ICBMの複数弾頭化を提言-政府監査院 新型ミサイル配備遅延受け

(2025年9月12日)

2020年9月22日、米モンタナ州グレートフォールズのマームストローム空軍基地近くの発射施設で行われた電子発射ミヌートマン模擬試験で、大陸間弾道ミサイルのスペーサーを準備する第341ミサイル整備飛行隊技師のジャクソン・ライゴン1等空佐。(トリスタン・デイ/米空軍 via AP)

By Bill Gertz – The Washington Times – Thursday, September 11, 2025

 米軍は、問題を抱える大陸間弾道ミサイル(ICBM)「センチネル」が配備されるまでの間、老朽化したICBM「ミニットマン3」に複数の核弾頭を追加し、抑止力としての火力を増強する計画を立てていることが、議会の政府監査院(GAO)が10日に公表した調査報告書で明らかになった。

 空軍は機密報告で、老朽化し、維持が困難なミニットマン3から新型のセンチネルへの移行問題を早期解決するよう求められており、42ページに及ぶGAOの報告書は、その非機密版に当たる。

 報告書は「ミサイル近代化期間中も、米軍は中国、ロシア、北朝鮮の脅威に対する核抑止力を維持できる」と指摘。米戦略軍はGAOに対し、空軍が「日常的に」戦略的抑止要件を満たしていると説明した。

 ただしGAOは、ミニットマン3に多弾頭独立誘導再突入体(MIRV)を追加すれば「センチネルの配備の遅れによる戦力移行中のリスク軽減に寄与する」と指摘した。

 空軍地球規模攻撃軍団の2020年移行・配備戦略には、センチネルへの移行過程で400基のミニットマン3のすべてまたは一部にMIRVを再装備する選択肢が含まれていた。

 現行のミニットマン3は単弾頭だが、最大3つの弾頭を搭載可能だ。

 報告書によれば、追加弾頭の装備には米国の核政策変更が必要となる。

 報告書は「作戦の複雑さと仕様変更の実施に必要な追加兵站業務量から、地球規模攻撃軍団当局者は再MIRV化決定の実施に可能な限り長い準備期間を望むと強調した」と記している。

 再MIRV化計画の詳細は機密扱いとされている。

 国防総省の2022年核体制見直し(NPR)報告は、ICBMへの複数弾頭搭載能力を保持するが、今後も単一弾頭方式を採用し「敵の先制攻撃誘因を低減」するとしている。

 中国とロシアの核ミサイルはいずれもMIRVを搭載している。中国のICBMの一部は3発の弾頭を備え、ロシアのICBMは最大10発まで装備可能だ。

 GAOは空軍に6項目の勧告を提出しており、その中で「ICBMの再MIRV化決定に伴う人員・物資への影響を、総合的な移行リスク管理計画の一環として具体的に検討すること」を求めている。

 報告には、近代化に伴うリスク管理計画を空軍が策定していないと批判する内容が盛り込まれている。リスク管理計画は、旧式ICBMが全数更新されるまでの間、新旧ICBMを併用する「無数のリスクを特定、評価、対応する」ためのものだ。

 空軍計画では、新型ICBMの最初の配備地をワイオミング州F.E.ウォーレン空軍基地と定めている。

 空軍は、センチネル試験施設の建設も実施していない。この施設は、配備予定のミサイルを警護する任務を負う警備部隊の訓練に必要となる。

 国防総省の戦略核近代化計画はこれまでも失敗してきた。計画は、ワイオミング州、モンタナ州、ノースダコタ州の3基地に配備されている単弾頭ミニットマン3を更新するためのものだが、国防総省は苦戦している。このミサイルは1970年に配備が開始され、当初の更新予定から40年が経過している。

 報告書によれば、国防総省は代替となるセンチネルの配備が「数年遅れる」と見積もっており、費用は約1400億ドルと試算されている。

 空軍は1月、議会に対し、センチネル計画が法定コスト上限を超過したため、計画の見直しと中止の可能性が生じていると通知した。

 報告書によれば、センチネルのコストは37%増加し、プログラムの総費用見積もりはさらに大幅にそれを上回る見込みだという。

 国防総省は7月、センチネル計画の継続を認定し、空軍に対し計画の再構築を命じた。

 報告書によると、コスト増加の原因として国防総省は「非現実的な納入スケジュール」「非効率なエンジニアリング」「不完全な基本システム設計」「衰退したICBM産業基盤」を挙げている。

 当初計画では、400基のミニットマン3を2030年まで全数運用し、2036年までに全廃する予定だった。

報告書によれば、センチネルの配備の遅延により、空軍はミニットマン3を2050年まで配備を継続することを検討しているという。

 報告書は「センチネルの遅延により、空軍は老朽化したミニットマン3を計画より長く運用せざるを得ない。場合によっては、大幅な延長を余儀なくされる」と指摘し、部品の不足が2030年以降の継続的な飛行試験にリスクをもたらすと指摘している。

 その他には、空軍に対しミニットマン3からセンチネルへの移行に伴うリスク管理計画の策定、センチネル警備部隊のための試験施設の建設を求めている。

 2030年以降のミニットマン3に関する試験発射計画と維持への総合的な取り組みも空軍に求められている。

 GAOのこの報告書は、7月に発表された米戦略核兵器の専門家2人の報告を受けて公表された。この報告は、衰えつつある米国の核抑止力を強化する短期的な手段として、ミニットマン3にMIRVを搭載するよう提言している。

 報告書のタイトルは「適応型抑止と低コスト核兵器搭載」で、中国とロシアが核戦力を急速に増強する中、米国もミサイル部隊への弾頭追加を急ぐ必要があると主張している。著者である元国防総省核戦略家マーク・シュナイダー、戦略兵器専門家キース・ペイン両氏は、ともに全米公共政策研究所に所属する。

 報告書は、地上配備型ICBMミニットマン3、400基と海軍の潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)に対し、複数弾頭化を実施するよう提言している。

 「現時点では、核搭載量の増強こそが、米国が同盟国に対する大規模な侵略を含む大国間紛争を抑止するため、短期的に抑止力を調整する上で必要な戦力規模と柔軟性を適切に強化できる唯一の方法である」と報告書は指摘する。

 ロシア、中国、北朝鮮による場当たり的あるいは協調的な侵略の可能性を考慮すれば、既存ミサイルへの弾頭の追加は「緊急の課題」だ。

 トライデント潜水艦ミサイルの複数弾頭化により、戦力は約960発から1626発に増加する。ミニットマン3では、弾頭数は400発から約1000発となる。

 「さらに、爆撃機搭載兵器も数百発あり、弾頭の追加によりある程度増強可能だ」と報告書は指摘している。

 弾頭追加の費用は、輸送と弾頭設置に限定され、それほど多くはなく、数年間で約1億ドルと見積もられている。

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