宇宙にデータセンター? AI活用拡大で現実味

(2026年4月27日)
エネルギーを大量に消費するデータセンターは、米国経済の基盤となりつつあり、信頼性の高い電力供給と効率的なインフラ整備が、国際競争力にとって極めて重要となっている。(写真:マット・ガッシュ Shutterstock.com)

エネルギーを大量に消費するデータセンターは、米国経済の基盤となりつつあり、信頼性の高い電力供給と効率的なインフラ整備が、国際競争力にとって極めて重要となっている。(写真:マット・ガッシュ Shutterstock.com)

By Ben Wolfgang – The Washington Times – Friday, April 24, 2026

 【コロラドスプリングズ(米コロラド州)】宇宙、さらには月面に設置されるデータセンターが、米国の国家安全保障にとって極めて重要な存在になる可能性がある。

 ほんの数年前まで、こうした主張はSFの域を出ないようにも聞こえた。しかし軍関係者や防衛企業の幹部らは、地上で起きているさまざまな要因、特に草の根レベルの政治的反発が、現在の人工知能(AI)モデルや先端技術を支える巨大データセンターの新設を大幅に遅らせる可能性があるとみている。

 そうなれば国家安全保障に直ちに、深刻な影響を及ぼしうる。軍の特定の任務に必要なデータセンターを設置できない場合、その都市や州から、国防総省が重要な作戦の一部を移転せざるを得なくなる可能性もある。

 民間と軍の双方で、米国でのデータセンター需要は今後数年で急増すると見込まれている。ゴールドマン・サックスの最近の調査によると、地上のデータセンターの電力需要に対応するため、米国は最大7200億ドルを投じる必要が出てくる可能性がある。また不動産投資会社ハインズの分析では、2030年までに予想されるデータセンター拡張を支えるには、マンハッタンの約3倍の面積が必要になるとされる。

 こうした新たな現実を受け、一部の企業は地球外に目を向け、データへの依存を強める21世紀の米国の生活様式と軍事を支えるためのデータセンターや関連設備の設置場所として宇宙を検討し始めている。

 宇宙向けデータセンターやサーバーの開発を進めるソフィア・スペースの共同創業者兼最高経営責任者(CEO)ロブ・デミロ氏は「地上のデータセンターへの制約は強まっている」と語る。

 デミロ氏は、地上型データセンターが長期的に継続できなくなる可能性を指摘、その理由を数多く挙げた。

 同氏は4月24日のワシントン・タイムズのポッドキャスト「スレットステータス」で、「地域経済に負担となる。エネルギー消費、水消費の面でも重荷となる。それは住民の水道料金や電気料金に影響する。大量の熱を発生し、それが周辺環境に放出される。土地の使用権や不動産の許認可、更新といった問題もある」と述べた。

 さらに同氏は、同地で開かれたスペースシンポジウムでのインタビューで「宇宙にはそうした問題が一切ない」と指摘した。

 軌道上で巨大データセンターを運用できるようになるには、なお数年を要する可能性がある。月面に完全なデータセンターを構築するには、さらに長い時間がかかるとみられる。ただし、こういった構想がかつてほど突飛でなくなっていることを示す兆候も出てきている。

 昨年12月には、半導体大手エヌビディアの支援を受けるスタートアップ企業スタークラウドが、宇宙から初めてAIモデルの学習を行ったと報じられた。軌道上に打ち上げた衛星に搭載したエヌビディア製チップを用いたもので、宇宙でのデータセンター運用の実証例となる可能性がある。

 ただし、宇宙で大規模データセンターを稼働させるには大きな課題もある。環境が大きく異なる中での冷却方法や、人間の技術者が容易にアクセスできない場所での保守などが問題となる。

 また専門家からは、宇宙配備型データセンターが衛星破壊兵器を用いる敵対勢力にとって格好の標的になり得ると警告する声も出ている。

 宇宙でのデータセンター事業を拡大するには、米宇宙軍などがこれら資産を敵の攻撃から防護できるかどうかが鍵となる可能性が高い。

 近年、衛星の打ち上げコストは大幅に低下したが、それでも企業がデータセンターを迅速かつ低コストで、しかも大規模に軌道上へ展開することは、財務面・物流面の両方で困難が伴う可能性がある。

 スペースXのCEO、イーロン・マスク氏は宇宙データセンターの強力な推進論者だが、同社の新規株式公開(IPO)関連資料では、この構想の実現性への疑問も示されているとロイター通信が報じた。

 同社は資料の中で「軌道上AI計算や軌道、月面、惑星間の産業化を目指す取り組みは初期段階にあり、高度な技術的複雑性と未実証の技術を伴い、商業的に成立しない可能性がある」としている

■米国の国家安全保障

 米国の国家安全保障にとって、複数の危険な要因が浮上している。まず、国内でデータセンターに対する政治的反発が強まっている点がある。

 AI分野での主導権確保や技術覇権を強く掲げるトランプ政権でさえ、データセンターがもたらす政治的問題、特に電気料金の大幅上昇の可能性を認識している。

 州や地方自治体レベルでは政治的要因はさらに大きい。少なくとも12州が新規データセンター建設の禁止や一時停止を検討しており、全米各地の郡や市でも同様の措置が取られている。中でも注目されるのがデンバーで、市議会が今年、新規データセンターを1年間停止する法案の検討を開始した。

 こうした政策が、巨大データ処理施設に依存する大手IT企業にとって問題となるのは明らかだが、ミサイル防衛のように膨大なデータ処理を必要とする任務を抱える米軍にも直接的な影響を及ぼしかねない。この任務は、トランプ大統領が提案するミサイル防衛構想「ゴールデンドーム」が2028年に稼働すれば、さらに複雑かつデータ集約的になる。

 実際、複数の退役軍高官は、例えばコロラド州や主要都市がデンバーに倣って新規データセンターを禁止した場合、軍が一部機能の移転を余儀なくされる可能性に言及している。

 統合参謀本部副議長や戦略軍司令官を歴任したジョン・ハイテン元空軍大将は「この地域には膨大なデータが流入してくる。それに対応しなければならない」と述べた。

 ハイテン氏は、主要軍事拠点が集中するコロラドスプリングズを例に挙げ、「ここには山のようなデータが流れ込む。軍や産業界はそれを処理するために強力なデータセンターを必要とする。適切な場所へ適時に情報を届け、世界中の戦闘部隊を支援するためだ」と語った。

 また同氏は、新規データセンターの禁止は「ばかげている」とし、実施された場合は、軍が自らの敷地内にデータセンターを建設する必要が出てくるとの見方を示した。

 「任務遂行のためにそうせざるを得ない。もしできなければ、その時は、拠点をコロラドから移さなければならなくなる。任務を遂行できないからだ」

 こうした動きはすでに現実化している。米陸軍は今月、戦場でのAI活用拡大に対応するため、テキサス州フォートブリスとユタ州ダグウェイ試験場に、民間が建設・運営する大規模データセンターを初めて設置すると発表した。

 軍当局者によると、民間資本が「拡張利用リース(EUL)」という軍の土地を民間活用するための制度を通じてこれらの事業に資金を提供する。この制度では、陸軍が土地を提供し、企業側が建設費および運営費を負担する。

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