G7、石炭めぐり譲歩
By Editorial Board – The Washington Times – Thursday, April 20, 2023
シェイクスピアは、「思い切りがいいばかりが勇気ではない」と書いた。うまく言ったものだ。世界の先進国のエリートらは、これまで重宝されながら今では嫌われ者の石炭の使用停止に突き進んでいたが、よく考えた末、これを止めた。シェイクスピアの言葉よりも簡潔な表現で言えば、良識が勝ったのだ。
先進7カ国(G7)は週末、札幌で、気候・エネルギー・環境政策に関する会合を開き、2030年までに段階的に石炭火力発電所を廃止するという約束を支持しないことで合意した。石炭の使用を巡る譲歩に加え、米国、カナダ、英国、フランス、ドイツ、イタリア、日本、欧州連合(EU)の代表は、クリーンな天然ガスが、彼らが切望する化石燃料のない未来への橋渡しになり得ることを認めた。
西村康稔経済産業相はこの賢明な措置について、「カーボンニュートラルへの道筋は多様であることを認めながら、2050年に向けて共通の目標を目指す重要性で合意した」と直接的な言及を避けながら、うまくまとめた。
一方で首脳らは、再生可能エネルギーの目標を明確にし、2030年までに洋上風力発電の能力を150ギガワット、太陽光発電を1ギガワット以上に強化することを約束した。エネルギーに関するこのような動きは、2022年のロシアのウクライナ侵攻という予想外の出来事の影響により、ロシアの天然ガスや石油の入手が欧州で難しくなり、世界のエネルギー安全保障が脅かされていることが背景にある。
ドイツでは15日、最後の3カ所の原子力発電所が運転を停止したことで、化石燃料が改めて注目されている。長期にわたって、執拗(しつよう)に反原発キャンペーンを展開してきた気候変動活動家らの望みがようやくかなった。報道によるとこれらの活動家らは、新たな目標を求めて、「石炭を止めろ」という横断幕を掲げたり、「民主主義の廃止」を主張する意味不明なツイートを投稿したりしている。
クリーンな原子力エネルギーを失い、自暴自棄になった独当局は、さらに石炭を燃やすしかないと結論付けた。気候変動の女神グレタ・トゥンベリさんでさえ、炭鉱の建設を妨害しようとして非難された。長きにわたる闇と隷属の歴史を持つドイツ人は、石炭も民主主義も放棄するつもりはない。
新進気鋭のインドも、新年度には石炭火力発電の能力を減らすどころか、増やす予定だ。ブルームバーグ通信によると、インド最大の電力会社NTPCは、石炭生産量を48%増やし、発電量を4.5ギガワット増やす。この動きは、14億人を抱える発展途上国インドの指導者らが、他の国々が歩んできたように、近代化への道を徐々に進むことはできないと認識していることを反映している。
しかも、アラバマ大学ハンツビル校が収集した低層大気温度の衛星観測データによれば、化石燃料の使用抑制に働く地球温暖化は8年9カ月間止まっている。しかし、それとは別に大気中の二酸化炭素濃度は上昇を続け、2015年の399ppmから3月には421ppmとなった。気温と排出量の間に明白な相関関係がない以上、緊急に必要なエネルギーのために譲歩することは理にかなっている。
G7各国は、近代化の道を進む中で思慮のある判断を下し、石炭のような汚いエネルギーでも、よりクリーンな世界へと導くことができることを証明した。