欧米、北極の安全保障強化へ 極寒に耐えるハイテク兵器の開発が鍵

2026年1月17日土曜日、グリーンランドのヌークに停泊中のデンマーク海軍軍艦HDMSクヌート・ラスムセン号の船首ハッチから、デンマーク人兵士が降り立つ。(AP通信/エフゲニー・マロレツカ撮影)
By John T. Seward – The Washington Times – Tuesday, February 3, 2026
米国は、北極圏への戦力投射について、北欧の同盟国から学ぶことが多くある。極寒が米軍のハイテク装備に深刻な影響を及ぼすからだ。
米国は、デンマーク、同国領グリーンランドと安全保障協定の詰めの協議を進めている。北極圏へのロシアと中国の影響力拡大に対抗するためだ。
トランプ米大統領は1月31日夜、大統領専用機内で記者団に対し「かなり合意できている。彼らはわれわれにやってほしいと考えている。国家安全保障の観点から極めて重要な交渉だ」と語った。
合意が成立すれば、米国は、この氷に覆われた島の防衛で、重要な役割を担うことになるが、極寒の環境下で無人機など米軍の主要装備の一部は制約を受けたり、使用不能となる可能性がある。
シンクタンク、欧州政策分析センター(CEPA)とストックホルム・フリー・ワールド・フォーラムの研究員で軍事アナリストのミナ・アランダー氏は「技術装備はすぐに凍り付く」と述べた。
同氏は最近の北部での軍備増強に関するブリーフィングで、極寒のもとで発生する特有の問題があると指摘。無人システムであっても機能するのは難しくなると語った。
「バッテリー寿命は大幅に短くなる。特別な装備がなければエンジンは凍結する可能性があり、燃料さえ凍ることがある」
夜が長いため電力需要は増加する。バッテリーは軍のあらゆるハイテク装備で不可欠であり、それが北極圏では弱点となる。
CEPAの研究員フェデリコ・ボルサリ氏は「これは、北極圏で使用できる無人機を開発する上で、極めて重要な技術的課題であり、開発者がこの課題の答えを出し、対処しなければならない」と述べた。
「著しく低い気温の下でバッテリー容量が数分で100%から20%程度まで低下した。しかもこれはドイツでの訓練での話で、北極圏ではない。これらの地域でどれほど急速に電力が失われるか想像できるだろう」
無人機は、ウクライナの厳寒の戦場を含め戦争の様相を一変させ、その能力は実証済みだが、グリーンランドの条件はさらに過酷であり、発揮できる能力は制限される。北極圏で装備をうまく機能させるには、新たな技術開発が必要となる。
モーター、プロペラ、センサーが露出した無人機は着氷の影響を受けやすい。
北大西洋条約機構(NATO)や同盟国は北極圏での脅威探知に無人システムを活用することを目指しているが、氷点下で発生する物理的な課題は克服が難しいと専門家は指摘する。
欧米各国は、解決策を見いだすために注力している。
デンマークのメッテ・フレデリクセン首相は1月28日、パリで欧州首脳に対し「私たちが知っていた世界秩序、すなわち第2次世界大戦終結から80年にわたり必死で守ってきた秩序は終わった。元に戻るとは思わない」と厳しい認識を示した。
フレデリクセン氏はフランスのパリ政治学院訪問中、グリーンランドに「長期間」NATOの大規模な軍事プレゼンスを維持することが必要だと改めて主張。トランプ氏との関係が緊迫していることに触れた。トランプ氏は、米国によるグリーンランド掌握を主張していたが、その後、後退した。
ルビオ米国務長官は先週、上院外交委員会で、「前向きな結果を得られると思う」と語り、交渉が進展しているとの見方を示した。
グリーンランド自治政府のイェンスフレデリク・ニールセン首相は、パリでフレデリクセン氏と共に発言し、世界的な安全保障上の圧力によってグリーンランドへの見方が変わったと指摘した。
ニールセン氏は、「ここ数年でグリーンランドに対する見方は変わった。いろいろなことがあり、すべきことはさまざまあるが、一つだけ言えることがあるとすれば、それは、この地域の監視と安全保障を強化する必要があるということだ」と語った。
ロシアの脅威が強まっていることを認めた格好だ。
先月、公開されたハドソン研究所の報告書によると、米本土が直接攻撃を受ける可能性すらあるという。上級研究員のリーゼロッテ・オドガード氏は、ロシアの原子力潜水艦の追跡は不十分であり、米国を攻撃可能な圏内へ入ってくる可能性があると指摘した。
「グリーンランド東部沿岸とバレンツ海での潜水艦探知・追跡能力は依然として不十分だ」
さらに「ロシアのボレイ級(弾道ミサイル搭載原子力潜水艦)は、RSM56『ブラバ』大陸間弾道ミサイルを搭載でき、北極の氷の下を潜航可能だ。クイーンビクトリア海などの海域に入れば、極軌道でミサイルを発射することで北米までの飛行時間を最小化し、密集したレーダー網を回避できる」と警告した。
ワシントン・タイムズがワシントンで先月開かれた水上艦シンポジウムを取材し報じたように、NATO諸国はこの問題に対処するため無人システム取得への動きを加速させている。
スウェーデン軍の在米・カナダ・メキシコ海軍武官アンデシュ・オーケルマルク大佐は、同国軍は、無人水中航走体(UUV)、特に潜水艦型無人艦のようなものを開発していることを明らかにした。これは、「長時間任務」を想定したもので、北極の海氷下で潜水艦など敵勢力を監視することを目的としたものだ。
グリーンランドを巡る交渉が急がれているのは、トランプ氏が繰り返し強調してきたように、作戦上の厳しい現実に直面しているからだ。すなわち、米国とNATOが北極防衛を軽視してきた結果、大西洋北部への侵入路となり得る大きな空白を生んだということだ。
NATOや北極での戦闘に詳しい専門家は、ウクライナの戦場で実証された防衛技術はグリーンランドには適していないと指摘する。
ノルウェー、デンマーク、スウェーデン、フィンランドは、極寒でも機能することが証明された装備、戦術、技法の経験を持つ。
これらの国々は昨年、フィンランドの首都ヘルシンキで、「小型無人機の北欧共同調達を開始」し、ウクライナとの協力を強化する協定に署名した。オドガード氏は、これらが「NATOの北極防衛」の重要な基盤となると述べた。
それでも、NATOや外部の防衛関連企業は、近代技術の導入で困難に直面している。
北極圏の高緯度地域で想定されるNATOの任務には、NATO基準を満たす設計や装備が必要となる。そうした装備は存在するものの、この地域に適した利用可能な技術の大半は高高度監視用であり、地上戦や海上戦向けのものではない。
CEPAの上級研究員のゴードン・デービス氏は「NATOは標準化協定を通じてデータやネットワーク統合の枠組みを提供しているが、実際に順守するかどうかは各国次第だ」と指摘した。
米陸軍退役少将で、NATOでの勤務経験を持つデービス氏は、参加しない国もあることを認めた上で、「必要なのは履行だけでなく、そうした基準が実際に尊重され、実施されているかどうかを確認することもおそらく必要だ」と語った。
CEPAは昨年12月に公表した報告書で、NATO諸国の軍が新技術の導入を急ぐ一方で、「多くの同盟国は北極圏特有の要件を、専用の設計としてでなく二次的な改修として扱っている」と指摘した。北極圏の環境に合わせてシステムを設計するのではなく、より温暖な地域向けに作られた装備に、加熱装置や断熱材を追加する対応にとどまっているという。
ボルサリ氏とデービス氏によると、ノルウェーは最近、無人機メーカーのスカイディオと940万ドルの契約を結び、クワッドコプター「X10D」を導入した。この機体は、米軍も購入している。メーカーによれば、同機は華氏マイナス4度(セ氏零下約20度)まで運用可能な「寒冷地認証」を受けている。
しかし、北極圏の平均的な冬の気温は華氏マイナス20度(セ氏零下約29度)を大きく下回る。
昨年10月に署名されたこの無人機開発契約は、一部の同盟国がその緊急性を理解していることを示す。しかし、フレデリクセン氏やニールセン氏が欧州各地を回って支持を求めているものの、ロシアとの格差は歴然だ。西側同盟国が議論に取り掛かる中、ロシアはすでに確立された北極戦略に基づいて、実戦経験を踏まえた無人機技術を開発している。
フレデリクセン氏は、「今、再軍備することが最も重要だ。米国はわれわれに依存している。やるべきことを全て実行できれば、数年で全く違う状況になるだろう。すべきことは多くある」と述べた。

