米情報機関、経済に通じたスパイ確保が急務

(2024年6月1日)

2018年9月16日、北京で、トライショーの上に中国国旗とともに展示されたアメリカ国旗。自動運転車のサプライヤーであるナスダック上場の中国テクノロジー企業が、米国防総省が中国軍とのつながりがあるとする企業リストに掲載されたことを受け、米国政府を訴えると脅している(AP Photo/Andy Wong, File)。

By Ryan Lovelace – The Washington Times – Thursday, May 23, 2024

 米国の現・元職の情報機関当局者らによると、米情報機関には、外国による窃取、圧力、競争から国民の経済的安全を守るために必要なビジネスの知識が欠けている。

 当局者らは、情報機関が民間部門での技術面での予期せぬ出来事や、国家安全保障への脅威を察知する能力を備えていないとみている。民間部門では、中国のような敵対勢力が米国の技術革新を弱体化させ、技術を盗み出そうとしている。

 問題解決のための取り組みには、情報機関の構造改革や、民間企業での新たなツールの開発などが考えられる。政府が敵対勢力の分析に関して、これらの民間企業から支援を受けることもありうる。

 国家情報長官室は、最先端技術の応用とリスク、サプライチェーン(供給網)の理解に重点を置いた部署を設置した。

 新設された経済安全保障・新興技術局を率いるケイシー・ブラックバーン氏は、その感覚を「パニックに陥ったような切迫感」と表現した。

 ブラックバーン氏は5月初め、ワシントンで開催されたシンクタンク、特別競争研究プロジェクトのAIエキスポで「国家安全保障の分析をするに当たってわれわれに大きく欠けているのが、ビジネス感覚だ」と述べた。

 中央情報局(CIA)のベテラン分析官であるブラックバーン氏は出席者に対し、経済安全保障・新興技術局が競合国を評価する際に、国力を表す尺度として技術をどのように測定できるかを検討中だと語った。

 アナリストは伝統的に、外交情勢を理解し予測する際には軍事力、天然資源、人口、経済の健全性といった指標に注目してきた。

 ブラックバーン氏によると、米政府と情報機関は米国が他国に後れを取ったり、競争上の優位性を失ったりしないよう、政府が優先すべき個別の技術力を特定することを同局に期待しているという。

 大きな課題として残っているのは、適切なトレーニングを受けた適切な人材を見つけることだ。

 数十年にわたり情報機関の職員を務めたCIAの元職員ベス・サナー氏は、「われわれは文字通り、人材が確保できていない」と語る。

 AIエキスポでサナー氏は、「M&A(合併と買収)を本当に理解している人材がわれわれの中にはいない」と述べた。

 サナー氏は、アイビーリーグの大学で経営学の修士号を取得したいというある職員の申し出を断ったことを振り返り、いずれにしても民間部門への誘惑をかわして、その職員を引き止めることができないことは分かっていたと嘆いた。同氏は、情報機関は政府機関の外で働く中堅の専門家に魅力を感じてもらえるようもっと力を入れる必要があると訴えた。

 ビジネスとテクノロジーの人材を情報機関に取り込むために、商務省を情報機関に変えてはどうかという議論もある。

 同省は、輸出管理と外国投資を担当している。米議会は情報機関に対し、商務省への情報支援を強化するかどうかについて検討するよう指示した。

 情報機関と商務省は、すでに緊密な関係を築いている。バイデン大統領が昨年12月に署名して成立した主要防衛法案に詳述されている新興技術、サプライチェーンの脆弱性、経済情報、防諜に関する専門知識を持つ人員の共有は、その一例だ。

 ブラックバーン氏は、商務省を連邦政府の19番目の情報機関に変える取り組みについてはコメントを避けた。

 民間部門の製品の中には、政府がすでに使用しているツールよりも、米国の敵対勢力がどのような技術を持ち、どのような技術を標的にしているかをうまく把握できるものがあるかもしれない。

 商務省は、国家安全保障上の懸念から取引が制限されている外国人やグループを特定する同省独自のエンティティーリスト(貿易上の取引制限リスト)のブラックリストに載っている企業への技術移転を圧倒的多数で承認したとして、議会から監視の目にさらされている。

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