ロシアのウクライナ侵攻は、米軍をロシアに対峙させる、米当局が警告
By Bill Gertz – The Washington Times – Thursday, December 23, 2021
バイデン政権は木曜日、ロシアに警告し、プーチン大統領が隣国ウクライナに侵攻を開始すれば、米国と連合軍の兵力はロシア国境に接近することになると明言した。
欧州東部で進行中の危機について、米政府高官は記者団に、ウクライナ国境周辺のロシア軍集積は「警戒すべき事態だ」と語った。
最新の情報分析では、ロシア政府が親ロシアのウクライナ分離派武装勢力を支援するために、ウクライナと戦闘を交えるか否か、未だ決定していない模様だ。「我々の感じるところ、ロシア側はまだ決断していない」、ある米高官は語った。
「ロシアが事態を進行させた場合、我が国と同盟諸国は、ロシア経済に打撃を与え、彼らが望んでいない正にその被害を、的確かつ断固として与える態勢ができている。」
ロシア軍は軍事演習を実施しながら、ウクライナ国境沿いに戦車・装甲車、そして10万人規模の軍隊を動員してきた。その大半は、8月に米軍がアフガニスタンから撤退した混乱状態の直後だった。
ワシントンとモスクワは今週、現状の危機について、さらにプーチン大統領が米国と北大西洋条約機構(NATO)に要求している一連の安全保障措置について協議するため、一月初めの直接交渉について話し合いを進めてきた。米国当局者は木曜日、その交渉が真摯かつ互恵的なものであって、ウクライナの領土と主権の保全には抵触しない限り、話し合いに応じる用意があると言明した。これは「戦略的安定性対話」と呼ばれるフォーラムの一環として開催されるものだが、日程は定まっていない。
バイデン政権高官は、米国とその同盟国がロシア側の要求している数点について議論に応じるが、その他の要求には「決して同意しない」と語った。同交渉は公の場では行われないだろう、とも当局者は付け加えた。
「ウクライナ国境沿いでのロシアの驚くべき軍事力の移動と展開を、我々は監視し続けている」、同高官は語った。
この緊張の高まりを少しでも抑制するかのように、ロシア・ウクライナ両政府は、2020年7月の停戦を再確認した。ロシアの兵力に後押しされたウクライナ分離主義勢力との戦闘で、2014年以来ウクライナ東部で約14,000人の命が奪われた。同戦闘は、プーチン大統領がウクライナからクリミア半島のロシア併合を画策したのと同じ年に勃発した。
プーチン大統領は年末恒例の長時間の記者会見で、いつもと同様に、ロシアをNATOによる容赦なき東方拡大の被害側として描き出した。そして西側諸国による侵攻に対し、安全保障措置を「ただちに」提示するよう要求した。その中の一つ、ウクライナやグルジアなど(対ロシア)最前線の国々をNATOに加盟させない、という確約をロシアが求めたことについて、バイデン大統領とNATO当局者は即座に拒否している。
ロシアは今月、NATOと欧州の安全保障政策を再構築することを主旨に要求を列挙した条約草案を発表した。「あなた方は我々に保障を与えるべきだ、それも遅滞なく、今すぐにだ!」、プーチン大統領は主張した。
ロシアの最高指導者は、欧州に配備された米国のミサイルが脅威をもたらしている、との持論を繰り返した。それらはポーランドとルーマニアのイージス弾道ミサイル防衛システムの陸上要素である「イージス・アショア」迎撃システムのことを指しているのは明らかだ。
「我々が米国の国境近くにミサイルを配備したことがあるか?」、プーチン大統領は記者の質問に応えて言った、「とんでもない、我々の家に押しかけ、敷居をまたごうとしているのは米国の方だ。…これは理不尽な要求なのか。我々の家の周辺で攻撃態勢をこれ以上採らないでくれ。そう求めることが不思議なのか?」
用心して見守っている
米国の諜報機関はロシア軍の移動を注意深く監視している。大方の見るところ、プーチン大統領はウクライナ侵攻を正当化できる口実を西側に求めようとしている。米国の識者は危うい兆候として、ロシア側の要求内容がエスカレートしていることを挙げる。さらに言えば、プーチン大統領がロシアの国家安全保障・防衛当局者と会議をしたこと、さらに先週、プーチン大統領が習近平国家主席と電話会談したことも挙げられる。
モスクワは今週、追加的な圧力をかけるように、ヤマル・ヨーロッパのパイプラインを通る天然ガスの供給量を、今年の最低水準となる通過能力の5%にまで減らした。
欧州へのエネルギー資源をロシアが管理している状態は、米国とその同盟国にとって重要な検討課題だ。
米国とNATOは、万一ウクライナが侵略された場合、軍事的に対応しつつ、ロシアの財政・商業上の利益に厳しい制裁を課す準備ができていると主張している。
「我々の対応措置は経済面に限られない」と米当局者は述べた。そして、ウクライナへの兵力供与の増加と、軍事力展開の変更の可能性についても指摘した。「我々は今後の不測の事態を、現実のものとして準備している。」
ロシアの玄関口に米国のミサイルが置かれている、とのプーチン大統領の指摘について、米国の高官はばっさりと、「それはロシア側に提起するべき質問だ」と語った。「NATOの同盟諸国の国境周辺で、ロシアが行ってきた軍隊や攻撃システムの挑発的な展開に一々を、容易にリストアップできる。そんな売り言葉に買い言葉をしても生産的でないだろう」。
モスクワはまた今回の危機に至った経緯と、分離主義勢力との戦闘に関して、ウクライナからの政治的妥協を求める外交に拍車をかけるため、ウクライナ側を非難するのに有力な偽情報工作を行ってきた。
「過去にも、こうした侵攻に先立つロシア政府のやり口を見てきた。偽情報を増やして緊張をエスカレートさせているのは、ロシアではなくウクライナ側だという筋書きを広めようとしている」、米当局者は断言した。
「はっきり言って、ウクライナ側には(緊張をエスカレートさせている)証拠は見当たらない。」
米国の同盟国や友好国は、「これがロシアによる偽情報工作だ」と周知されている、同高官は述べた。