女子パワーリフティングでもトランス選手が頭角 大差で優勝、記録更新も
By Valerie Richardson – The Washington Times – Monday, August 21, 2023
カナダのパワーリフティング選手、アン・アンドレス氏の名前を聞いたことがある米国民は少ないかもしれないが、この記録破りのアスリートは、カナダ版リア・トーマス(米国のトランスジェンダー競泳選手)として急速に頭角を現している。
カルガリー出身の40歳のアンドレス氏は今月初め、女子マスターズ選手権で2位を463ポンド(約210キロ)上回る成績を出し、複数のカナダ記録と非公式世界記録を樹立して優勝し、大反響を呼んだ。
かつて「カナダ最強の女」と呼ばれたパワーリフティング選手エイプリル・ハチンソン氏は、その成功には理由があると言う。アンドレス氏は女性であることを自認しているが、生物学的には男性だ。
ハチンソン氏はワシントン・タイムズに「アンの記録は女子パワーリフティングでは前代未聞だが、アンは40歳の260ポンドの男だ。すべての記録を奪い、すべての記録を持っている」と語った。
カナダ・パワーリフティング連盟のカナダ西部選手権で、アンドレス氏はスクワット、ベンチプレス、デッドリフトの3種目で合計1317ポンドを記録し、合計854ポンドの2位のスジャン・ギル氏を大差で破った。
8月10~13日までマニトバ州ブランドンで開催されたこの大会は、アンドレス氏にとって40歳以上の選手によるマスターズ・カテゴリーでの初めての試合であり、スクワット、ベンチプレス、デッドリフトの3種目で体重84キロ(185ポンド)以上の選手のカナダ記録を樹立した。
また、スポーツ専門誌「フィットネス・ボルト」によれば、アンドレス氏はデッドリフトとトータルで非公式のマスターズ女子世界記録も樹立した。
この記録更新に、NCAA(全米水泳連盟)の全米代表に12回選ばれたライリー・ゲインズ選手を含む、性別スポーツの擁護者らが反発、カナダのジャスティン・トルドー首相は「女性(と現実)を著しく軽視している」と非難した。
ゲインズ氏は「TikTok(ティックトック)」への投稿で「アンドレス氏の記録は、男子パワーリフティングとしては普通。カナダ・パワーリフティング連盟が女性アスリートを差別していることが原因だ」と指摘した。
ほぼ毎日インスタグラムに投稿しているアンドレス氏は優勝を受けて、この大会の仲間意識の強さを強調しながら、「カナダ中の友人たちとリフティングができた。私を歓迎し、愛し、そこにいてほしいと願う友人たちがいる」と書いた。
2日後には批判的な人々を一喝、「誰も頼んでいないのに、わざわざ女子スポーツを救おうとする人がいるなんてびっくり。縄張りが欲しいのなら、その縄張り(トランスジェンダーに対して排他的な過激フェミニスト)に行けばいいだろ。自分がだめ人間であることを認め、味方のふりをするのはやめろ」と投稿した。
国際的な陸上競技連盟が公平性のためにトランスジェンダーの参加に関する規則を厳しくしている今、カナダ・パワーリフティング連盟は反対の方向に動いている。
同連盟は今年に入って発表した最新の指針で、ホルモン抑制を求めることなく、選手が性自認に基づいて競技に参加することを認めた。また、競技者の性自認に関するいかなる情報の開示も拒否している。
指針には「例外とすることができるのは、スポーツ団体が、ホルモン療法が高い水準で公平な競技の場を作るための合理的かつ真正な要件(すなわち、正当であり、必要であること)であることを証明する証拠を提出できる場合」と記されている。
連盟としては、この問題に関してほとんど選択の余地はないのかもしれない。2017年の法律C-16は、「性自認と性表現」に基づく差別を違法としている。
アンドレス氏との対戦を拒否しているハチンソン氏は、「私は手紙を書いてきたし、他の女性たちも手紙を書いてきた。アンが出場する前(今月初め)に、『アンを出場させるなら、私は棄権します、辞めます』という手紙を書いた人がいたのに、何もしてくれなかった。完全に無視された。そして、私は声を上げたことで出場停止処分の脅迫を受けた。カナダの現状はこうだ。かなりクレイジーだ」と述べた。
ハチンソン氏は、彼女とアンドレス氏の間に「以前から深い因縁」があることを認めた。
「私は、彼が生物学的に男性であることを誰よりも早くから知っていた。私に告白してきたたからだ。彼は『実は、僕は男なんだ』と言ったので、私は『女性とパワーリフティングを競うべきではない。完全に不公平だからだ』と言った。それで私たちの友情は断ち切られた」
アンドレス氏は4月の投稿で、「反トランスグループからの組織的な攻撃があり、エイプリル・ハチンソン氏の憎悪に満ちたメッセージと相まって、私の人生は地獄と化した」と訴えた。
「彼女はヘイトグループを組織し、全米大会に行き、私に抗議した。彼女は何度も私を男呼ばわりし、私の邪魔をした。彼女は一度も敬意を払ったことはない」
アンドレス氏は20歳を過ぎてから女性に転換したと言われており、今月に入って引退するまではオープンカテゴリーで圧倒的な強さを誇っていた。パワーリフティング情報サイト「オープン・パワーリフティング」に掲載されているように、2019年~2023年にかけて、11大会中9大会で優勝し、2位1回、3位1回を記録している。
アンドレス氏が男子パワーリフティングに出場すればどうなるだろう。ハチンソン氏は、5000位以内に入ることさえできないだろうと言ったが、これは3月にチーム・カナダ・パワーリフティングのヘッドコーチであるアビ・シルバーバーグ氏が指摘したことだ。
シルバーバーグ氏は、ひげを剃ることもせず、アルバータ州で開催された女子パワーリフティング大会に出場し、ベンチプレスで370ポンドを記録し、275ポンドだったアンドレス氏の記録を軽々と破った。連盟のトランスジェンダー指針に明らかに反する発言だ。
数週間後、アンドレス氏は字幕付きのトレーニングビデオを投稿、「忘れないでほしい。私はトランスジェンダーだから強いのではない」と述べた。
「私が強いのは、どの試合にも参加するからだ。参加すべきでない時でも、試合には臨む。カエルみたいに気まぐれに性転換したから、魔法のようにベンチやデッドリフトができるようになったんじゃない。誰よりも努力したからだ」
だが、すべての女子選手がアンドレス氏の参加に反対しているわけではない。女子パワーリフティング選手のエリカ・ラング氏らカナダの選手は、アンドレス氏を擁護するコメントをインスタグラムに投稿している。
ラング氏は先週、「親愛なるトランス嫌いの皆さん。私は誰にもどう思っているかを聞かれたことはありません。マスターズ女子100キロ超級に出場しています。気にかけているふりをするのはやめてください。アンは私の友達だし、いい女よ。めちゃくちゃ素晴らしい選手よ」と投稿した。
パワーリフティングはオリンピックの種目ではないが、アンドレス氏はおそらく世界選手権の有力候補だろう。国際パワーリフティング連盟のマスターズ選手権は10月8~15日までモンゴルで開催される予定だが、アンドレス氏が出場予定かどうかは不明だ。
世界陸上、世界水泳、国際自転車競技連盟、国際重量挙げ連盟は、昨年トーマス氏が登場して以来、女子スポーツの出場資格を厳しくした。
トーマス氏は、NCAAディビジョン1女子でタイトルを獲得した初の男性出身競泳選手となり、トランスジェンダー擁護者らから喝采を浴びると同時に、スポーツは性別で分けるべきだと主張する人々からは反対の声が上がった。
ワシントン・タイムズはカナダ・パワーリフティング連盟にコメントを求めた。