中国の世界戦略と経済を脅かすイラン攻撃

ヴァンター社が提供したこの衛星画像は、2026年3月3日(火)、イラン・テヘランで空爆を受けた後のイスラム革命裁判所を示している。(衛星画像 2026 Vantor via AP)
By Bill Gertz – The Washington Times Tuesday, March 3, 2026
トランプ政権によるイランへの軍事作戦は、表向きは核開発計画復活の阻止と、地域および世界のテロの脅威排除を目的としている。しかし米国の専門家らによれば、そこには大きな「副次的利益」が含まれている。中国の石油依存型経済を揺さぶり、中国が進める世界規模の反米戦略に対抗することだ。
2月28日に始まった攻撃により、イランのイスラム体制は著しく弱体化している。もし現体制が最終的に崩壊し、親欧米政権に取って代わられた場合、中国の経済を支えるエネルギー確保能力に深刻な影響を及ぼす可能性がある。
さらに重要なのは、米国の敵対国の間で反米包囲網を広げようとする中国の動きへの影響だ。47年間続いたイラン体制が崩壊の危機に瀕していることで、この戦略が脅かされている。
中国共産党幹部らは近年、米国主導の国際秩序に反対すると公言してきた。中国は数々の世界的な計画や政策を通じて、自国が主導する共産主義体制の下での新たな世界覇権秩序を追求している。
トランプ大統領は、中国への影響を含めた「エピックフューリー(壮絶な怒り)作戦」の戦略的意義について、まだ公式なコメントを出していない。トランプ氏は来月の訪中を予定しているが、イランへの攻撃を受けて中国側が招待を撤回するかどうかは不透明だ。
マイク・ポンペオ前国務長官は、トランプ氏がイランに立ち向かうことは、中東における中国の主要な拠点を直接叩くことを意味すると指摘した。
ポンペオ氏はワシントン・タイムズに「もしこの体制が崩壊し、イラン国民の意思を真に反映する政府に道を譲ることになれば、中国は経済の原動力となってきた安価な原油供給に別れを告げることになる。それだけでなく、中国はこの地域で力を誇示し、米国の利益を損なうための重要な足場を失うことになるだろう」と語った。
中国は国内の石油資源に乏しく、経済を回すためのエネルギーを海外からの輸入に大きく依存している。
イラン産原油の約90%は安値で中国に売却されており、米国の制裁を逃れるための「幽霊艦隊」によって輸送されている。
1月には米軍の急襲によってベネズエラの独裁者ニコラス・マドゥロ氏が拘束され、中国の主要な石油供給源が脅かされた。イラン体制までもが崩壊すれば、中国はさらに大規模な供給源を失うことになる。
2021年にイランと包括的戦略パートナーシップを締結しているにもかかわらず、今のところ米イスラエル連合軍の作戦に対する中国の反応は外交的な抗議にとどまっている。
締結以降、中国による石油購入額は計1400億ドルに上り、昨年のイスラエルとの12日間の戦争で多大な損失を被ったイラン体制を支えるのに十分な額となっている。
戦略的パートナーシップによって中国は、25年間で400億ドルをイランのエネルギー、銀行、通信、インフラ部門に投資することになっていた。
中国専門家のリチャード・バック氏は、米イスラエルによる対イラン攻撃は、中国を封じ込めるためのグランド戦略の一環だと指摘する。石油供給源を断つことは、今回のイラン作戦や先行したベネズエラでの取り組みの中核をなしているという見方だ。
非営利団体「米インテリジェンス評議会」の理事を務めるバック氏は、「イラン体制を無力化することには二つの目的がある。第一に、中国が石油を買い付けるための物理的なコストを増大させることだ。中国は制裁破りによって格安で石油を手に入れ、イランとの関係を固めてきた」と述べた。
第二に、軍事作戦によってイラン海軍を事実上壊滅させることで、将来の紛争においてイランが中国を支援するのを阻止することだ。西側諸国にとってホルムズ海峡へのアクセスを確保することも同様に重要である。
バック氏は「戦機を逃さないことは戦争の原則であり、トランプ大統領はその達人だ。今やらなければ、中国の布陣にこれほどの戦略的打撃を与える機会は二度と訪れないかもしれないと大統領は認識している」と述べた。
中国の国営新華社通信は、イランとの核交渉が進められている中で行われた今回の攻撃を非難した。
新華社は「ワシントンが平和と服従、外交と強圧を混同し続けるなら、それは破滅を招く。中東をさらに炎上させると同時に、自らがかつて擁護した世界の枠組みを自ら解体することになるだろう」と主張した。
国防総省によると、これまでに爆弾やミサイルで1000カ所以上の目標を攻撃しており、攻撃は今後数週間にわたって続く見通しだ。
ピート・ヘグセス国防長官は2日、記者団に対し、この紛争はイランの政権交代を目的としたものではないと述べた。
しかし、2月28日に行われたイスラエルによる冒頭の斬首攻撃により、現体制の最高指導者と50人以上の幹部が死亡している。
ポンペオ氏は、現政権が米国の並外れた軍事力と必要に応じた武力行使の意思を示していることは、台湾への軍事行動を検討している中国指導部にとって見逃せないメッセージになると述べた。
ハドソン研究所の研究員で、中東での中国の影響を研究するジネブ・リブア氏は、イラン攻撃には、中国への戦略的影響というもっと大きな意味があると指摘する。
「イランを直接叩くことで、トランプ政権は、意図的か結果的かは別として、中国の地域戦略の柱を解体しつつある」
中国石油天然ガス集団(CNPC)経済技術研究院の盧汝泉院長は国営メディアに対し、中東からの石油封鎖が中国の全体的な供給や輸入の安定を大きく乱す可能性は低いと語った。
盧氏は中国共産党機関紙・人民日報系の環球時報に「中国が進めてきた供給源の多角化政策により、大西洋周辺やアフリカの既存パートナーを頼ることができる。ブラジル、ナイジェリア、アンゴラといった供給国は、歴史的に中国の輸入の重要な供給源となっており、中東依存に対する地理的な対抗軸となっている」と語った。
中国は2021年にイランと包括的戦略パートナーシップを結び、ミサイルや爆撃の第一弾が放たれる直前まで、イランの軍事力強化を支援していた。
先週の中東からの報道では、イランが中国製の超音速対艦巡航ミサイルを購入する契約の最終段階にあったことが明らかになっている。これは、現在この海域に集結している米空母や軍艦に対抗するためのものだ。
また、中国は最近、イランに1000トン以上の過塩素酸ナトリウムを供給した。これにより、大幅に減少したイランの弾道ミサイルの約3000発分の推進剤を製造することが可能になる。
中国は、通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)や中興通訊(ZTE)を通じて、イランに対して強い支配力を維持している。両社はイランの通信インフラに監視能力を提供するために1億ドル以上の支払いを受けてきた。
米当局者によれば、イランが大規模な抗議デモの最中にインターネットを遮断できたのはこれらのシステムのおかげであり、その結果、数万人もの体制反対派が命を落としたという。
中国はまた、天地偉業技術(ティアンディ・テクノロジーズ)や杭州海康威視数字技術(ハイクビジョン)といった中国企業の人工知能(AI)顔認識カメラのほか、ディープパケットインスペクション(DPI、通信の内容を解析する技術)ツールや中央集中型の交通管理システムも供給している。
リブア氏は「市民がオープンなインターネットへアクセスすることを遮断するイランの『国家情報ネットワーク』(国家が運営する国内イントラネット)は、中国の検閲システム『グレートファイアウォール』をモデルにしており、中国の技術支援によって構築されたものだ」と指摘した。
さらに中国は、2023年末から紅海で商船への攻撃を開始したイラン支援下のイエメンの武装組織フーシ派を通じて、米国に負担を強いてきた。
パレスチナのイスラム組織ハマスを支援するためのこれらの攻撃により、紅海のコンテナ交通量は90%減少し、推定1兆ドルの通商に支障をきたした。
中国は、イランへの影響力を行使してフーシ派の攻撃を止めようとはせず、イエメンの反政府勢力への米軍による攻撃にも参加しなかった。その結果、米軍の弾薬や迎撃ミサイルは消耗していった。
中国旗を掲げた船舶はこの危険海域を問題なく通過しており、中国はフーシ派の攻撃を非難せず、船舶を保護するために周辺で活動する多国籍軍にも部隊を派遣していない。
紅海の商船護衛に費やされる資金は、米国の潜水艦建造や太平洋での軍事力強化、台湾防衛に必要な予算を削ることになる。
また、中東地域への空母や軍艦の展開は、西太平洋での米軍の抑止力を低下させる。
中国にとって、イランと(イランの武器と情報の支援を受ける)代理勢力は、米軍を弱体化させ、台湾への攻撃を思いとどまらせる抑止力を削ぐための要素として機能している。
イランに対する軍事作戦が現体制の無力化に成功すれば、この地域に空母や軍艦、軍用機を派遣し続ける必要性は減るだろう。
ジョージタウン大学の研究員でシンクタンク外交評議会にも所属するラッシュ・ドーシ氏は、中国が長年、アジア以外の地域に米国を縛り付けてきたと指摘する。
「かつて中国は、米国のイラク侵攻と中国の世界貿易機関(WTO)加盟により、米国が脇道に逸れている間に自国の発展に集中できる『20年間の戦略的好機』が生まれたと述べていた。イラン紛争がどのような結果になるか判断するのは時期尚早だが、中国の分析家は、これが米国を再び中東地域に引きずり込み、アジアから遠ざけることを期待している」
ポンペオ氏は、成功の鍵は「作戦を最後までやり遂げること」であり、現体制の残党を残すような妥協を避けることだと述べた。
中途半端に終われば、作戦の戦略的目的を損なうことになり、「米国には仕事をやり遂げる力がないというメッセージを敵対国に送ることになる」
イランと中国がこの地域でもたらす脅威を軽減できれば、トランプ政権は、多くの専門家が「現代における最大の対決」と見なす問題、すなわち今後数年以内に中国が台湾を吸収しようとする計画に集中できるようになる。
トランプ政権1期目の国務省で中国政策を担当していたマイルズ・ユー氏は、イランは10年以上にわたって中国の中東戦略の要の役割を果たしてきたと述べた。多額の投資を行い、中国主導の機関にイランを組み込み、イランによる地域的な攻勢を利用して米国の注意をインド太平洋から逸らさせてきたという。
ユー氏は「米イスラエルによる連携攻撃がイランの軍事・核能力を無力化したことで、その賭けは打ち砕かれた。中国の反米同盟の脆弱さが露呈し、かつての中核だったイラン戦略は崩壊かそれに近い致命的な弱体化を免れない」と語った。
イランや中国の支配・影響力がない新たな中東秩序が構築されれば、より少ない米軍部隊で管理が可能となり、太平洋へのシフトが現実味を帯びる。
イラン政府が完全に崩壊すれば、世界の安全保障の焦点を米本土守備へと戻し、将来の中国との紛争の脅威に対抗しようとする現政権の政策転換にとって、最大の障害が取り除かれることになる。
イスラム体制の終焉は、イランから地域全体、さらにはその先へと影響力を広げようとする中国の試みをくじき、太平洋地域で増大する危険に戦略的な焦点を当てることを可能にする。
専門家らによれば、一つの解決策は、米国がベネズエラでの手法にならい、正当な移行政府を樹立しつつ、イランにおける神権的なテロ支援体制を終わらせるために国際的な支持を糾合することだ。
もし生き残りを許せば、聖職者支配下のイランは中国に対し、太平洋での紛争抑止に必要な米軍の主力を中東に縛り付けるための「第二の戦線」を提供し続けることになるだろう。
イラン紛争における真の争点は中国だ。リブア氏は「イラン・イスラム共和国を方程式から排除すれば、中国は台湾有事に備えた駒を失うことになる。トランプ氏による攻撃は、太平洋への道はイランを通っているということを理解した最初の一手だ」と語った。