクセスを獲得しており、容易に手放すとは考えにくい。

 中国排除は、ホワイトハウスの国内政策、すなわち不法移民抑制にも逆効果となる可能性がある。中国が中南米から締め出され、インフラ投資が枯渇すれば、先進国への移民が増加する恐れがある。

 クインシー研究所のホルヘ・エイネ氏は、「人々が米国に移住する理由は、中南米の成長率が非常に低いからだ。この地域を低開発のままにすれば、国境に向かう人は減るどころか増える。各国の成長と発展を支え、国民に機会を提供すべきだ」と主張した。

 それでもトランプ政権当局者らは、西半球を掌握しなければ、米国が世界大国としての地位を維持することはできないと主張する。

 英王立国際問題研究所(チャタムハウス)の中南米担当上級研究員、クリストファー・サバティーニ氏は、「これは米国が自国周辺地域を支配するという話だ。自国の地域を実際に支配できなければ、世界大国ではあり得ない」と語った。

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