「性自認」も医療保険の対象 バイデン政権が規則公表
By Valerie Richardson – The Washington Times – Monday, April 29, 2024
西欧諸国が「性別適合治療」への取り組みを見直そうとする一方で、バイデン政権は意欲的に推進している。
厚生省は、医療費負担適正化法(オバマケア)第1557条に基づく「性」の定義を「性自認」にまで拡大する最終規則を発表した。性転換治療薬の使用に対する懸念が高まっているにもかかわらず、医療機関が性転換治療のための薬や処置を提供することを義務付けられるようになるのではないかと懸念されている。
厚生省のベセラ長官は、トランプ政権時の政策を覆すこの決定について「より公平で包括的な医療制度に向けて大きく前進した」と述べたが、保守派は医学よりも政治を優先していると反発している。
保守系シンクタンク、アメリカン・プリンシプルズ・プロジェクトのテリー・シリング代表は、「バイデン政権は、タイトル9(教育改正法第9編、教育での女性に対する差別を撤廃を目指す)による女性と少女の保護を骨抜きにしたばかりだ。それからわずか数日、全米の病院や医療センターに過激なジェンダーイデオロギーを注入しようとしている」と述べた。
シリング氏は、「(医療機関は)未成年者を含むすべての患者に性転換のための薬と手術を提供することを義務付けられ、それができなければ廃業を余儀なくされるようになる」とみている。
保守系のアライアンス・ディフェンディング・フリーダム(ADF)は、新たに発表された規則を「やりすぎであり、医療に大混乱をもたらす」と指摘、議会の意図を無視していると政権を非難した。
ADFの上級顧問、ジュリー・マリー・ブレイク氏は「議会が表決で、医療費負担適正化法を再定義し、性別に性自認を追加する決定を下したことはない。この規則は、危険でその人の人生をも変える『性転換』を促進するものであり、健康な体の一部を切除したり、性徴を阻害したりして、家族や子供に害を及ぼす。バイデン政権のこのとんでもない規則は、米国の医療制度を悪い方向へと変えることになる」と警告した。
これに対し厚生省は、医療機関が「性別適合治療などの義務を課せられることはなく、臨床的に適切でないと考える医療、信教の自由や良心の保護に反する医療を施すことを余儀なくされることはない」と反論している。
4月26日に発表されたこの最終規則は、未成年者に対する性転換のための投薬や手術に対する国際的な反発の中で発表された。4月初め、英国で性医学に関する4年間にわたる調査報告「キャス・レビュー」が公表されたが、この報告は、性別適合治療の正当性を支持するエビデンスは「著しく弱い」と結論付けている。
フィンランド、ノルウェー、スウェーデンなどの西欧諸国は、18歳未満へのそのような治療に制限を設けている。一方、英国民保健サービス(NHS)は、4月1日に性転換に対する(思春期を遅らせるための)二次性徴抑制剤の使用を禁止した。
20以上の州が性徴や10代の若者に対する性自認薬や手術を禁止しており、「トランスジェンダーの若者のための重要で医学的に必要なケア」を支持するバイデン政権とは相いれない立場を取っている。
医療情報サービス「ソリダリティー・ヘルスシェア」のクリス・ファディス会長は、信仰を基に、二次性徴抑制剤、異性間ホルモン剤、性転換手術を拒否する宗教的医療従事者が排除されるのではないかと懸念を表明した。
「『性』の定義を拡大して『性自認』を含めることで、医師や医療従事者は、トランスジェンダーの手術のような道徳的に好ましくない処置を拒否できなくなり、それによって重要な連邦予算を失うリスクも発生する。信仰に基づく医療制度と医療従事者を標的とし、恥ずべきものであり、容認できるものではないが、信仰を持つ人々に対してこの政権が敵意を示してきたことを考えると、残念ながら予想外ではない」
厚生省によると、医療従事者は「信教の自由と良心に基づく免除」を申請することで、市民権局が申請を審査する間、一時的な免除を受けることができるという。
人権団体「ヒューマン・ライツ・キャンペーン(HRC)」は、「差別をなくす唯一の方法は治療拒否を禁止することだ」と宗教的免除を批判したが、最終規則は「LGBTQ+の国民のための医療を改善するための厳しい戦いの末の大きな勝利」と称賛した。
HRCによると、規則には、ホルモン補充療法(HRT)の保険適用拒否と「LGBTQ+患者への言葉や身体的虐待」を明確に禁止することが盛り込まれている。
この規則の下で同省は初めて「メディケア・パートB(外来診療などへの医療保険)の支払いを連邦政府の財政援助の一形態とみなし、公民権法を発動することが可能になる」という。
トランプ前政権は2020年の規則で「政府は性差別を、男性と女性、生物学的に決定される性という『性』の文言の単純な意味に基づいて理解する」としたが、連邦判事はLGBTQ団体による訴訟の結果が出るまでこの変更を差し止めた。
信教の自由擁護団体「ベケット基金」の副会長で上級顧問のルーク・グッドリッチ氏は、この規則変更は法的精査を乗り越えることはできないと予測している。
グッドリッチ氏はX(旧ツイッター)に「オバマ政権の同様の規則は連邦裁判所で2回、無効とされた。バイデン政権は現在、過去の訴訟で保護されていない医師や病院に同じ規則を再度課そうとしており、成功することはない」と投稿した。